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65、佐々木絵美の末路D

【原作SIDE】




「ギフト発動。『月だけの世界』」




なんだこれは……?

深森美月がギフトを発動した途端、月から激しい光が溢れだし結界の様なモノを創造(つくり)だす。


優しい光が深森美月に集まっていく。

それがわたしには尚更不気味で妖しいモノへと感じ取る。


「絵美っ!」

「っ!?」


秀頼君の慌てた声にわたしの意識も引き戻される。

わたしと同じで、秀頼君もこのギフトの危険性を肌で感じたらしい。


「ヤバいヤバいヤバい……。このギフトはどんなギフトよりヤバいぞ……。逃げるぞ!今すぐこの結界の届かない範囲までっ!」

「は、はい!」

「待てよ、悪党2人。わたくしからの誘いから逃げるなよ。すぐ終わるからさ」


深森美月の怒りの声がする。

そして、信じられない光景がわたしの目に映り込む。


「最初は美鈴……。懺悔の時間だ」

「か、はっ……」

「タケルとお前の身体をリンクさせた。タケルの苦しみが美鈴に伝わる様になった。タケルが目を覚ますと同時に美鈴も目が覚めることができる。……ただ、タケルが死んだ時、お前も死ぬ……。同じ症状がタケルの身に起きているんだぞ」

「っ……」

「大丈夫。……わたくしがタケルと美鈴の面倒を見るから。自分のやったことによる罪の重さを認識するんだ」


そんな姉妹のやり取りの後、深森美鈴が苦しみに悶えて地面に転がる。

その異様なギフトにわたしの身体が全身から震えだす。


これはもしかしたら『命令支配』よりヤバいギフトなのではないかと思い、背中がびしょびしょに濡れるくらいに汗をかいてしまい気持ち悪い。


「邪魔な美鈴の断罪は済んだ。明智秀頼、それに詠美にそっくりな絵美とやらの順番だ」


わたしの従姉の詠美ちゃんとどんな仲かはわからないが、この女のことはわからない。

わからないから凄い不安なのだ。


「一応聞いておく……。美月のギフトは人の身体をリンクさせるギフト能力か?」

「おい、馴れ馴れしいぞ明智。タケルの親友というだけでわたくしの名前を呼ばせる許可を貴様に出した覚えはないぞ。お前ら2人に見られているというだけでわたくしは不快だ。──それと、問いについての答えは否だっ!」


息を飲む秀頼君。

深森美月が秀頼君に強く立ち向かえる何かがあり、わたしは既に逃げたいくらいにこの場にいることを後悔する。


「わたくしのギフトの扱いは繊細にならざるを得ないんだ。このギフトはとても面倒な縛りがあってな。効果も5分程度ととても短い。……だが、それ故にギフトの能力は『この結界にいる間はわたくしの思い通りに何でも起こせる』」


「例えばこんな風にな」と実践する様に無の空間からリンゴを生み出す。

リンゴを見せ付ける様に一口かじりだす。

秀頼君のギフトより恐ろしい効果なのを見せ付けられ、縋る目になり秀頼君を見つめる。


「ふ、ふふっ……。だったらよぉ【今すぐこのギフトを解けよ】」


秀頼君が『命令支配』と豪語するギフトを発動させた。

これでわたしも少し安心する。

しかし……。


「ギフトでも使ったか?わたくしがお前たちにギフトなんか使わせるわけがないだろう?」


未だに『月だけの世界』の結界は溶けず、棒立ちの秀頼君が視界に映る。


「チッ……、むかつくむかつくむかつく」


秀頼君がイライラしていて、見境なくぶちギレしていてぞわっとする。

十文字君のギフト能力が誰よりも嫌いな秀頼君に対し、それは堪忍袋の緒を切れさせる行為なのだ。


「…………ははっ。やめよう、やめようぜ!」


すると、秀頼君は取り繕うように、媚びるように笑う。


「何ムキになってんだよ?美鈴を襲ったのなんかシャレだよ。三島だってこんなことになるなんて想像が付かなかったんだよ。事故、事故。だから仲良くしようぜ」


降参とばかりに手を上げ、深森美月に近付いていく。


「美鈴を襲ったのがシャレ、だと?」

「あー、そういうこと。タケルをあんな目に合わせて俺もカッチーンってきたのよ?そういう意味ではあんたと俺は同じ気持ちなんだぜぇ?俺もタケルとは友情を感じていたんだねぇ」

「…………」

「三島だってさぁ、わかるわけなくね?人が死ぬとか思わないっしょ?だから俺のギフトのセーブの仕方を教えただけだったんだよ。俺は親切心だったのさ。なんなら罪を償うしさ、和解しようぜ美月ちゃん」


秀頼君が謝りながら一歩、一歩と深森美月に歩み寄る。


「…………本当にその言葉に嘘はないのか?罪を償うのか?」

「マジ、マジ、大マジ!だからさ、ほら仲良くしようぜ。仲直りの握手だ」


秀頼君が無防備に右手を差し出す。

当然彼女は疑いの目を彼に向けるも、ニコニコと笑っている。


「…………わかった。和解成立だな」

「死ねっ!」


秀頼君が隠し持っていた折り畳みナイフを左手で持ち、深森美月の頭を狙う。


「…………あ?」


ガンっ!、と鈍い音が響く。

見えない壁みたいなモノがナイフの切っ先を防いだ。

「……シャリ」と目を瞑った深森美月はリンゴをかじり、「ふぅ……」と息を漏らす。


「残念だ……。あまりタケルの友人を悪く言いたくはないが、あんたは人間のクズだな」


右手に持っていたリンゴが光になり消えていく。

そして、彼女は閉じていた瞼を開ける。

静かな怒り、失望、軽蔑。

全てを込めた目で彼女はわたしと秀頼君を一瞥した。


「ただ、罪は償うんだろう?今さら取り消しはさせない……。まずはナイフを消す」

「っ!?」


秀頼君が握っていた折り畳みナイフが光になり、氷の様に溶けていく。

それを呆然と信じられない顔で口をパクパクさせている。


「まずは悪さをする右腕を切り離させてもらうか」

「…………があっ」


秀頼君が痛みを堪えているのか右肩を抑える。

もしかしたら彼が死ねばわたしの彼から支配された人生も終わるのではないか?という気持ちが沸いてくる。


──なら、死んでくれ。


もう、わたしをこんなことに巻き込まないでくれ。

わたしは黙って、深森美月が彼を殺すことを期待する。


「っっっっっ……!?ああああああ!?あああっ……!?」


突然わたしの右肩に激しい痛みが走ってくる。

わけがわからない……。

何がどうなっている…………。


「はぁはぁ……。【絵美、俺が受ける痛みを肩代わりしろ】……」

「なっ!?…………この外道がっ!」


2人の会話が遠い……。


それよりも痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!


なんで毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回、毎回わたしがこんな目に合わなくちゃいけないんだ……。


「がぁっ……」


右肩からブチブチと腕が千切れ、重力に従うように地面へと腕が落ちた。

わけのわからない血がドバドバと滴り落ちる。


「いだぃ、いだぃ……」


目からたくさんの涙が出てきて焦点が合わない。

痛みが消えるどころが、痛みが常に走り痛い……。

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。


「あんまりそっちの子は巻き込みたくなかったのに……!」

「何言ってやがる。お前が俺の腕を落とそうとしてきたんだろうが!……絵美をやった引き金を引いたのはお前だ。俺は痛みを押し付けたに過ぎない。なんならお前の寝ている妹の腕を落としてやっても良かったんだぞ」

「…………本当にクズだなお前。もう本当に消えてしまえよ……」

「あ……?」


目がおかしくなっているのかはわからない。

ただ、何故かどんどん秀頼君の身体が消えていっている気がする。

痛みでおかしくなり、耳からの情報が遠すぎてはっきりしない……。


「て、てめぇ……!?」

「消滅しろ……」

「このクソ女があああああああ!」


それから秀頼君の気配は消えていく……。

それよりも腕が痛くて、何が起きているのかわからない……。


それから、女性がわたしに近付いてくる気配がする。


「すまない……。あなたをこんなことに巻き込んで……。わたくしのギフトは魔法じゃないから腕をくっ付けたり、妹の紋章を消したりなんかは出来ないんだ……」

「かえせ……、腕を返せ…………。痛いんだよ……。こんな身体で、こんな痛みが続くなんて…………生きたくない……」


せっかく秀頼君が消えたのに、なんでこんなに苦しまないといけないの………?

こんな状態なら、まだあの悪魔に使われていた方がマシだった……。


「すまない……。君が死にたいのなら苦しまずに死なせてあげよう……」

「わたしは絶対にお前を許さない……。十文字君もお前の妹も道連れにしてやる……。苦しんで苦しんで苦しんで、孤独に生きろ」

「…………あぁ、受け入れるよ」

「そうか……。なら、ころせ…………」


そう言うと、わたしの身体も光になっていく。

暖かい温もりに癒されて、痛みが引いていく。

視界が全部闇に変わった時、──佐々木絵美は消滅した……。










─────




【クズゲスSIDE】




「うっ…………」


何度目かわからない悪夢に目を覚ます。

すると視界に円がすやすやと眠っている姿が確認できる。

そういえば、美月の家で西軍全員が寝ているんだったか……。


「…………?」


…………今、美月の名前を思い出した途端に殺意が芽生えた。

どうしてだろう?

わけがわからない。

なんで、いつもわたしは悪夢を見るのだろう……。


「…………絵美さん?」

「っ!?り、理沙ちゃん…………?起こしちゃった?」


周りが熟睡している中、わたしの声で理沙ちゃんを起こしてしまったかと思うと申し訳ない。

彼女は体勢だけ起き上がったのがなんとなくわかる。


「ご、ごめんね……。夢見心地が悪くて……。まだ4時くらいかな?寝直そう」

「……」

「よく、変な夢見るんだよね……。非現実なのに、現実みたいな夢?よくわからないけど夢の中では苦しくなっちゃうの……。それが小学生の時から何回も何回も悪夢を見てしまうんだよね……」

「……絵美さん」

「ん?」


いつも以上に真剣に悩んだ声の理沙ちゃんがわたしを呼び止めた。

なんだろうと、彼女の方向を凝視した。


「……………………」

「え?」

「あっ、いや、なんでもありません。寝惚けてました!眠り直しましょう」


慌てた理沙ちゃんがタオルケットを身体にかけて寝直した。

「そうだね」と頷き、わたしもタオルケットをかけて寝直す。







今、理沙ちゃんがわたしに小さい声で「ごめんなさい」と呟いた気がした。

その意味も意図もわからないまま、わたしは再び眠りに落ちる。


次は夢を見ることはなく、すやすやと熟睡できたのであった……。

ハッピーエンドならタケルと美鈴は目を覚まし、バッドエンドなら2人共死亡します。

条件は美月の好感度がカンストかつ、美鈴の好感度もカンストなのが条件。

好感度カンストがかなり難しいので攻略サイトを参照しないとバッドエンドになりやすい。


本来、桜祭の10章執筆前の予定ではハッピーエンドでも美鈴は死亡予定だったので、ある意味救済しています。

本来は美鈴は美月より八つ裂きにされる予定でしたが、美月のキャラクターをクズゲスに寄せた結果、タケルの身体とリンクさせる末路に変更しました。



美月はギフトの修行をしていないので、チートギフトなんだけど、メチャキツ縛りなどもあり、器用貧乏になっています。

というか、こんなギフトを修行されたらたまんないよ……。


修行をしていない理由は、美鈴の紋章を解くのを優先していたため。

しかし、修行してもギフト発動中しか紋章の呪いを解くことができないためにギフトの修行を諦めてました。

桜祭が気に入っているギフト。

美月がリンゴを食べていたのは好物だからかも?


バッドエンドの場合、おそらくギフト狩りになっていてもおかしくない精神状態の美月になると思う。

正式な設定はありませんが、なんとなく。




因みに絵美虐エンドは次でラストになります。

今までの4つはあくまでタケルがファーストヒロインとくっついたことによる結果です。


いつになるかはわかりませんが、次に描かれる『佐々木絵美の末路E』が正史扱いになります。

既に構想は出来ているので楽しみにしていてください。




女子会編終了です!

ありがとうございました!

めっちゃ楽しかったです!



次回、久し振りのクズゲス秀頼の登場……。

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