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5、佐々木絵美は主導する

「…………え?」


瀧口先生が2度見をしてくる。

みんなに見られて悼まれなくなってくる。


「どなたかな?確か、そこは明智の席だった筈だが……」

「何を言っているんですか先生!」

「え?」


隣の席の白田さん含め、息を飲む音が聞こえる。

結構明智秀頼の面影のある姿なのだが、声や服装が女になっているので周囲に驚かれているのかもしれない。


「私は明智ですよ。わけあって女になってしまいましたが……」

「……わけあって女に」


瀧口先生含め、クラスメートが狼狽える姿が見える。

何をギフトなんか存在する世界で驚くことがあるのか。

むしろギフトなんか持っていなかった豊臣光秀少年が明智秀頼に転生したことに比べたらこんなもの小驚きぐらいだ。

ビックリ箱に引っ掛かる方が心臓に悪いであろう。


「え!?秀頼!?」

「何を当たり前のことを言っているのかしら……?」


やや近い席に座るタケルさんから大声で反応され、肯定する。

そもそもさっきまでタケルさん、理沙、山本さんから認識されていないだけだったのね……。

名前を忘れられたのかとこっちが驚いたところだったよ。


「さ、先生。授業をしましょう」

「……え?何、明智は驚いてないのか!?」

「驚いてますけど、よくあるトラブルなんで……」

「よくあるトラブルなのか……」


死神ババアに追いかけられたトラブルに比べたらもはやそんな程度では些細なことである。


「え?もしかして明智のギフトは男女逆転だったりするのか……?」

「…………」


露骨なギフト詮索されてんな……。

ギフト狩りに目を付けられるのはごめんだし、かといってギフトで明智秀頼を女にした少女もギフト狩りに目を付けられるのはそれはそれで居心地が悪い。

なんとか瀧口先生の目を遠ざけられないだろうか……?


「いえ。私はギフト陽性ですがギフトに覚醒はしていません。これは昼休みの際になんかよく知らない人にギフトを掛けられてしまいこんな姿になりました……」

「そ、そんなギフトを持つ人物が……。業が深いな……」

「そうですね……」


しれっと絵美などには『手品』のギフトが使えるとは話してあるので、わかる人にはわかる嘘であるがこのまま押し通すしかない。


「じゃあ今日はこんなことになった明智のために『ギフトの持続性』について授業をしようか」


ハプニングから授業内容が変わってしまった……。

彼なりの親切なのだろうか。


「ギフトは主に『制限時間』があるものと、『半永久』に続くものがある。『半永久』に続くギフトの場合は大抵ギフトの所持者が任意で切り替えが出来る場合が多いが、前者の場合の方が任意で切り替えるのが難しい傾向にあるのがわかっているとか」


『命令支配』の場合、後者である『半永久』的に続く変わり、任意で切り替えが可能なのだろう。

未だに叔父のギフトが解けていないことからも容易に想像が付く。

原作秀頼が、『タケルに邪魔されなきゃずっと効果が持続する』的な発言があったしな。


「先生!」

「はい、どうした佐々木」


絵美が挙手をして、先生に質問があるようだ。


「秀頼君を元に戻すにはギフトの所持者を探す必要があるのでしょうか?」

「それが無難だろうか……。実は制限時間のあるギフトの方が全体的に少ない研究結果があってね。後者の場合、何も手を打たないと10年経っても20年経っても女のままだろうね……」


むしろ10年も20年も経ってから男性に戻される方が困ると思う……。


「むふふふ、明智氏が美少女ならワイは大歓迎でござるよ」

「きっしょ」

「ぶふぉ、ご褒美でござる!ご褒美でござる!」

「…………」


隣の席の白田が気持ち悪く笑った。

敬称を付ける気が起きないくらいに軽蔑した。



──てか、早く元に戻れよ!



戻り方がわからないんだよなぁ……。

自分の中に眠る明智秀頼からは、女の肉体は勘弁らしいのが伝わってくる。



──困る!困るって!俺が自分の肉体に戻ったら女とか、俺どうしたら良いんだよ!?



知らねぇよ。

心の中の秀頼がめっちゃ暴れまわっているようだった……。


「先生!そんなのダメですよ!早く秀頼さんを男に戻さないといけないじゃないですか!」

「先生には秀頼様を女に変えたギフト所持者に心当たりがないんですの!?」


永遠ちゃんと美鈴が私を心配してか、瀧口先生に抗議をしている。


「さぁ……。僕もなんでもかんでも知っているわけじゃないしなぁ……」

「そんなのも知らないなんてそれでも先生なんですか!?」


おっ?

近くの席の熊本さんまで先生に噛み付いている。


「え?ぼ、僕を責めるのはお門違いなんじゃ……」

「先生!今すぐ明智を元の姿に!」

「う、上松まで……」


元ギフト狩りのゆりかまで混ざり、瀧口先生が『秀頼を元に戻す方法を教えろ』って雰囲気になっている。

彼はどうしようとキョドりながら眼鏡をくいくいっと弄っている。


「よし、じゃあ来週の授業まで明智を元に戻す方法を探るのがクラス全体の宿題だ……」

『えええぇぇぇ!?』


教室全体から大きいブーイングをくらう。


「く、クラスの連帯責任ってことで……」


教師って仕事も大変だなぁと、他人事のように瀧口先生を憐れんだ。


「先生!ワイは明智氏を男に戻すのは反対でござる!」

「は?」

「え……?」


私と瀧口先生が同時に白田の発言に目を丸くした。


「そうだ、明智先生は女の方が可愛いじゃねーか!」

「明智は身を持って男と女の境界線を無くそうとしてくれているんだ!」

「明智!俺とも連絡先交換してくれっ!」

「…………」


クラスのバカ男子が白田から伝染し何故か盛り上がっていた。


「ダメ!絶対秀頼君を男に戻すんです!」

「こんな明智君、絶対間違ってます!」


絵美と理沙が男子に刃向かう様に声を出すと、そんな意見も伝染していく。


「ウチも秀頼は男に戻るべきだと思う!」

「そうですよ!秀頼さんは男なんですから!」

「宿題をやり遂げます!」


咲夜、永遠ちゃん、美鈴も2人の意見に賛成とばかりにヒートアップしていく。

そこからは授業が進まず、絵美主導の『明智秀頼を男子に戻す会』と、白田主導の『明智秀頼は女子で生きる会』で対立することになる。


「…………このクラスの業は深いな」


瀧口先生は「若いってこわっ」とか言いながら、授業終了のチャイムと共に逃げ出したのだった。

自分がクラス中の話題の的になっている。

私も本当は逃げたくて仕方なかった……。

男からも女からもモテモテの秀頼……。

お前、どうすんねん……。




次回、西軍と秀頼の作戦タイム!

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― 新着の感想 ―
[良い点] モテモテ〜 おら、クラス全員侍らせろ、おらっ!
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