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20、月【面識】

自己紹介も終わったところで、明智が「なんの用だ?」と遥香に話しかけると、彼女は説明をしてくれている。

話に集中しなくてはならないのだろうけど、どうにもこの明智のわざとらしい張り付いた笑顔が気持ち悪い。


美鈴をひそひそとバカにしている連中と同じ顔だし、この明智秀頼という男は論外だな。

名前で呼びたくもない。

遥香も危機感は持って欲しいとは思いつつ、この男の中身までは知らないのでわたくしは深く干渉をしないのが正解だな……。


「ギフトに詳しいねぇ……。それで、深森はどんな用件?」


わたくしに目を向ける明智に鳥肌が立つ。

多分、この男とは精神的に合わない。

事務的な対応をし、この男に弱みを見せないように話をする。


「『ギフト享受の呪縛』……?あぁ、ギフトの才能ない奴が魔術に頼ろうとする見苦しいやつね」

「は?秀頼、なんだよそれ?」

「紋章が顔に現れるんだよ。クラスの深森の妹に出てるやつ」

「あぁ、あの黒いやつか!」


明智と十文字で勝手に盛り上がっていた。

基本的に『ギフト享受の呪縛』なんかネットにすら掲載されない秘匿的なモノを明智が詳細を知っていることには感心を覚える。

絶対にそれすら知らないと思っていたから。


「それの解除方法を知らないか?妹の呪いを解きたい」

「明智さん、なにか方法はあるんですか?」


わたくしの言葉と一緒に遥香からもお願いの言葉が出る。

遥香がいなかったら多分、明智と会話すらしなかったと思う。


「ないよ、そんなの」

「おい、秀頼!?」


しれっと突き放す言葉の明智に十文字が制止する言葉を出す。

友達の言葉にも明智は塩対応で返す。


「ないものはないの。まぁ、もしかしたら『呪いが解ける』ギフトとかいるかもな」

「もしかしたらって……」

「じゃあ、タケル君が深森の手伝いをしてあげなさいよ」

「……え?」

「じゃーね」


話は終わったとばかりに明智は背中を向く。

実はそんなに十文字と仲が良くないのか?


「明智さん、機嫌悪いですか?」

「さっき俺がイタズラで秀頼のピアスを取ろうとしたのを根に持ってるんだろうな。ぶっちゃけ殺されるかと思った」

「何やってるんですか……」

「あいつ、自分の私物触られるの嫌いなんだよ」

「わかっててやってるんですか?なんのために……?」

「あいつ見てるとからかいたくなっちゃって」


遥香と話を聞いていたわたくしが苦笑する。

この十文字という男からは永遠の言う不快さはわたくしには感じなかった。

明智の方が何倍も不快さが大きかったわけだが。


「でも、三島の友達ってんなら俺も協力するぞ」

「え?」

「深森の妹さんとも知らない仲じゃねーし。男のコミュ力あった方が人探し便利だろ」

「良いのか?」

「ああ!遠慮すんなよ」


十文字が男らしく言い放つ。

永遠がムキになるのもわかる気がした。

この男になら、わたくしは背中を任せられると判断した。


「わたくしのことは美月で良い。美鈴と判断が付かないだろうしな。だからタケルと呼ばせてもらって良いか?」

「ああ!よろしくな美月!」

「こ、これが美月さんの友達になりたいアピール」

「こら」

「あう……」


遥香が余計な一言を出したので軽く咎める。

そのやり取りを見たタケルが笑った。


「あははは!三島と美月は仲が良いな!あー、良いコンビだ!」


タケルの笑いに恥ずかしくなる。

なんか目が離せない魅力と、なんでも話したくなるような懐きやすさ、女性を引っ張る頼もしさがある。


多分、タケルは長男タイプだと思う。

妹とかいるんじゃないかなと考える。


「じゃあ、時間ある時に呪いを解くギフト探しはじめようか」

「うむ。わかった」

「じゃあラインかなんかで連絡先交換しようぜ」


こうして、わたくしのスマホに『十文字タケル』という男の名前が追加されたのであった。

お父様以来の男性の連絡先だ。

……悪い気はしないな。


こうして、わたくしはタケルと面識を取ることになったのであった。









─────








「ばぁかじゃねーの!ひゃははははは!」


角の影にて悪意の塊の男は声を殺して笑っていた。

これが笑わずにはいられるかとでも言いたげな反応だ。

ギフトを知りすぎている男が、『呪いを解く』ギフトをないと断じるわけがなかった。

誰よりも、ギフトの可能性を知り、誰よりもギフトを愛するギフト信者なのであるから。


「『『ギフト享受の呪縛』を解く』ギフト。はい、これがピンポイントで存在したんですねー」


タケルをバカにしている口調で1人呟く秀頼。

誰にも聞こえていない説明を楽しそうに続ける。


「でも、残念ながら露出狂の残念くノ一の親玉の『ギフトリベンジャー』から去年、殺害されているんだよなー。はは、エニアの言では『ギフトが被ることはない』んだってよ。はい、残念!積んでます!」


1ヶ月ほど前に自分を殺害しようと襲ってきたクラスメートの上松ゆりかに拷問した光景が思い浮かぶ。

『命令支配』を使わずに、じわじわとなぶり殺しにしながら彼女の知るギフトの情報を全部吐かせた。

その一覧に美月の探し求めるギフトが存在しているのを確認しているし、上松ゆりかから『ギフト享受の呪縛』についても情報を盗んだのだ。


「最初から全部茶番なんだよ、タケルちゃん。存在しないギフト探しがんばってねー」


他人事のように秀頼は呟いた。

実際に件のギフト所持者を殺害したことに関して、彼はまったく関与してないので他人事には違いないのだが……。


「ひゃははは。シスコン美月ちゃんも良い身体してるし、どっかの鳥籠女みたいに犯して人生滅茶苦茶にするのも楽しそうだけど、俺も暇じゃなくてね……。…………そろそろ三島の『エナジードレイン』も爆発寸前かなぁ」


やることが多いのが残念だと秀頼は1人で愚痴りながら教室へと戻って行ったのであった……。

ゆりかの『お前学校で我のことバカにしたな?』が聞けない世界線が悲しすぎる……。

そもそもネタヒロインなのにフラグの塊みたいな女すぎる……。

咲夜とゆりかの2大ポンコツが原作にいないので癒しがない……。



原作のゲームにおいて、秀頼の独り言は描写されていないので、『呪いを解く』ギフト所持者探しが茶番とは明かされません。

最近の原作秀頼は少し大物ぶった感があるので、これくらい小物なくらいがちょうど良い理想的な悪役キャラクターだと思います。

こんな男がタケルと美月の主人公とヒロインの恋のキューピッドになっているのが泣ける……。





次回、タケルと美月は『呪いを解く』ギフト所持者を見付けられるのか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「」咲夜とゆりかの2大ポンコツが原作にいないので癒しがない…… 遥かも十分癒やしだろぉ???
[気になる点] まだこの話までしか追い付けてないので先で明言されてるのかもしれませんが……あれ? 永遠ちゃんが中古かどうかは秘密ではなかったのですか!? 犯したって言っちゃってますけど!??
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