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26、病弱の代償・日常

クラスメートと話しているなんて変な気分だ。

そもそもこの学校で満足に誰かと会話をしたなんて明智さんと数える程度だ。


ギフトが覚醒していると気付いていなかった時は文芸部にちろっとお邪魔した時流れで入部してしまったが、本当に喋らずに無言で部室に座っていただけである。


「深森さんは、たくさん友達が居そうです」

「そうでもない。学校に通うために遠くから来ていてね。…………この学校に友達が居ないんだ」

「元々居なかったんじゃないのー?」

「失礼な!違うクラスには元同じ学校の同級生がいるんだぞっ!……ゼロなわけではない」


詠美さんにからかわれて赤くなる深森さん。

2人のペースにまだちょっとボクは付いていけなかった。


「深森さんは距離感が遠い。わたくしも美月と呼んで欲しい」

「出た!ミツキの露骨な友達なりたいアピール」

「うるさい、お前はっ!?」

「にししししっ」


ニヤニヤと笑う詠美さんにボクもおかしくなって笑ってしまいそうになる。


「よ、よろしく。美月さん」

「うむ。よろしくな遥香」

「よろしくねー、ハルカ」


早速、ボクのラインに美月さんと詠美さんのラインが追加された。

入学してからボッチだったボクだけど、はじめてクラスメートから連絡先をもらった。

タイミング的に最高だったかもしれない。


『エナジードレイン』を克服するのが、遅れていたら美月さんも詠美さんも友達になれなかったかもしれない。

明智さんには本当に頭が上がらない。


「それでハルカってどこ中?」

「あっ、えっと……葉月中学」

「葉月中だと学校から結構近いじゃん!ワタシは皐月中」

「わたくしは師走中だ」


本当にみんなバラバラな中学だなぁと苦笑する。

あと……。

明智さんは弥生中学って言ってたな。

ボクの中学と隣の地区だ。


「し、師走中学ってどこ……?」

「…………」

「にゃははははは!わかる、わかるよハルカ!『師走中どこっ!?』ってなった!あるある」

「『あるある』、じゃない!仕方ないだろ、本当だったら第4ギフトアカデミーが近場なんだからっ!」

「じゃあなんで第5に?」

「わたくしが大きい施設で学びたかったから……」

「ぞくぶつー」

「うるさいなっ!なんなんなんだ君は!?」

「ま、まあまあ……。喧嘩はやめましょうよ……」


美月さんと詠美さんで掛け合いをして、ボクが仲裁に入る流れが既に出来上がっている気がする……。


「でも遠くから通ってるのに寮暮らしではなく賃貸マンション借りてるんでしょ?やばー、お金持ちじゃん。ミツキめっちゃお嬢様じゃん」


うなだれた声の詠美さん。

確かに美月さんは育ちから立ち振舞いからボク達とは住む世界が違う気がする。


「うるさい……。お父様が妹と暮らせって借りちゃったんだから仕方ないだろ」

「お父様!?え?そんな風に呼んでるの?」

「え?なんかおかしいか?尊敬するお父様はお父様だ。だよな、遥香?」

「…………え?」


ボクに振るの?

父親をお父様と呼んだことがないからわからない……。


「こらこら、ハルカを困らせるなミツキ。庶民はお父様じゃなくて、お父さんとかパパって呼ぶのだよ」

「自分を生んでくれた恩人をそんな風にさん付けで呼んだりテキトーにパパって呼ぶ感覚がわからん。なんでだ?」

「素でなんでだ?とか言われても……」

「パパって呼び方はわたくしがNGだ。パパ様なら許してやっても良い」

「何様!?」

「パパ様って面白いね!」


クスクスと笑ってしまう。

真面目そうな美月さんから頭の悪そうな話を語っているのがギャップがあって面白い。


「しかし、なぜこうもこの学校の勉強は難しいんだろう……」

「本当に授業が大変……。ボクも付いていくのが精一杯で予習ができない……」

「ギフト系の仕事に就けると人生勝ち組なんて言われてホイホイ来ちゃったのが悪かったかなー」

「詠美さんは受験組なんですね?」

「ということはハルカもギフト持ちかー。あー、ミツキもハルカもギフト持ちはズルいっすよー」


ズルいと言われてもこんな人様から命を奪うギフトが羨ましいなんてボクは全然思えなかった。

世間から羨ましいと思われる能力では決してない。


「そりゃあ神様の力を勉強するんだ。難しいもんさ」

「私もスタチャみたいにアイドル目指せば良かった」

「わたくしもスターチャイルド好きだぞ」

「めっちゃ意外!」

「ボクもスタチャ好きです。同じですね」


それに頷いてくる美月さん。


「あぁ。わたくしも彼女に憧れるな」

「そんな生真面目お嬢様がどうやればスタチャファンになるの……?」

「ほら、スタチャのスターって星だろ?わたくしの名前に月があるから親近感があるんだ」

「名前が好きなの?」

「名前から好きになっただけで、スタチャの曲も好きだぞ」

「じゃあ美月さんとスタチャ縛りカラオケですね!」

「いや私も連れてけよ」


友達のいる学校生活は本当に楽しく感じた。

それはボクが強く望んだ日常であった。

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