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6、十文字タケルは応援する

タケルは喫茶店に入り独りで呟きながら移動する。


「はー、なるほどなー」

「十文字先輩こんにちは」

「おう」


星子ちゃんへ優しい目を向ける。

あたしには全然向けてくれない優しい目だ。


「ヨルが秀頼狙いねぇ……。マスター、いつもの」

「はいはい」

「というかこの店の客、みんな秀頼の関係者か」


咲夜の呟きにダメージを受ける。

軽はずみに売り言葉に買い言葉で策を巡らせた結果、あたしまで明智の関係者みたいになってしまった……。

助けて、誰かあたしを助けてくれ……。


「でもヨルさ、秀頼にスゲー酷いこと言ってたよな」

「うっ……」


明智大好きタケルがまだ根に持っている。

タケルが明智大好きなのは知ってたけど、ここまでとは想像できなかった。

理沙に対する気持ちは予想の範囲内だったが、明智に対する気持ちは予想の範囲を優に越えていた。

明智本人は全然気にして無さそうなぶん、タケルがイライラを肩代わりしている気がする……。


「修羅場だな」

「修羅場ですね」

「君ら2人のせいなんだが?」


咲夜と永遠が第三者を装っているが、この2人に嵌められたんだが……。

あー、タケル狙いの2人にしてやられた……。


「もしかして好きな子にはいじめたくなるみたいなタイプ?」

「た、タケル……。あ、あのですね……」

「わかった!受け止めてやる!」

「……え?何を……?」


タケルが『わかった、わかった!』と言いたげな諦めが付いた顔だ。

本当に諦めが付いたんだろうな。


「ヨルをずっと敵対した目で見るの疲れるし……」

「タケル……、許してくれるのか……?」

「しゃーねぇ……」


やっとタケルがあたしに敵意剥き出しの目で見なくて、普通に接してくれんだ!

やった!

凄く長かった……!


「その変わり、秀頼に嘘をでっち上げて酷いこと言うのはダメだ」

「お、おう……」

「自分の言葉で秀頼にアプローチしろよっ!まあ、ガンバ」

「……」


違う……。

なんであたしが明智狙いみたいな目で見られることに……。


「うん、ヨル先輩。ガンバっす」


星子ちゃんが同情する声でこっちを見ないで発言する。

その態度がすべてを物語っている。


「どうする?ヨルまで増えるとは……」

「こんなことになるなんて……」

「予想していたことじゃないか」

「そうですけどぉ!秀頼さーん!」


『こんなことになるなんて……』と言いたいのはあたしだ……。

なんであたしが明智(ゴミクズ)狙いなんていう屈辱的なレッテルを貼られることに……。






『はぁ…………』





この喫茶店にいた6人全員同時に発したため息が、店中に響いた。


「良いか、ヨル?秀頼はあんまり何も言わねーけど、心で傷付いて、自分を追い詰めるタイプだからな。あんまり酷いこと言って困らせるなよ!」

「……はい」

「でもあいつは良い奴だから。俺がスタチャの缶バッジ落とした時3時間も探しまわってくれるような奴だから」

「……はい」

「しかも俺も諦めてたのにきちんと見付けてくるんだぜ。あいつより良い奴知らねーよ」

「……はい」


星子が『忙しいので帰ります』と先に帰って行き、星子が座っていた席にタケルが座り出すと明智への惚気が始まった。


あたしの持っている明智像からはかけ離れた体験談まで語って聞かせていた。

永遠と咲夜も知らない話らしく「えー」とか「優しい!」とか言って盛り上がっていた。


「…………なんだこの空間?」


マスターがカップを洗いながら呟いていた。

すべてを代弁してくれた気がする。

永遠が来る直前くらいは良い雰囲気の店だったんだけどな……。


でも、コーヒーは美味しかったのでたまに通うくらいにしようと誓うのであった……。



おのれ、明智め……!

この屈辱は決して忘れない……。


いつかお前の化けの皮を剥がし、タケルに幻滅させてやるからなっ!

















「ああっ!クソッ!絶対明智の目玉なんか抉り取ってやるっ!クソッ!こんにゃろめっ!」


あたしが暮らすギフトアカデミーの寮に戻るために帰路を目指していると見覚えのある集団が視界に入る。


「やっぱりドーナツはチョコですよ!チョコレートです!」

「でも甘いし、太っちゃう。オールドファッションですよ」

「私は断然パフェ派ね」

「姉者に同感です!」

「ドーナツの話だって言っておろうに。我もチョコ派だ」


クラスメートである絵美、理沙、円、ゆりかの4人と見知らぬ女の子が1人が並んで歩いている。

ゆりかのことはあたしと同じで明智をマークしてるということくらいしか知らないが、あの3人はタケルを下心で見ている連中である。

もう1人は円と似ているから彼女の妹のような気がする。

彼女らと対面すると絵美から「こんにちは」と挨拶され会釈する。


「あっ!待ってヨルさん!」

「ん?」


理沙から制止されて立ち止まると絵美らから深刻そうな顔で告げられる。



「ヨルが秀頼君狙いと聞きましたよ」

「…………」


あたしの中の時間が止まった。


「兄さんからいっぱい叱られたみたいですね」

「まぁ、素直じゃないとモテないわよ」

「あぁ、ヨル先輩というのはあなただったんですね」

「同じ師匠のストーカー仲間。我はヨルの気持ちにはとっくに気付いていた。師匠が好きなんだろ?」

「…………」


絶対明智を殺してやると誓った1日であった。


現代社会の拡散力の凄さを痛感した日でもあった……。

もはや秀頼君不在でもガンガン話が回る様になってしまいました……。

しれっと混ざっているゆりかですが、コミュ力はかなり高いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゆりかがもうストーカー公言してる。
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