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18、明智秀頼は独り占めする

それから少しして、ヨルが料理を作り終わり配膳されてきた。

バイトが始まってまだ数日だろうにヨルも変人だからかマスターと咲夜の扱いにも慣れている様である。


「こちらがピザトースト、こちらがナポリタンでございます」

「ありがとうございます」

「ありがとうヨル。うん、うまそうだな」


山本とタケルに料理が運ばれる。

タケルって原作設定でナポリタンが好きとかだったから嬉しいだろうね。


「ん」

「……おい」

「ん」


そしてヨルが雑に炒飯を渡してくる。

なんなんだよ、俺に対して態度悪すぎない……?

置かれた炒飯を前にして、主人公とヒロインのイチャイチャを眺めてチャラにしよう。


「ウチ、秀頼の突っ込んだり怒ったりする顔好き」

「どんなやねん……」


カウンターの向こう側のマスターの隣に立つ咲夜からわけのわからないお褒めの言葉をもらう。


「そういうこと。あたしも明智の突っ込んだり怒ったりする顔好きでーす。殴りたい背中」

「蹴りたい背中みたいなこと言うんじゃないよ……」


咲夜の言葉に便乗しやがって……。

どいつもこいつも俺に優しくない世界……。


炒飯にそのまま口を付けようとするとポンポンと優しく背中を叩かれる。

タケルが表情も優しく笑っている。

俺に1番優しく甘えさせてくれる親友だった。


「愛されてんな」

「いや、その評価も絶対おかしい!?」


ちんぷんかんぷんなタケルの評価だった。

咲夜はいたずらっ子で俺にそうやって構ってもらいたいだけなのはわかるが、ヨルだけは絶対嫌がらせだから。


「良い焦げ目付きで美味しい」

「そこがこだわりってやつよ」


山本大悟も満足そうである。

こないだまでは冷凍食品を提供していたが、ヨルがバイト加入してからはきちんと食パンの段階からヨルが調理するようになり評判らしい。


「理沙の作るナポリタンとはまた違うな。俺好みの味付けだな!うめえ」

「そ、そうだろタケル!タケル好みの味付けだろ!?」

「うん」

「えへへ……」


ヨルがタケルに褒められ赤くなる。

しかし、こんなもんだったかな?

原作ではもっともっとイチャイチャしていた気がするけど……。


プレイヤーの俺が見ていられないくらいにもっとタケルがヨルを褒めちぎっていたんだけどな。


まぁ、2人っきりだった原作だからイチャイチャしてたけど、マスター含め大人数居る場でイチャイチャはしねーか。

王道カップルのタケルとヨルの絡みも良いもんだと、後方ゲームプレイヤー面する。


「あ、めっちゃうめえ!」


タケルとヨルのイチャイチャを目の保養にしながら炒飯を口に付けると相変わらず美味しかった。

ヨルの性格に難はあれど、飯に罪はない。


「はじめて食べた感触!店のものとも家庭のものとも違う炒飯の味がすげーうめえ」

「お、そうだろ」

「スパイシーな感じが良いな」

「あたし流はブラックペッパーをふんだんに使うからな」

「このピリッとした感じめっちゃ好き」

「けらけらけら、どんどん食べれ」


機嫌が良さそうにヨルは笑っている。

全く、常にこういう顔だと良いのに。


「え?こんなに旨いならメニューに入れれば良いじゃん」

「それはバイトのあたしに決める一存はねーよ?マスターに言わねーと」

「マスター!豚汁とか炒飯とかメニューに入れてよ!」

「僕の店、コーヒーメインだからね?喫茶店だからね?そもそもコーヒーと豚汁とか合わないでしょ。却下」

「ちぇ……。肯定したことないじゃん……」

「秀頼君の案がダメダメだからね。達裄君みたいにきちんとした案なら僕だって取り入れるよ」


マスターの喫茶店を定食屋にする計画が崩れた。

まぁ、仕方ないか。


「んなに気に入ったなら頼んだらいつだって作ってやるよ」

「マジで!?サンキュー」


1回きりしか食べられないのはもったいない。

旨いのは何回も食べたい。


「案外ヨルというのもありなのか?」

「え?」


タケルがボソッと『ヨルもあり?』みたいなことを呟く。

そりゃあタケルとヨルは公式カップルだからね。

アニメ版でもタケルはヨルエンドで大団円を迎えたしな。


「まぁ、ありだろ」


俺の意見を述べると嬉しそうにタケルが笑う。


「お前が幸せならそれもありなんだろうな」

「……?」


なんでタケルにヨルを後押ししてんのに俺の幸せがどうとか始まるんだ?

噛み合わない会話だったが、鈍感主人公に恋愛を語っても意味なさそうだからやめておいた。


「明智の炒飯旨そうだなー」

「あげねーぜ」

「ちぇ、独り占めかよ」


山本の交換しようぜを封印し、ゆっくり味わって炒飯の味を楽しむのであった。

しかし、そろそろ本気でタケルのヒロインを俺が探してこねーと俺も対策の打ち様がねぇ……。




ゴールデンウィークの最終日、円と原作の打ち合わせがある。

その辺りもタケルについて相談しないとな……。

円か……。

考えない様にしてたけど、そろそろあの優しくする円の態度も聞き出したいところだよなぁ……。



この居心地の良い喫茶店で何も知らないでコーヒーを啜るような人生はまだまだ迎えられそうにはないらしい。

この微妙にヨルがヒロインレースに参加するのか、タケルと結ばれるのか、独り身エンドになるのか曖昧な距離感が良いですね。

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