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33、明智秀頼は安心する

「べ、別に仲が悪いわけじゃねーよ?」


ギフトの効力が続いている仲を端から見たら良いか悪いかと聞かれたら悪いんだろうけど。

叔父さんへのギフトの能力を段階的に縛りを削ってはいるんだけど完全に能力を消し去るのはまだ怖い。



【いまから心を入れ替えて俺に一生尽くすんだ。俺のためにマジメに働け。お前の娯楽には一切お金を使うことを禁ずる。当然暴力も禁ずる。反抗も禁ずる。俺に都合よく生き続けろ。】

叔父さんを縛るギフトを思い出す。

あの時は若かった……。


まだ前世を思い出す前。

絵美とも出会う前。

彼女と別れてすぐか……。


今ならこんな強気な命令を下せなかったと思う。

叔父さんを不憫に思い、彼の娯楽にお金を使っても良いみたいに命令を上書きはしたが、他はもう命令を弄り様がなかった。


思えばあの時に俺と明智秀頼に分裂したのかな?

一応前世を思い出す前の記憶も多少あるんだけど……。


前世を思い出した瞬間に豊臣光秀だった時代を思い出し、完全に俺になった。

その直前、本来の明智秀頼の魂は俺に取られてしまい居場所がなくなったみたいな感じかな?

そんな気がする。


「そうですか?なーんかお兄ちゃん叔父さんに対してだけ私やおばさんと態度が違う気がするけど……?」

「それ気にする?」

「なんで突然理沙先輩専用突っ込みして誤魔化そうとしてるんですか!?明らかに違いますよ!?」


完全に無意識なんだけど星子の目は誤魔化せないらしい。


「大体気にしなくて良いでしょ、叔父さんなんか……」

「だってもしかしたらお兄ちゃんと私の保護者が逆になっていたかもしれないんですよ?」

「………………は?」


一瞬で身体全体に鳥肌が立つ感触がする。

三島の『エナジードレイン』を食らって消耗している今、もしかしたら気を失っていたかもしれないくらいに酷い電撃が走る。




星子の親が叔父さんの可能性があった?




一度も考えたこともなかった話を星子から口にされ、時間が止まる。



『なんでウチでバカ兄貴の息子育てなアカンねん。死ねやクソガキ』

『お前みたいなガキが人に好かれると思うなよ誰もお前なんか必要としないんだよ。ムカつく目をしやがって』

『良いか?お前は俺の『命令』に『支配』され続ける人生だ、わかるか秀頼?裏切りも許さない。俺を舐めるのも許さない。お前は俺の言いなりの人生だ』

『ほら、秀頼!口開けろや!ほら、ほら、ほらっ!!』




『おばさん…………、どうして僕を助けてくれないの……?僕は……、叔父さんに殺されるの……?』




嫌な記憶が次々とフラッシュバックする。

これを星子が受けていたかもしれない?

もしかしたら悪役親友になっていたのは星子の可能性もあった……?



「っ……、星子!」

「うわっ!?お、お兄ちゃん……?」

「……良かった……。星子が明智じゃなくて、本当に良かった……」


気付いたら目の前の少女を抱き締めていた。

星子が叔父さんの被害者になっていたかもしれない。

俺には、恐怖以外のなにものでもなかった。


「お兄ちゃん……」

「良かった……。本当に俺が明智で良かった……。星子が苦しむ側の人物じゃなくて、……マジで安心した……」

「そっか……」


星子は理解したような声を出す。

俺が叔父さんについて語らないことは大体察しが付いたという感じの声をだす。


「もう、お兄ちゃん。大袈裟です…………え?」

「…………」

「お兄ちゃん泣いてるよ!?」

「え?」


星子の指摘を受け、頬に触れると濡れた。

本当だ、俺泣いているんだ。




ゲームでの明智秀頼なんか俺は大嫌いで大嫌いで仕方ないキャラだった。

断片的に語られるバックボーンは虐待されていたとはわかるものの、それで人をゲラゲラ嗤いながら罪を犯すこいつはほとんどのユーザーからヘイトを稼ぎまくった。

語られるバックボーンから、ユーザーに対して『こんな過去があったんだよ?仕方ないキャラでしょ?』と弁明しているようにしか見えない取って付けたかのような同情イベントということで尚更嫌いになったという声もあった。


でも、やっぱり歪むには歪むだけの過去があり。

俺はその全容を知っている。

体験している。


同じ顔、同じ名前、まったく同じ明智秀頼という男に対して、やっぱり俺もそうなっていたんだろうなという思いが強い。

多分前世を知らなかったら、俺もなっていたんだろう。

明智秀頼という悪魔のような男に……。


そう思うと、あり得ないことなのに、原作の明智秀頼に対して哀れみの気持ちが沸いてくる。

俺の1つのあり得た可能性(ルート)なんだ。





俺は原作通りの人生を歩んだら、叔父さんとおばさんを殺害する。

多分、星子という少女を知ることはない。

だって、俺自身は本当の両親、家族に一切興味を持ったことはなかったから。

前世を思い出す前も、本当の親に会いたいとか思ったことすらなかった。

叔父さんの兄貴とかもっとヤバい奴だと大体察していたこともある。

マスターから振られなかったらおばさんと会話しなかっただろうし、妹がいるなんて知る由もしなかっただろう。


そしたら星子はアイドル・スターチャイルドを名乗ってアイドル活動し……。

兄を知らないまま、アイドル活動をして、普通に幸せな時間を過ごしたのかな?


星子と知り合えない未来があり得た。

その恐怖も襲いかかってきたのだ。






「なぁ、星子……?俺と君が出会えなかった世界とかあると思うか?」

「ないですよ、そんなの!現にお兄ちゃんは目の前に居ます!お兄ちゃんと知り合えない世界なんて私にはあり得ないです!必ず探しに行ってましたよ!」

「……そっか」


星子の答えが嬉しくて胸に込み上げるものがあった。

そうだよな、あり得ないんだ。

俺が星子と知り合えないなんて、そんな世界はない。


前世の記憶がなくても、俺は妹の星子と知り合えたはずだよな。

星子を可愛がっていたはずだ。

間違いないよな。

原作の明智秀頼だってこんなに可愛い星子に溺愛していたはずだ。

秀頼は主人公じゃないから描写されてないだけだ。


「私、お兄ちゃんと出会えて嬉しいです!」


本当に、俺にはもったいない妹だ。

多分いつか秀頼の過去も語ることになるんだと思います。

ここで語るには、シリアス続きになるのでやめておきます。

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