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40、鈴【運命】

第5ギフトアカデミーに進学した。


差別的な目が減ったというよりは、小・中学校と比べて他人に興味がない人が増えたという印象だった。


彼氏・彼女・友人・自分。

主にそれら以外はどうでも良いと考えている人の集まりという淡白な輪の集団に見える。


美鈴の顔にぎょっと驚く人も多いのは事実だが、慣れているし、どうでも良かった。


「……くっ、熱い」


ただ、顔に走る熱さだけは慣れそうにない。

苦痛に顔を歪めてしまう。


偶然なのかはわからないが、宮村永遠と同じクラスになる。

しかし、明るい面影は消え失せ、目に光が宿っていない別の子へと生まれ変わった印象だ。


この世界にはまるで『何も期待していない目』だ。

永遠の真っ黒い闇が目と背中から見えてしまいそうだ。

お姉様の話では『両親が永遠の目の前で自殺した』というモノであったか?


「…………」


その雰囲気に、美鈴は震える。

あぁ、永遠もまた美鈴と同じ挫折を味わったんだね。

小学校の頃の面影はない。

でも、美鈴は断然今の方が大好き。


永遠と少し言葉を交わしたが、本当に些細なモノであった。



お姉様が「新しい学校はどうだった!?」と会話をしてくるが拒絶し、口を開かなかった。


大好きなお姉様。

答えがないとわかっているのに、愚かに何回も思考停止のように語りかける姿が大好き。


地元の人がお姉様と永遠以外が不在な学校というのも嬉しい環境であった。

まぁ、邪魔なお姉様だけは姿はあるんだけど。




慣れたのか、慣れないのかはよくわからないがそんな学校生活が日常になってきた頃、美鈴に新たな出会いが待っていた。


「熱い……」


いつも以上に紋章の熱さに参り、よろけて歩いていた時であった。



『てかさ、秀頼。お前、スタヴァの姉ちゃん覚えてるか?』

『あ?』

『秀頼にコーヒー溢したバイトの新人だった二重がチャームポイントだった姉ちゃん。お前が『制服汚れた』ってぶち切れたやつよ』

『あぁ……。なんかあったかもな』

『覚えてんだろ!?お前が散々『バイト辞めろ』だの『バイト帰りに車に轢かれて死ね』だの『店長呼べ』だの『制服代弁償しろ』だの俺の制止を無視して罵倒しまくった姉ちゃんだよ』


耳から微かに男性と思わしき声がする。


『昨日スタヴァ行ったらあの姉ちゃんいなくてさ。バイト辞めてしまったのか店員してた子に聞いてみたら、あの日バイト辞めた挙げ句その日の帰り道に事故に遭って亡くなってしまったらしいぞ』

『へぇ。それはお気の毒に。バイト初日だからとか変な言い訳してたけど、ミスして良い理由にはならねーからな』

『そういうこと言うなっての。口は災いの元とは言うが、お前マジでそういうの迂闊に口にするなよ』

『へー、へー。あんまり暴言吐くのはやめますよー』


あれ?

なんかドンドン声に近付いてしまっている気がする。

そのまま角から男2人が飛び出してきて、片方の男にぶつかってしまう。


「う、痛い……。退きなさいよ、どんくさいわね」

「大丈夫か?」

「え?」


クラスメートの十文字君だったかな?

彼が美鈴に優しく声を掛けて、近寄って来た。


「悪い、悪い。こっちのミスで深森に不愉快な思いをさせてしまったな」

「べ、別に大丈夫だけど……」

「あはは、マジで悪いね。可愛い女の子にぶつかってケガさせたとかだったら俺が自分を許せないからさ」

「……っ!?」


美鈴を可愛いって言って、手を差し伸べてくれた。

彼の態度からは嫌悪感や裏の顔などが全然見当たらない大好きなお姉様と同じ雰囲気がある。

悪意に敏感な美鈴のセンサーにも琴線が触れない。

顔の好みなら、隣の明智君の方だけど、十文字君の美鈴に対応する反応を見てビビンときた。





美鈴の運命の王子様だ!

十文字君……、いやタケルさんに運命を感じた。






「とにかくケガがないみたいで安心したよ!じゃあな、深森。またクラスで」

「…………」


タケルさんが手を振って美鈴が歩いてきた方向へ無言の明智君と2人で去って行く。

こんな近くに運命の相手がいたなんて顔が熱くなる。


「十文字タケルさん……。好き……」


いつも苦しまされる紋章の呪いの熱さとは違う。

心の底から熱くさせる熱意は、とても清々しく、何よりも大事にしたい美鈴の気持ちだった。
















「…………」

「なんだよ秀頼?深森と会ってからずっと黙ってさ?」

「いや、ラブコメの波動を感じる」

「ま、まさか秀頼!?深森のこと!?」

「お前バカじゃねぇの?奈落の落とし穴に落ちて死ねば?」

「ひでぇ……。因みに俺、攻撃力700くらいなんだけど」

「あっそ、死ねませんね。本当死ねば良いのに。【今すぐ死ね】」

「本当面白いよなお前って。今すぐ死ねって言って死ぬ奴いねーだろ」

「…………そりゃあ、お前が特別な奴だからだよ」

「なんか言ったか?」

「さぁ?なんか言ったかな?」


2人の遠慮のないやり取りがずっと続いていた。


クズゲスでスタヴァの姉ちゃん初登場で読者様が歓喜していた日にこの話を執筆していました……。

なんでスタヴァの姉ちゃんがこんなに謎の人気があるのよ……。


理沙や遥香より人気ある気がしてきた。

頑張れよ、原作ヒロイン……。

咲夜並みくらいに人気がある気がする……。


なぜかスタヴァの姉ちゃんは、見る人によってチャームポイントが変わる謎の特性がある。

スタヴァの姉ちゃん本人は長いまつ毛、クズゲス秀頼がえくぼ、タケルが二重まぶた、スタチャは整えられた眉がチャームポイントと認識している。





美鈴は拗らせた結果、かなりのロマンチストに育ちました。


Q.この恋は実りますか?

A.月編を見直してください。

ヒロインじゃないので実るわけないです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり自分と同じ無様な姿にあんしんしてるのね美鈴。 でも、君の恋だけが実らないし、永遠ちゃんは君と違って祝福できたんだね。 無様ブーメランのクリティカルわろす [一言] スタヴおねーさん…
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