15、宮村永遠は欲しい
「秀頼さん、寄り道していきましょ!」
「良いよ、行こう行こう!」
永遠ちゃんがはしゃいで先導していく。
行き先は永遠ちゃんに任せておく。
「そういえばさっきなんだけど」
「どうしましたか?」
「隣のクラスの美月って人に会ってさ。エイエンちゃんと同じ学校って知って驚いたよ」
「美月と会ったんですね。家からギフトアカデミーまで遠いから賃貸マンション借りて通っているんですよ。高校で再会するなんて思わなかったなー」
永遠は友達の話を振られて楽しそうに笑っていた。
「……でも」
「でも?」
「女の子と一緒にいて、他の女の話を振るのはNGです。メッ、ですよ」
「う……うん」
俺の唇に人差し指を置いて微笑む永遠ちゃんにドキっとする。
ちょっと永遠ちゃんの目が大人びて、M心がくすぐられる。
『メッ、ですよ』が和の真似?と聞きたかったが、ぐっと飲み込む。
「ふふっ、秀頼さんって表情が色々変わるので可愛いですね」
「ぅえ!?」
「表情豊かでとても見ていて楽しいです」
「か、からかわないでよ……」
永遠ちゃんがクスクスと笑う。
あぁ、完全に永遠ちゃんのペースになっていた。
「…………欲しいなぁ」
「ん?何が?」
「……彼氏、ですかね」
「えぇ!?」
永遠ちゃんの口から彼氏という単語が出る。
うわっ、ついにタケルを本格的に狙いだす……?
「秀頼さんが欲しいって言ったらどうしますか?」
「え?」
耳元で囁くような小さい声で呟く。
永遠ちゃんの吐息が当たり、くすぐったい。
「ま、ま、ま、まさか……?冗談だよね?」
「ふふっ、さて?どうでしょうか?……私に告白すれば答えがわかりますよ?」
「…………んん」
え?
どんな状況?
告白待ち?
永遠ちゃんが、俺に?
どうなってる?どうなってる?
「か、からかってる……?」
「はい、からかってますよー」
「は、はは……」
「でも年頃の男女ですし、意識した方が良いですよ」
永遠ちゃんが微笑む。
俺の憧れた永遠ちゃんが目の前で笑っている。
「そうだね……、意識しちゃうかも……」
「……今日はこのくらいかな」
「ん?なんか言った?」
「いえいえ、これから図書館で勉強しましょうよ」
「うん。わかった」
永遠ちゃんってもしかしてタケルじゃなくて俺が好き?
なんとなくだが今日、この瞬間だけはそう思った。
わかんない。
女の子の気持ちがわからない……。
俺、来栖さんしか恋愛感情を抱いたことないからわかんない……。
なんで絵美も永遠ちゃんもちょっとずつ成長して乙女に変わっていく姿で俺をからかうんだ……。
ヤバイ、ヤバイ、誰かこの気持ちを教えてくれっ!
図書館に着いても永遠ちゃんとの距離感がわからない。
永遠ちゃんが座った席から1つ開けて座る。
「もう、なんで隣座らないんですか?」
「……」
意識してるからです。
30年生きて、久しぶりに女を意識してるからです。
「照れてるんですよね?」
「ち、ちがっ……」
「照れてるんですよね?」
「い、いや?て、照れてねーよ?」
「照れてるんですよね?」
「なにこれ?ループしてるんだけど……」
「照れてるんですよね?」
「て、……照れてます」
「可愛い」
「……」
妖艶に笑う永遠ちゃんに心がノックアウトした。
絶対Sだこの子……。
童貞を勘違いされるドS少女だ……。
俺はとんでもないラスボスを育ててしまったのかもしれない……。
「ほらほら秀頼さん、ノートと筆記用具出してください。勉強の時間です」
「あ、あぁ……」
「古文を勉強しましょう。今日は源氏物語の勉強です」
「…………」
「この源氏物語の主人公凄いですよね」
「…………」
「凄いですよね!」
「…………」
俺はずっと永遠ちゃんにからかわれ続ける人生になりそうな予感がずっと離れなかった……。
永遠イチャイチャ回。
恋愛面のラスボス降臨である。
必殺技:ループ質問。