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37、豊臣光秀

「起きて……、起きて■■君」


誰かが俺を呼ぶ声がする。

誰かが俺に触れている感触がある。


「ねぇ、……起きて■■君」


それは、酷く懐かしい名前。

もう失われた名前。


「起きてってば、■■君」


それは、とても愛しい声。

もう会えない人。


「豊臣君ってばっ!?」

「うわっ!?」


急に大声を出されて俺の意識は完全に覚醒した。

あれ?

俺何してたんだっけ?

確か、三島に『エナジードレイン』をコントロールするように特訓して……。


……ん?

とても懐かしくて愛しいと感じた声は一体……?


「おはよっ、豊臣君」

「うわっ!?来栖さんっ!?」


学校の学習机で俺が寝ていたのか椅子に座った状態で目を覚ました。

い、いきなり来栖さんが俺の前の席に座ってクスクス笑っていた。

ということは俺は豊臣光秀になっているわけか。

都合良く当時の制服を着込んでいて、右肩が壊れているのか違和感があった。

まぁ、それはどうでもいいや。

どうせ死んだ身体だし。

それより興味を引くのは来栖由美さん一択だ。


「ひ、久し振りだね来栖さん!15年振りくらい?」

「15年……。あ、なんか死にたくなってきた……」

「ちょっと!?急にネガティブにならないでよ来栖さん!?」

「だっていきなり豊臣君が現実突き付けてくるから……。あと、関係ないけど急に『ネガティブ』とかいう単語が出て驚きました」

「じゃあ横文字NGだね」


使いなれた突っ込みの言葉を来栖さんにする。

いつの間にか来栖さんより円の方にこの突っ込みをする方が多くなって驚く。

それを再び、来栖さんにしているのが違和感が凄い。


「もう……。来栖さんも来るなら来るって言ってくれよ」

「来栖、来るよ」

「今言わないで!?」


突然憧れだった来栖さんがやってきて心臓がバクバクだ。

夢なんだろうけど、来栖さんに会えて自然とテンションが高くなる。


「くるくるです」

「何それ!?来栖ギャグ!?」

「なんですか来栖ギャグって!?」

「吉田が来栖さんは天然だからって来栖ギャグって呼んでた……」

「美奈子めぇ!あいつ……殴ってやる!」

「病弱なんだから辞めよ?」


突然来栖さんの怒りの矛先が吉田に向いたが、不憫になり引き留めた。

来栖さんの奇行が相変わらずで思わず苦笑する。

そういうところが可愛いんだよね。

身体が弱いのに、毎日エネルギッシュに生きていて羨ましくて、輝いていて、こういうところが好きだなぁ……。


「ところで今日は何しに?」

「豊臣君に会いに来たよ」

「俺に?」

「うん!私、いっぱいいっーぱい話したいことがあってここに来たんだ。豊臣君に会いたかったからさ」


明るく話す来栖さんが可愛くてつい頬が緩む。

そうそうこういう変でポンコツな子だったな。

本当に円を来栖さんと重ねるなんて失礼なことをしていたな……。


円の口の悪さとは無縁のポンコツさこそが来栖さんなのだ。


「今、豊臣君は何してるの?」

「ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました」

「……何それ?」

「そして主人公が無能すぎて役にたたない……」

「全然意味がわからない……」


俺も意味わかんないと思う。

でも来栖さんは『悲しみの連鎖を断ち切り』なんかプレイしてないだろうから明智秀頼として生活してますなんて言っても伝わらないんだよなぁ……。


「来栖さんは何してるの?大学出て学校の先生になってるとか?」

「え?なんで豊臣君が私の将来の夢知ってるの?」

「ソースは吉田」

「また美奈子!?なんなの、あの子は泥棒猫なの!?鉄槌でも下す!?」

「よし、来栖さん!ネコ助ミサイルだっ!」

「え?何それ?」

「……ごめん」


『悲しみの連鎖を断ち切り』小説版の三島遥香共通ルート書き下ろしに出てくるネコ助は知るわけないか……。

そもそも原作をしたことない人に『悲しみの連鎖を断ち切り』の話を振るなというものである。

もう止めておこう。


「うん。私はその……豊臣君が亡くなってから1年くらいで死んじゃった」

「え、えぇ!?」

「病弱には敵わなかったよ……」

「そ、そうなんだ……」


俺が死んだ後、来栖さんもどっかの知らん男とずっこんばっこんして子供を産んで幸せな家庭を築いていたらと考えると思うと脳が破壊されるので考えてなかったが、まさか俺が死んですぐに来栖さんも死んでたとは気付かなかった……。


「来栖さんは死んでからは何してるの?どっかに転生した?それとも人間じゃなくてネコかペンギンになってるとか?」

「なんで私の選択肢が人間以外だとネコかペンギンなの……?」

「いや、ネコとペンギン可愛いじゃん!」

「きゃっ、豊臣君ってネコとペンギン好きなんだ!(豊臣君が)可愛い!」

「うん、可愛いよね」


ネコとペンギンは本当に可愛い。

もふもふしたい。

おばさんに頼み込んで明智家でネコとペンギンをペットにしたいくらいだ。


「あっ、そっか!ハムスター好きだからハムスターに生まれ変わったとか!?」

「ハムスターは好きだけど、ハムスターに生まれ変わりたいとか思ったことないんだけど……」

「あと、ピ●チュウ好きなんでしょ。ソースは吉田」

「ちょっと吉田何もかも言い過ぎじゃない!?美奈子!私と剣道で決闘しようっ!」

「今、吉田は居ないよ……」


俺の来栖さん情報はだいたい吉田がソースだからな。

そもそも生前に来栖さんと話す機会がなかったのが本当に悔しい。

タイトル回収です!

地味に光秀目線で来栖さんと話す描写があるのは初です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 唐突なネトラレ妄想とタイトル回収による、脳破壊回避。 そしてむしろ変わらない特別な存在ポイントもいっしょに回避されててめがっさニョロニョロコメディ。 感動したいけど、コメディの流水に流され…
[一言] 確かにタイトル回収してる。
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