17、岬麻衣は頷く
「その考え方は流石にクソ雑魚過ぎない?」
麻衣様の人生、どんな人生を歩み、どんな生き方をしてきたのかなんて知らない。
それを否定するつもりもない。
ただ、考えられるとしたら信用出来る人がいないのかな?、なんて考えてしまう。
「ねぇ?クソ雑魚頼子?ねぇ?ねぇ?黙ってちゃわかんないだけど?」
「…………」
「ねぇ?ねぇ?ねぇ?」
「…………」
「ねぇ!?ちょっとは反応して!?クソ雑魚でも反応出来るでしょ!?」
「あ、ごめん。考え事をしてた」
もしかしたら私……。
いや、俺ももしかしたらこんな考え方になって明智秀頼になっていたのかもしれないなと重ねてしまっていた。
…………別にだからといって麻衣様になんかしてやろうとかは一切ないが。
「麻衣様……」
「な、何よ……?」
「私と麻衣様が新しい出会いとして学校で廻り合いました。これ以上に素晴らしいことはないじゃありませんか」
とにかく朝のホームルームが始まりそうだし、早く会話を切り上げないと遅刻扱いなっちゃう!
巻きでいこう!
焦り気味なので無理矢理黙らせる作戦でいく。
「私と麻衣様は同じ学校じゃなければ出会えませんでしたよね?それって素敵じゃないですか!クソ雑魚な私は麻衣様の自信満々な姿に勇気をもらえますよ」
「ほ、本当に……?」
「本当ですよ。私の一方通行かもしれませんがあなたに絆も感じています。どんな人でも繋がれば絆が結ばれるんですよ」
それこそ私は、中にいる秀頼、エニア、叔父、死神ババア、ゴーストキング、アイリーンなんとかさん、アイリーンなんとかさんから刀を盗もうとした泥棒、アイリーンなんとかさんに従っていた黒服、腕を壊した部長にすら絆を持っている。
裏切るくらいなら、私は裏切られる方がマシだ。
「一方通行の絆を……、アタシに……」
「それじゃあ、授業始まるんで行きますね!またね、麻衣様!」
「う、うん……」
ヤバい、ヤバい!
職員室を出る先生の目が『早く教室に戻れよカス』って感じだったもん!
慌てて階段を駆け上がっていく。
普段使うトイレから教室まで徒歩40秒だけど、職員トイレから教室まで徒歩1分30秒はかかる。
美鈴はもっと職員室が遠かったら的な話をしてたけど、今の私は近い方が良い!
そんなことを心で叫びながらダッシュで50秒で教室に戻ってきた。
すれ違った先生から『廊下走るなよカス』って目で睨まれても、走るのをやめなかった。
「お?明智先生、ギリギリセーフじゃん」
「…………み、見ないで……」
教室に入った瞬間、山本から称えられ、拍手を送られてしまい、それがきっかけでクラスメート達の視線の的になる。
山本のせいで辱しめを受けた。
山本の野郎……。
この恨みはらさでおくべきか……。
後で山本の上履きの中に厚い中敷きを山ほど入れまくって靴が足に入らないようにしてやるぞ。
お前はシンデレラで靴のサイズが合わないモブだぞこの野郎……。
山本にやり返す極悪なイタズラを考えて、すこすこと席に戻っていく。
ただでさえ、女になっているから目立っているのに、山本のせいでもっと目立ってしまった。
山本のせいで。
山本のせいで。
山本のせいで。
「てかお前、まだ女だったのかよ」
仕返しブラックリストに名前が乗った山本大悟がホームルームが終わると真っ先に私に駆け寄って来た。
「そんなこと言ってもさぁ……。山本、私になんかギフト使ってよ」
「俺ギフト使えませんが!?しかも明智や十文字と違ってギフト使える確率ゼロなんだけど!?」
ギフト陰性、山本大悟からハイテンションで突っ込まれる。
「そこは山本君の知恵でどうにか明智君を戻して!」
「俺の知恵!?」
そこへ、津軽円が山本と俺の会話へ乱入してきたのである。
円と山本という、こいつら2人で会話したことあるのかようわからん組み合わせである。
「例えば山本君が女になるのを身代わりになって明智君を元に戻すとか」
「俺が女になるよ!?」
「とりあえずやってみてよ」
「とりあえずでどうにかなるの?」
円から「1回で良いから」とせがまれ、「仕方ない」と山本が折れた。
「おい!明智!明智の変わりに俺を女にしろ!」
「…………」
「…………あっ!?」
タイミング良くスマホのバイブが鳴った。
それだけであった。
完全に失敗していた。
「…………山本大輝、女になりたいの?」
「なりたくねーよ!あと俺は山本大悟だよ!大輝は兄貴の名前だよ」
「え?山本大悟、兄貴いるの!?」
「あぁ、いるよ」
円と顔を合わせて頷きあった。
「やっぱり兄貴いる顔よね」
「いる顔よな」
「悪いのかよ!?」
「悪くはねーよ」
すると1つ思い付いたことが浮かび、口にしてみた。
「山本さぁ、姉もいるだろ?」
「…………いるよ」
「山本大悟の兄貴の弟さぁ、末っ子でしょ」
「末っ子だよ!」
「わかるぅ!」
「超わかるぅ!」
山本の兄弟事情を全部明かした前世知っている2人組であった。
「てか、津軽さんってそんなキャラなん?」
「ちょっとガッカリしたろ?」
そう尋ねると、山本は遠慮がちに頷く。
「…………した」
「わかるぅ!」
「超わかるぅ!」
「…………なんで突然私が敵に!?」
こうしてグダグダと会話をしただけで、秀頼女性化問題が解決しない話し合いは授業開始のチャイムで打ち切られた。
岬麻衣回に見せかけた山本回。
でもタイトルは岬麻衣。
過去の強敵が回想するシーンがある作品は名作。
クズゲスのこれが該当しているかは不明。
アイリーンなんとかさんは当初、このメンバーに入る予定はありませんでしたが、秀頼目線だと(アイリーンなんとかさんの)好感度が上がるシーンが皆無だったので入れておきました。
個人的に咲夜、ヨル、タケル以外の西軍メンバーと山本君の会話はタブーにしていましたが、この度解禁しました。
※単に会話が思い付かなかったため。
なぜ咲夜とヨルはOKだったのかと言うと、この2人は誰に対しても態度が変わらないため。
理沙、永遠、遥香らへんは山本と会話してるイメージすら付かないので、今後の課題。
次回、昼休みに頼子が動く!