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11、佐々木絵美と深森美鈴の人間関係

会議が終わり、みんなで帰る流れになる。

秀頼君の恋人になりたい人達の集まりではあるが、なんやかんや仲はみんな良い。

衝突があるなら秀頼君関連だけだし、新しく加入したヨルも遥香も溶け込んでいる。


理沙ちゃんからも帰る誘いをもらったけど、わたしは用事があるのでわたしだけ輪の中から抜け出した。

そこからみんなと別れて1人廊下を歩く。

本当は他の子も連れて来た方が良いのかと考えるけど、驚かれるくらいなら1人の方が楽だろうしね。


「……ふーっ」


よし、気合いを入れてわたしは目的であった保健室に入る。

出迎える先生は不在だったがそこに関しては特に何もない。

わたしは先生よりもベッドで寝ている生徒の方に用事があった。


「やっ!こんにちは、深森さん」

「佐々木さん……」


今日の昼休み、具合悪そうにしていた深森美鈴さんを保健室に連れて来たのがわたしだった。

わたしが保健委員なのもあるけど、体調悪そうにしていたら流石に保健委員じゃなくても保健室に連れて行く。


「放課後だしもう帰ったかと思ったよ」


会議終わって1時間。

深森さんが帰っている可能性の方が高いと思った。

けど、なんとなく帰ってない気がしたので、理沙ちゃんたちと帰るのをやめてこっちに来た。

無駄足にならずに済んだと思い、近くにあった椅子に座る。


「……別に、帰りたくないし」


そう言って深森さんは下を向く。

なるほど、多分過去の永遠と同じで家族関係に悩んでいると見た。

うーん、こういう時はどうやって声を掛けよう?


「……そっか。じゃあもう少しお話していこうか」

「え?」


下を向いていた深森さんがわたしの顔を見てくる。

特におかしなことを言ったつもりはなかったが、驚かせてしまったらしい。


「だって深森さん、帰りたくないから保健室にいたんでしょ。じゃあ時間もて余して暇なんでしょ?ならちょっとくらいお話しよっ!」

「…………」

「佐々木絵美だよ。佐々木さんなんて呼ばないで絵美で良いよ」

「…………美鈴で良い」

「うん、よろしく美鈴。せっかくクラス一緒なんだし仲良くしよ!」

「興味ない」

「…………え?」


美鈴から拒絶と不満の声がする。


「…………美鈴を哀れむのはやめて!?顔に変な紋章が広がってる美鈴が醜いでしょ!?気持ち悪いでしょ!?心の中で嘲笑ってるんでしょ!?そういうの本当にムカつく……」

「別に気にしてないよ」

「ウソばっかり!絵美も美鈴を腫れ物扱いするんでしょ!もううんざりなの……」

「だから気にしてない」

「……」


美鈴の頭を撫でる。

紋章とか本当にどうでも良い。

同じクラスになったんだし、友達になりたいだけ。


「大変だよね。今まで色々言われてきたんだよね。でも、わたしは本当に気にしてないよ」

「な、なにやってんのよ!?」

「…………」


美鈴の顔に広がる紋章を触る。

確かに熱い。

美鈴が熱いって呻いた理由がよくわかる。


「強いね。こんなに熱いの毎日我慢して、美鈴は強いな。……わたしだったら挫けてるよ」

「……っ」

「大丈夫だよ、わたしは美鈴の味方だから怖がらないで」

「えみ……」


こんなに紋章に苦しんでいる人を腫れ物扱いなんて出来るわけないよ。

もしかしたら、家族にまでそういう酷い扱いされてるかと思うと胸が痛い。


「まぁ、いいや。とりあえず名前で呼ぶ仲になっただけ進展だね」


いきなりグイグイ行くのも引かれそうだし、今日は帰ろう。

1人になりたいなら1人にするのが1番だから。

わたしは椅子から立ち上がった。


「じゃあ、またね」


保健室のドアを開けようとした時だった。


「…………またね」


小さい囁くような声が耳に届く。

照れてるのかな?

美鈴ってば可愛い!

手を振ってから保健室を出る。


「よぉ、絵美」

「ひ、秀頼君!?」


保健室の角に待ち伏せたように秀頼君が立っていた。

会議してたし、10分程度とはいえ美鈴と話していたから秀頼君は帰ったものとばかり思っていた。

まさか、こんなところで会うなんて。


「帰ろうか秀頼君」

「……あぁ。帰るか」

「…………?」


いつもより秀頼君の声のトーンが低い気がする。

…………ピリピリしてる?

何に対して?

わたしに?

美鈴に?

その他に?


「な、なんか怒ってる?」

「……うん」

「え!?怒ってるの!?」


え?

思い当たりがなさすぎる……。

わ、わたしなんかしちゃった……?

慌てていると、秀頼君が淡々と口を開く。


「…………部活出たら」

「ぶ、部活?」

「俺と概念さんしかいなかった……」

「……そう」

「みんな、部活に来なかったんだ……。スゲー気まずかった……」

「……ごめん」


すいません!

概念さんと秀頼君はぶって会議してました!

心で秀頼君に謝罪をしまくった……。


「スゲー寂しかった……」

「大丈夫だよ!わたしと一緒に帰ろう!?」

「うん……」


肩を落とし、いつもより身長が低くなっている秀頼君を視界に入れて癒されながらわたしたちは帰宅したのであった。

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