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58、十文字理沙のナチュラルマウント

「ささっ、次はせーちゃんだよ」

「のーちゃんの自己紹介が盛り上がるほど、私にどんなプレッシャーがかかるかわかる?」


星子はお腹をさすりながら、盛り上がり気味の西軍の雰囲気に飲み込まれそうになる。

それに、仕事や学年も違うことでやや名ばかりのメンバーになっている自覚も星子は持っていた。


「いいじゃん、いいじゃん。ちゃちゃっと紹介しちゃいなよ!」

「うー、わかったよ……」


今回のメンバー内でゆりか、遥香、美鈴が初対面。

しかも美月は面識があるもののギフトで顔が変わっていたのでその説明も必要かと思うと気が重い。


(1番気が重いのは、みんなお兄ちゃんが好きってことだよ……。妹として、もうちょっと女性関係をどうにかして欲しい……)


兄への思いがみんなから語られる度に、複雑な心境になる星子。

もしかしたら将来の義姉がこのメンバーにいるのかと思うと、反応に困る。


「そこの、せーちゃん」

「は、は、は、はいっ!な、な、なんでしょうか美鈴先輩!?」

「驚きすぎじゃない?」


突如、まったく予期せぬ方向から和と同じく『せーちゃん』呼びをされて星子は慌てた反応と緊張が走る。

スターチャイルドという仮面を被った際はどんなライブや撮影でもミスをせず平静でいられる鋼の心臓は、細川星子に戻るとちょっとしたことで動揺してしまう一般人の心臓に戻ってしまう。


「あなたが入ってきた時から美鈴はずっと気になっていたのだけど、どことなく秀頼様に似ていますわね。可愛いわ」

「は、はい!私は秀頼の妹です!」

「やっぱりー!せーちゃんになんか惹かれる感じがありましたの!」


美鈴がにっこりと笑った。

隣の絵美は「凄い……」と美鈴の察しの良さに驚く。


「なるほど。わたくしも秀頼の妹の星子に会ったことがあるがまさか秀頼に2人も妹がいるなんてな」

「…………え?」


理沙がこないだの廊下の話を思い出す。

星子が白髪と思っていたりと、美月の星子像が一致していないのだ。

絵美や円も美月の発言に考え込んでしまう。


「…………ん?なんだこの空気?」


ゆりか、遥香、美鈴は周りが気まずい雰囲気になった理由がわからなかった。

当事者の星子が「あはは……」と誤魔化すように笑って真実を語る。


「……私の名前は細川星子と言います」

「細川……?秀頼様と名字が違う……?」

「細川星子……?ん?秀頼には同姓同名の妹がいるのか……?」


深森姉妹は理解することが出来なかった。


「ししょーと同じ髪色だ!」

「守ってあげたくなる愛おしさです!」

「ちょっと……、あたしを挟んでハピハピするなよ……」


星子に興味津々であるゆりかと遥香に挟まれたヨルが自分とのテンションの差が大きくてうんざりといった様子を見せる。

ヨルは喫茶店で会話をしていたし、喫茶店のバイト中でも数回は顔を合わせているので星子の珍しさは皆無であった。


「お兄ちゃん……、明智秀頼とは実の兄妹であるのは間違いありません。ただ、両親が事故で亡くなったことにより生き別れになり名字が変わりました」


父が母を殺してしまい、とは説明しなかった。

絵美や理沙、タケルなどの親しい中でも事故で両親が亡くなったとしか秀頼も星子も真実を語らなかった。

だから『事故』とだけぼかしているのである。


「そ、その……、名字はわかったが姿も身長もまるで別人じゃないか……?スターチャイルド本人なんだよな……?」

「これは秘密ですよ、美月先輩」


左手の人差し指を口元に持っていき、『シーっ』とする仕草をする星子。

すると美月と美鈴の髪色よりやや薄い金髪になり、黒いメッシュというスターチャイルドと同じ毛髪に変わる。

元ギフト狩りであり、なんとなく肌でギフトの感覚がわかるゆりかが瞬時に「ギフトの力か!」と驚愕する声を上げる。


「はい……。だから美月先輩と会った時はギフトで姿を変えていたんですよね」

「な、な、な、な…………!?」

「美月は大分パンクしてますね……」

「あの時には永遠も知っていたのか……?」

「うん。私たちは初対面の時から星子がギフトを使えることを教えられていましたから」

「…………秀頼本人含めてあいつの周りは凄すぎじゃないか……?」

「同感です……」

「いや、学校の学力で学年1位取る永遠も凄すぎに含まれているんだが……」

「秀頼さんを養うために必死ですから」


永遠が『ドヤッ!』と顔をしている。


(学年1位の動機が秀頼を養うこと!?)


思ったよりやべぇ!と咲夜が付き合いの長い永遠の動機に思いっきり突っ込んだ。

誰も口にしないからウチの感覚がおかしいのか?と辺りをキョロキョロするもみんなは特に疑問を挟まなかった。


(やっぱり永遠さんはそれが動機だったのか!)

(知ってた)


理沙と絵美らは言及されなくても既に知っていたのである。


(確か原作では学年10位くらいだった様な……?原作より勉強してない筈なのに原作より結果出てるのヤバくない!?)


永遠の愛の力が原作の勉強狂すら上回る成績を叩き出しているのである。

引っ越しをする前は父親にガミガミ言われていた永遠だが、最近はもう当然のように結果を出す永遠には参ったとばかりに人付き合いには口出しはされなかった。


「お兄ちゃんとは名字が違っても私のたった1人のお兄ちゃんだし、あまり他の女子とイチャイチャするお兄ちゃんは見たくないです!だから、お兄ちゃんは渡したくありません!」


秀頼への好きな思いと、兄妹だからという複雑な思いがあった。

もし、血さえ繋がっていなければ兄を誘惑し、キスして犯して将来の約束をしたいという気持ちを抑えている星子であった。


「うぅ……、健気だよせーちゃん……」

「美鈴先輩……」


秀頼が大好きな気持ちが伝わった美鈴は共感し、泣きそうになった。

大好きな姉の美月がもし兄だったら、自分も第二の星子になっていたかもしれないと思うと他人の様な気がしなかった。


「こんな感じです。次は理沙先輩の番ですね」


星子が理沙へとバトンを渡す。


「十文字理沙です。兄のタケルとは双子というわけではなく、誕生日が12ヶ月弱離れているだけです。明智君との付き合いも長いし、明智君の1番の親友である兄さんからもたくさん情報が入るのでこの中で1番明智君に詳しいのは自分だと自負しています!……まぁ、私も永遠さんと同じで全員と面識ありますが、美鈴さんと直接会話するのははじめてですね」

「私は津軽円よ。和の姉になるわ。明智君と出会うために導かれた、私と明智君は運命の糸で繋がれているわ。よろしく」


そんな感じで『誰1人秀頼を譲らない』ことを宣言した自己紹介は1時間以上も続き、絵美が苦笑いになったのである。


(秀頼君のプライベートな空間である部屋にたくさん出入りしているぶん理沙ちゃんどころか西軍で1番わたしの方が詳しいですけど)

(傘で竹刀に勝てるとか、前世含めれば理沙より私の方が明智君のこといっっっっぱい知ってるけどね)

(タケルだけでなく、マスターとの会話を把握しているウチが1番秀頼をわかってるけどな!)

(秀頼さんとよく勉強しながら直接好みを聞き出してリサーチを欠かさない私が誰よりも理解が深いですけどね)

(秀頼先輩と1番腹割った会話が出来る私が1番わかってますよ)

(お兄ちゃんが1番特別扱いしてくれる私の方が理沙先輩よりわかってあげられますけどね)

(師匠と1番距離が近い我が誰より頼りにされていて勝っているがな)

(まぁ、不本意な話であるが、考察力の高いあたしが明智を誰よりわかるんだよなぁ……)

(明智さんの捨て身の献身力を受けたボクが1枚上手の場所にいますけどね)

(秀頼と1番色々なジャンルで話せるわたくしが誰よりも秀頼を理解できるはず。理沙はにわかか?)

(秀頼様の不思議な力を見せられた美鈴がこの中で秀頼様の理解が深いですわ!それだけ美鈴を信頼してくださっているんだわ!)


理沙の何気ない一言が彼女らが心の中で恋の炎をメラメラ燃やしていた。


「長い自己紹介でしたね……」


先ほど考えていたことを表情に出さずに遥香が予想出来なかったと笑って呟く。


「しかし、これからどうする?一泊というから色々準備してきたが?」


咲夜の素朴な疑問に11人がうーんと唸る。

今回の目的である西軍メンバー全員が面識を持つは達成された。

ここから雑談をするにしてもまだ昼過ぎだ。

1日はまだ長い。


「することに迷うなら永遠が通うという咲夜の自宅の喫茶店に行ってみたいものだ」

「良いですね!軽くコーヒーでも飲みましょうか!」


永遠が賛成意見を出すと、絵美、理沙、円、美鈴…………とほぼ全員が賛成票を出して喫茶店『サンクチュアリ』に行くことが決まる。


「…………え?ウチ、さっき店から出たばかりなんだが……」


美月のマンションに遊びに来て1時間で自宅に戻ることになる咲夜だった……。

自己紹介終わりました。

進路は違っても、多分彼女らは一生ずっ友なんだろうな……という間柄になりました。


絵美から右周りで並んでいた順番は(自己紹介した順番のこと)、極力仲が良い人を両サイドに置く様にしてました。

結構考えました。




そんなわけで、300話記念として1ページだけ番外編である秀頼ずっ友エンドを掲載後、サンクチュアリに向かうことになります!







次回、円に振られた主人公タケルが秀頼と友情を誓う……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ズッ友になるの早くない?と思ったけど、星子のギフト暴露と和の小説公開効果かな
[良い点] ここまで一気に読んでしまいました!いくらガムを噛んでも予想外な味が出てきてそれらが上手く絡みあってさらに昇華された味になるといった印象を抱きました。要は飽きがこなくて面白い!。あと個人的に…
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