5、宮村永遠は逃がさない
「あ、あたしは恋愛なんか別に……し、してねーし」
よし、あたしは言い切った。
このまま流れるように席を立つ。
「いや、してますよね?」
「……」
永遠があたしの手を握ってくる。
こ、こわっ……。
目が『逃がさない』と語っている。
「ヨルちゃんは、恋愛を、してますよね?」
「してねーし!」
「ヨルちゃんは、恋愛を、してますよね?」
「し、……てません」
「ヨルちゃんは、恋愛を、してますよね?」
「なにこれ!?RPGかなんかかよ!ループしてるって!」
「ヨル・ヒルは恋愛をしてます」
「ちょ、星子!マスター!助けて!」
永遠の勢いに圧倒される。
腕を払うのは簡単だけど、永遠は一般人だし、目撃者がいる中で乱暴な真似はできない。
というかあたしが本気出したら洒落にならないので周りにヘルプを出す。
「最近の100円ショップってワイヤレスイヤホン売ってるんですよ」
「進化って凄いね。嫌いな人の誕生日プレゼントを贈る時に箱だけそれっぽくすれば節約できるね」
「マスターったら悪魔ぁ」
「助ける気ゼロかっ!?」
永遠とあたしの2人だけ会話をしていたら、知らぬ間に100円ショップ雑談をしていた2人は助けてくれる気配がなかった。
「ヨルちゃんは、恋愛を、してますよね?」
「してる!してます!許してぇぇぇ!」
「わぁ、恋愛してるんですね!誰ですか、誰ですか!?」
「無敵かこいつ……」
永遠のやり口が汚い。
美人に汚いというのはイメージが悪いが汚い。
「ヨル先輩恋愛してるんですね」
「どんなイケメン?」
「ちょ、なんだお前ら!?100均の話してろよ!」
急に混ざってくる2人をあしらうがニヤニヤ笑っている。
完全に嵌められた……。
「む……、今日は賑やかだな」
「おっ、咲夜。秀頼君とスマブラは終わったのかい?」
「全敗した。あいつのロイ強すぎる」
そう言って咲夜が永遠の隣に座る。
なんでみんなあたしに近い席ばかりに座るんだよ。
「永遠、こんちは」
「こんにちは咲夜。実はヨルちゃん恋愛してるんだって!聞きたくない?」
「ヨル、相談に乗る」
「なんなんだこの店!?」
こんなことをしている場合じゃないのに。
本当にあたしを帰らせて!
「ヨルちゃんの話、十文字君から聞いてます」
「タケル君?」
「ヨルはタケルに嫌われてる」
「ちょ、本人前に言うなや……」
マスターと星子も知り合いなのかタケルの話題に興味津々であった。
「タケルがあいつ被害妄想がヤバいって秀頼に言ってたのをウチ聞いた」
「それから周りに拡散されちゃって……」
「拡散力が強すぎる……」
「でも私、ヨルちゃんが十文字君を見てる目でわかるんです!」
「え?」
永遠が真っ直ぐな目であたしを見てくる。
さすが、タケルからも高い評価の彼女だ。
察しが良すぎる……。
「秀頼さんと仲良くしている十文字君、2人の姿を見てニヤニヤしてるんです!」
「ちょ、言うなって!」
周りからそんな目で見られてたのか……。
うわ、はずいな……。
ちがっ、別にタケルが好きとか嫌いとかそういうのじゃないんですよ……。
あー、なんて言えば……。
「それにこないだまで秀頼に付きまとってた。ヨルは秀頼狙いだ」
「…………はぇ?」
「そうなんです!ヨルちゃん、秀頼さん狙いなんです!秀頼さんと仲が良い十文字君を羨ましい目で見てますよね!?」
「お兄ちゃんを!?」
「あの男はまた……」
なんであたしがあんなゴミクズを好きみたいな流れに……?
はっ、そうか!
永遠も、咲夜もタケル狙い。
ここでライバルになりそうなあたしを蹴落としてタケルの倍率を下げる狙いがあるわけか。
読めたぞ、ここは肯定して不本意ではあるが明智狙いという不名誉を着ることにする。
そうすることでノーマークにタケルに近寄れるわけだ。
明智好きはフェイクであくまでタケル狙いだ。
あたし天才じゃん!
「そ、そうだよ!あたしは明智狙いだ!」
どうだ?
あたしはタケルのことなんか興味ありません?
これで良いだろ?
永遠たちが聞き出したかった情報を渡したぜ。
「こんちゃーす」
「あっ、タケル君いらっしゃい」
「え……?」
喫茶店の入り口から聞こえてはいけない声がした。
いやいや、ないない。
タケルがこんな客のいない喫茶店に来るわけねーだろ。
けらけらけら。
「えっ!?ヨル先輩、ガチでお兄ちゃんが好きなんですか!?」
「は?」
星子ちゃんの驚きにタケルの声がする。
あれ、空耳じゃねぇ……。
あたしがタケルの声を聞き間違うわけねぇ……。
「…………」
あたしが振り返るとタケルがあたしを見ていた。
もうやだ、この空間……。
スマブラ余談
咲夜はマルスとかルキナとか使います。
タケルがリンクorガノンおじさん、円はピカチュウ。
ゆりかはFF7のユフィをプレイアブルの要請を出しつつ仕方なく忍っぽいゲッコウガを選びます。
達裄が秀頼と同じでロイ使い。
和はホイミスライムとメノクラゲのプレイアブルを希望しつつ、インクリングとパックンフラワー使います。
星子もインクリングを使います。
マスターは初代キャラしか使わないのでネスとかカービィを使います。
山本君はクラウドとかジョーカーとか若者から見た人気キャラをバンバン使います。
ヨルは「粗挽き肉団子にしてやるぜ!」とか言いながら近接攻撃が得意なリトルマックとかガノンおじさんとか使います。
ゲームしない組
絵美は「秀頼君と同じが良い!」と言ってロイを使い、
理沙は『見た目が強そう』とか言ってリドリーとかセフィロスを使い、
永遠は「パンダ無いんですか!?」とショックを受けつつホムラ&ヒカリとかゼルダなどの女キャラを選択します(秀頼が鉄拳のパンダをプレイアブル化するように要請を出します)。