表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

316/889

71、明智秀頼は濡れる

「秀頼……」

「ん?」


食器を洗うおばさんから渡された皿やコップなどをタオルで拭くなどをして、夕飯の片付けをしていた時であった。

彼女に神妙な顔で名前を呼ばれた。

拭き終わった皿を棚に置いたのを確認したおばさんは口を開いた。


「私はあそこまで秀頼が女誑しなのは知らなかったよ……」

「ぶっ……」


わけのわからない指摘にずっこけそうになるのを耐える。

女垂らしってどういう意味!?と吹き出してから意味が理解出来なくて混乱する。


「女誑しってなんだよ!?むしろ俺はモテなくてモテなくて毎日悔しい思いをしているのにさ!」

「え?私の勘違い……?……でも女の子の知り合い多くない?」

「いや、圧倒的に男子の知り合いの方が多いんだが?知り合いのラインのIDとかほぼ男子だし」

「あぁ、そう……」


タケルや山本にもよく勘違いされやすいが男子の知り合いの方が多い。

それこそ女子で会話が出来るのは喫茶店で会った子+概念さんくらいである。

美鈴なんかロクに会話したこともないし。


「あーあ……、俺もギャルゲーみたいな恋愛したいよ。あっ、この皿片付けとくよ」

「うん……」


今日はやたらおばさんと長く会話した1日であった。



「やばい……、私が思ったより重症かもしれない……」






─────





「おっしゃ!いくぜ明智先生!」

「ばっ、バカ!?やめろ山本!?タケル!?」

「水発射!」

「いくぞっ、秀頼!」

「2対1は卑怯だぁ!」


昼休み直前である体育の授業が終わり、ふざけて野郎共で水遊びをしていた。

普通に「暑いなぁ」と蛇口から水を出して顔を洗っていると「水かけてやるよ」と悪乗りから発展して、タケルと山本が俺に水をかけてきていたところであった。


「ドバッといくぜ!」

「あ……、おい!?」

「あ……」


タケルが勢いあまって蛇口を強く捻り水がドバッと強い水流で流れてくる。

蛇口近くのタケルと山本は無事だったが、モロに俺の身体を蛇口の水が濡らしてしまったのであった。


「……な、何すんじゃバカ野郎!」


アンダーシャツに下着まで水びたしにされてしまう。

顔をびしゃびしゃにされるくらいは覚悟していたが、全身を水まみれにされるのは予想外だった。


「ご、ごめんよ秀頼ぃ……」

「あー、気にすんな。タケルと山本は濡れなかったか?」

「俺は大丈夫だけど……」

「こっちも大丈夫だが……」

「なら良かったよ……。げ……、タオルまで濡れてるし……」


汗拭きタオルまでずぶ濡れ状態であった。

気温が高いから渇きやすいだろうが、タケルが渇くまでびしょ濡れではいたくない。

どうしようか考えているとタケルが声をかけてくる。


「なら俺の予備で残しているタオルあるから使ってくれ」

「悪いな、タオル借りるわ」

「こっちが悪いんだから謝らないでくれ……」


タケルが教室まで戻って俺の着替えと共にタオルを取りに行ってくれた。

既に昼休みに入っており、山本とずぶ濡れの俺だけが残ってしまった。


「明智、どうする?教室は既に人たくさんいるだろうし……」

「そうだなー……」


第5ギフトアカデミーは体育などで着替える際は女子は更衣室があるのだが、男子は教室で着替えるようになっている。

昼休みに入ることもあり、余裕ぶっこいて水で遊んでいた時間がロスして既に教室には女子が入っているだろう。

俺たちが着替える場所がないのだ。

3分程度でタケルが帰ってきたのだが、やはり女子らは教室で雑談をしたり、昼食を取っているらしい。


「俺と山本はトイレでちゃちゃっと着替えられるけど、濡れている水始末する秀頼はちょっとトイレじゃ狭いよな……」

「あ!なら部室で着替えるわ」

「それなら確かに良いな!風邪引くなよ明智」

「大丈夫だよ、俺何年も風邪引いたことないし……」


風邪引いてメイド服を着た女の子に看病されたい人生だった……。

そのままトイレの個室で着替える2人と別れ、俺はタケルが持ってきたタオルと着替えを持って部室に向かう。

いつぞやみたいに概念さんが寛いでいたら追い出してやろうとしたのだが、今日の部室は無人であった。


とにかく上着、下着の全部を脱いでタオルで身体を拭いていく。

パンツもびしょびしょだがノーパンは抵抗あるしな……。

軽く搾って水気を取り、その下着を履いていく。

気持ち悪い感触だが仕方ないか……。



──その時だった。



ガラッと部室の出入口が開く音が開く。


「ひゃっ!?」


そこに1人の少女の影が現れた。


「…………」

「…………」


お互いが気まずくて口を閉ざしてしまう。

知らない女子生徒が、パンツ一丁になった俺の目の前に立っていた。


伸ばした茶髪。

右目の下にある神秘的に見える黒子。

初対面なのに、どこか懐かしい顔だと錯覚してしまう。


これが俺と……、浅井千姫あさいちひろとのふざけた出会いであった。








狂ったギャルゲーのシナリオは、未だに終わりを見せず──。

千姫は、前回こちらでチラッと顔見せしています。

第10章 月と鈴

第280部分36、上松ゆりかの朝


10章完結です!

次章でTSしたいなぁ……。




次回、豊臣君の番外編を書く予定です。

年末年始だし、ちょうど良いですね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ