6、ヨル・ヒルは邪険にできない
「ハーフデッドゲームですか?」
あたしはゴールデンウィークが終わった最初の登校日。
すぐにクラスメートの熊本セナにハーフデッドゲームについて問い詰めていた。
あの日の真実。
最初の犠牲者として語られている熊本セナはどうやってあのデスゲームを生き残れたのか?
「ゲームがなんちゃらってもしかして体育館でのアレかな?」
「た、多分それ!なんか頭ラリった奴が来たんじゃないのか!?」
「うん。それを明智君が説得して自首させたんだよ!格好良かったよー!」
あたしがあいつの中身を知らなかったら信じなかっただろうけど、関わってきたことであり得なくはないくらいには思ってる。
遠野達裄とかいう奴も言ってたし、真実みたいだな……。
あいつは本当に何者なのか?
中身が別人なのか……?
色んな意味で明智秀頼をマークするべき対象には変わりないか……。
熊本にお礼を言って廊下を出る。
ハーフデッドゲームの主催者である田沼清治について、この第5ギフトアカデミーの理事長に問い合わせたら数日前から行方不明になっているらしい。
ギフト狩り連中に消されたな……。
「明智君って彼女いるのかなぁ?佐々木さんとか宮村さんと付き合っているのかなとか考えるけど、ヨルさんはどう思う?」
「さぁ?付き合ってんじゃね?」
「えーん!そんなぁ!別れるの待ち!?」
「さぁ?」
真剣にギフト狩りについて考えているのに熊本が明智の相談をしてきて集中が途切れる。
「サンキュー」とお礼だけして熊本から離れる。
「さて、ギフト狩りについて放課後に動くか……」
瀧口雅也が『ギフトリベンジャー』という情報はゆりかから得た。
そこで無策で瀧口に向かうほどあたしだってバカじゃない。
チェスを動かすのと同じ。
攻める相手を見定めてチェックメイトを掛けないと全てが無意味だ。
ペンダントを握り締め、放課後に暗躍する場所をどうしようか考える。
「おーい、ヨルー」
「ゆりか……?」
シュッとゆりかが現れる。
味方にカウントして良いのかわからない女だが、無意味に敵にまわす必要もない。
というか、1回ゆりかに惨敗してるから敵になるつもりもないが……。
「どうしたゆりか?」
元ギフト狩り・上松ゆりか。
寮のお隣さんで気が合う友人くらいで認識していた女が一気に要注意人物になったもんだ。
「永遠から伝言だ。放課後に『西軍グループ』メンバー全員で緊急招集だ」
「は?」
いや、放課後はギフト狩りの調査が……。
「みんな、ヨルの参加を楽しみにしている様だ。ではっ」
「『ではっ』じゃねーんだよ!なんであたしまで参加なんだよ!?」
「ヨルも『西軍グループ』じゃないか」
「知るかああああああ!」
お前の元トップを追い詰めなくちゃいけないから急がしいんだよ!
「お願いします、ヨルさん」
「理沙……」
ゆりかの横から理沙が申し訳なさそうに頭を下げる。
ぐっ……、タケルが女顔というのを頭に入れていても兄妹で顔似てるよなこの娘。
タケルが可愛がっている理沙をあたしが邪険に出来るわけがないんだよなぁ……。
「わかったよ、出るよ……。出ます……」
「よし、ヨルも確保だ」
「ヨルさん、ありがとうございます」
理沙が頭を下げてお礼を言ってくるが、「大丈夫だよ」と気に病ませないようにする。
別に今日じゃなくても良い。
それに昼休みだって調査は可能なんだ。
着席する時間になり、ゆりかと理沙から離れて席に戻り座る。
ハーフデッドゲームの流れはわかった。
さて、1人確実に調査をしておきたい人物がいるのを思い出す。
『生きるレジェンド』と呼ばれる存在。
ターザン・スルスル・メータン。
彼と一度コンタクトを取ってみようかと考えるのであった。
ハーフデッドゲームの参加者であった熊本セナさん。
本当は文芸部で概念さんに誘われた最後の1人で予定してましたがボツになりました……。
準レギュラーの予定だったのですが、出番が大幅に減りました……。
セナって名前可愛いよね。
セナというと、蒼井セナってキャラクターを思い出しますがこれに関してはまったくの偶然です。
いつか、隠しキャラ扱いになっている3人目の文芸部メンバーも話に関わる予定です。
楽しみにしていてね。
次回、調査をするヨルの元に遥香が……?