15、上松ゆりかの末路
清らかな心を持って読んでください。
「あんたさぁ、顔美人なのにもったいないねぇ……。復讐なんてやめてそっち系の店行けばご指名取り放題よ?」
「クズがっ……!」
「ははっ、先に襲っておいて負けたら非難とか都合の良い女だなぁ。おらぁっ!」
「がっ!?」
女と世間話をしながら、身体を縄でぐるぐる巻きに固定した。
縛り終わった後は床に顔を叩き付ける。
「ほら顔上げろよ」
手を伸ばし、首を持ち上げ顔を無理矢理上げさせる。
涙目になって俺を見ている。
「ゆりかちゃんの事情をよーく理解したよ。大変だったねぇ、唯一の家族だった弟君殺されて、復讐ねぇ。うんうんドラマみたいな話も近くにもあるもんなんだなぁ」
「……バカに、しやがって!」
「バカにしてるからね。んで、弟君の敵討ちは終わったんでしょ?じゃあなんで俺に攻撃するのさ?怖いなぁ、夜道歩けねぇよ」
「ギフト使いの、クズがっ!」
「ははっ、ギフト使って敵討ちしたんだろ?俺と同類じゃねーか。ウケるー、人殺した時点でゴミクズよ?俺と同じゴミクズ仲間だ」
ゆりかちゃんのお話が面白くて笑いが止まらなかった。
最近ギフト狩りだかが流行ってるらしいが、敵討ちを人殺しの理由に使っているところが面白くて仕方ない。
俺は刹那的な快楽を満たすために人を殺すけど、俺に言わせたら同類も良いところなんだよなぁ。
「大体家族がなんだってんだよ?なぁ、死んだなら喜ぶべきじゃねーの?」
「は……?」
「家族とか邪魔じゃん。うぜーし、無能だし、バカだし、足引っ張るし」
「な、何を言っているんだ……?家族は大事だろ……?」
「お前頭狂ってんじゃねーの」
タケルも妹が大事だの、鳥籠女も家族が大事だの全然理解できねーや。
自分から家族をどうにかして欲しいって言うからどうにかしてやったのにさぁ……。
あと喫茶店の親父も娘がどうこう言ってたなぁ……。
なんなんああいうの?
冷めるわぁ……。
気持ち悪くて吐き気がする。
『妹ができたらわかる!』とかあいつはよく力説してるけど、生理的に無理だわ。
明智の血を引いてるというだけできっしょい。
「家族ってあれだろ?教育とか言って顔面蹴り上げたりするやつ。ほら」
「がっ……!?」
「ははっ、懐かしいな。あー、楽しいよなこういうの」
ゆりかちゃんの頬目掛けて右足をサッカーボールを蹴る感覚で振り下ろす。
唾液を撒き散らしながら涙目で許しを請う様に俺を見てくる。
叔父にされたことをする側になるとめっちゃ楽しいなこういうの。
タバコとか興味ないけど、依存する気持ちは理解できるな。
男に女の格好させて、キメェことさせるクソ叔父よりはよっぽど俺の方がまともで優しいとは思うけどね。
「お前……っ!?家族はどうした……?」
「殺しちゃいましたー」
「は……?な、なんで……?」
「弟殺害した犯人殺したゴミクズゆりかちゃんと同じよ。気にくわなくて殺したのよ。動機はまったく同じってわけ。俺と君はゴミクズ仲間よ」
結構ゴミクズゆりかちゃんのことは嫌いじゃないんだよね。
なんか話していて楽しいし、同族で面白いし。
顔をめちゃくちゃにしてやりたい。
「じゃあ、ゴミクズゆりかちゃんにはまた命令しちゃおっかなー。【口を大きく開けましょう】」
「っ!?……あ、あぁ」
「おー、良い顔良い顔。絵美、例のもの」
絵美に命令すると部屋から出て行く。
ゆりかちゃんは恐怖に怯えながら、絵美が歩いていくのを見送る。
「んな怖い顔すんなよ。歯抜くとか拷問みてーなはしないからさ」
「秀頼君、準備しました」
「サンキュー」
絵美は大きいバケツをゆりかちゃんの目の前に置く。
そのバケツの中身も見えないのに、彼女はビクビクとしている。
「俺キノコ好きでさぁ。ゆりかちゃんに俺の大好きなキノコをご馳走するよ」
「……」
ずっと口を開けたままの彼女の目に一筋の涙が零れる。
同情しちゃいそうだ、早く終わらせよう。
「このキノコは生で喰えるんだってよ。おっきいだろ?ほら、口に入れてやる」
「おごっ!?」
「どう?生で口にしたのは初めてだった?おー、口の周りが唾液だらけだ」
「ぉえ……。うぇ…………」
「おいおい、俺の部屋をゴミクズゆりかちゃんの唾液まみれにすんなよ。部屋掃除するの絵美なんだぞ」
バケツの中身を見ずに手を突っ込み、また違うキノコを取り出す。
「次は白いキノコだ、苦い味が通にはウマイんだってよ!ほらキノコの液体も白いだろ、全部が白いんだとよ。ほら口に入れてやるっ!」
「っ!?」
「吐き出すなよ。ほらほら、どんどんキノコを飲み込め。俺の大好物のキノコを最後の晩餐で振る舞ってんだぜ?いやー、俺って自分を殺そうとしてきた女に対しても優しいねぇ。なぁ絵美」
「……とても優しいです」
絵美は興味もなさそうに部屋から窓を見ていた。
基本的に絵美は俺が女と一緒にいると、あんまり視界に入れないようにするできた女だ。
「ほら、このキノコはとっておきでデカイだろ。あったかいと火傷しそうになるんだとよ。ほら、口に入れろっ!」
「ぅぐ……」
既に10個以上、彼女の口にキノコを放り込んだ。
ゆりかちゃんの口に最後のキノコをぶちこむ。
顔は既に唾液と涙と鼻水が混ざり合いなんの液体かわからない。
「どう?美味しかった?」
「…………ぬるぬる、……します」
「味の感想聞いてんだけど?【美味しかったよな?】」
「お、……おいしかったです」
「うーん、良い子だねぇ。じゃあ最後の晩餐終了だ」
パチパチとわざとらしい拍手をゆりかちゃんに聞かせるような音を立てる。
「じゃあ、ゆりかちゃんに最高の救いをあげようか!弟君の元に連れてってやるよ」
「いやっ……、ごめっ……なさい……。ゆるして……ください……」
「人を殺そうとしておいて都合の良いこと言うなよ。もしかしたら今頃、俺が死んでたかもしれねーんだよ。それが君の運命だ」
ゆりかちゃんを拘束する縄を、俺が常備しているナイフで切り刻み引きちぎっていく。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「デデデデーン、【川で全裸になって飛び込んで死ね。醜い遺体を晒してお前は死ぬんだ】」
「……いや、いやっ!いや!!」
悲鳴を上げながらも彼女の足は止まらない。
一歩一歩死に近付く。
「君も『アンチギフト』を持ってたらねぇ……。あ……家から出ちゃったか……」
気付けば上松ゆりかの姿は家から消えていた。
「まぁ、いっか」
いつもと同じ絵美と2人だけになった部屋で呟いていた……。
つい今まで、クラスメートにキノコを振る舞っていたのが嘘みたいだった。
「クラスの上松さん、今日全裸の遺体で発見されたんだって……」
「マジか!クラス決まった次の日にクラスメートが亡くなるのは怖いなぁ……」
「しかも服は近くに脱ぎ捨てられてたって話よ?他殺?それとも自殺かしら……」
「同い年なのにどんな人生送ったんだろうな……。可哀想に」
理沙ちゃんとタケルが呑気に花の添えられた机を見て雑談をしている。
「秀頼、お前も悪さをほどほどにしろよ」
「あー、うるせーよ。俺が死ぬわけねーだろ」
「心配してんだよ、お前の知り合い変なのばっかりなんだもん」
「おー、ありがとうな親友」
まぁ、俺が加害者ですけど。
「兄さんも明智君も変な人から襲われたら逃げてくださいね」
「いやいや、俺と秀頼の前に敵が現れたら2人で返り討ちよ」
「わかってんじゃん!さっすが親友!俺たち本当に相性抜群だよなー」
数時間後には、いつもと同じ日常が流れていた。
ーーーーー
「なんだこれ……」
朝起きると、寝起きは最悪では済まされない夢であった。
全く明かされなかった上松というモブの死亡の裏側で、酷い犯行が行われていたみたいだ。
そもそも上松死亡は、本当に理沙から1回触れられる時しか話題に上がらない。
秀頼が殺害していたキャラとすら初知りである。
まさか、秀頼のキノコガチ勢設定がこんな形で活かされていたとは、原作プレイヤーでもこんなん読み取れるわけがなかった。
俺がキノコを食べれなくなりそうだ……。
「はぁ……、なんで大好きなゲームの世界に入ってまでこんな苦しい思いをしなきゃなんねーんだよ……」
最低最悪な高校生活のプロローグである。
「…………俺、今日以降生き残れるの?」
不安な出会いばかりで、既に心が挫折しそうであった……。
いや、それよりCEROに考慮し過ぎで草。
なぁにこれぇ。
清らかな心を持って読んでください。
第111部分 番外編、十文字理沙好感度アップシナリオ
こちらの話にて、秀頼はキノコガチ勢ということについて描写がされてます。
「こないだ女にたくさんあげちゃってさ、キノコないんだ」
秀頼のこの発言は、ゆりかにキノコをたくさん与えたからです。
秀頼が口にした「デデデデーン」は、ベートーベンの運命より。
秀頼でも秀頼君でも、ユニークさは忘れません。
基本的に2人の思考は似てます。
『鳥籠の少女』シナリオの永遠と秀頼の出会いを見比べたらわかります。
ただベクトルが刹那的快楽や人の不幸に行くのが秀頼、
逆にみんなと仲良くしたい、相手を依存させることにベクトルが行ってるのが秀頼君。
秀頼が口にした
『わかってんじゃん!さっすが親友!俺たち本当に相性抜群だよなー』
というセリフは、
第1章 覚醒編
第7部分 登場人物紹介1
にて明智秀頼の公式サイトに掲載されていたセリフ。
初期あるあるの設定がフワッフワだった頃の名残のセリフ。
使う機会がなかったらしれっと変更する予定でしたが、使用できて良かったです。
設定が定まってなかった初期に掲載した登場人物紹介は結構キャラクターがブレブレです。
登場人物紹介2のタケルのセリフ
『俺は、ただ突き進むだけさ』
これとか使い道がまったくわからない……。
その内描写するかもしれません。
最後になります。
清らかな心を持って読んでください。