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7、細川星子はトドメを刺す

原作の世界に追い付いたのに喜べないことが続く。

どうやっても世界は俺を殺したいらしい。


「明智君」

「は、はい!」


理沙から突然名前を呼ばれて、思考が止まる。


「私、みんながいるなんて聞いてないです!」

「ご、ごめん……。まさかみんなが同時に連絡してくるなんて想定してなくて……」

「わたしが最初に行こうって連絡取り付けたんです」

「確かに絵美が最初に約束したんだけどさ……。それよりみんな一緒の方がタケルを喜べるプレゼントが見付かるかなー、なんて思ってさ。毎年ちゃちいプレゼントしか渡してなかったし、ここらであいつを笑顔にしてやりてーなって」


機嫌が悪い理沙に俺の本心を全部明かした。

ネットで注文するのは絵美から『想い』が伝わらないと説教された。

『想い』を伝える手段になるなら、面倒でも大掛かりにしてやろーじゃんという俺の『想い』もある。


「はぁ……。兄さんを引き合いに出されたら私は何も言えませんよ」


理沙から「仕方ない」と諦めた声がした。

兄貴を喜ばせたい気持ちは同じだからな。


「じゃあとりあえず……、絵美は秀頼さんから離れてね」

「ええぇ!?な、なんでそうなるの!?」

「というか絵美さんばかりズルいです!」

「1番自由にできるだろ!秀頼とくっ付くのはダメだ」


永遠ちゃん、理沙、咲夜から責められている絵美。

『秀頼とくっ付くのはダメ』と直接咲夜の口から出て心が痛い。


「秀頼先輩は簡単に女性に近付いてはいけませんよ!」

「……はい」


和からは遠回りに『お前はヘイト買うんだから女に近付くな』と忠告される。

タケルのプレゼント買いに来て、なんで心で泣かないといけないのだろう……。


「流石、お兄ちゃんはモテますね!」

「ぐはっ!?」

「えぇ!?」


星子からはトドメと言わんばかり、笑顔で皮肉を言われた……。

俺の味方はゼロだった……。

今日は俺に1番優しくしてくれるタケルがいない。


生き残れるのか……?

俺は今日、生きて生還できるのだろうか……。

おばさん、命日なったら本当にごめんなさい……。


「本当にバカね、あんた……」

「……」


なんか姉者こと円が優しく見えるから不思議だ……。

というか、優しく同情するように肩を叩いてくれて優しい。

円に惚れそうになった……。





ーーーーー




昼飯はランチをしている洋食屋で食事をすることになる。

絵美が8人ぶんの電話予約をしたのだが、その店では8人席は存在せずに、4人席を2つに別けて欲しいと店側から提案されたらしい。

「では、秀頼先輩抜きで席決めじゃんけんですね!」と笑顔で発言した和に全員が頷いた。


「…………」


『じゃんけんぽん!』

『あいこでしょ!』

『あいこでしょ!』


俺を抜いてじゃんけんをするってそういうことだよなぁ……。

…………みんな露骨に俺を嫌い過ぎじゃない?

そんなに俺と同じ席が嫌なの……?

仲良かったと思っていたみんなが本気の顔でじゃんけんをしていて女性不信になりそう……。


そのまま、洋食屋へ流れ込む。


「秀頼さんの隣です!ブイッ!」

「は、はは……」

「不本意だが、秀頼の前だ。良しとしよう」

「よ、よろしくねお兄ちゃん」


無理にテンション高く接する永遠。

本人前にして『不本意』と言い切る咲夜。

気まずい声の星子。

クズゲスな悪役親友の俺という4人席になる。

地味に接点が薄そうな3人が揃ったなと心で苦笑する。


絵美、理沙、円、和の席は普通に安定感があるな……。



「それにしても、絵美と秀頼さんって付き合ってないよね?」

「付き合ってないよ、うん。俺フリーだし」

「秀頼はウチに来る。ウチは待ってる」

「なんの話?」


喫茶店に行く用事なんか今はないから洋食屋にいるはずなんだが……。

なんで、今日はみんなバチバチ闘志を燃やすんだろうなー……。


「お兄ちゃんがいない学校生活寂しいですよぉ!まだ何もしてないのにっ!」

「星子……、そう言ってくれるか……?」

「はい!もっと兄妹だけで遊んで欲しいです!」

「私ももっと構って欲しいです秀頼さん!」

「ウチにも優しくしろ秀頼」

「わ、わかったから……、ゆ、許してくれ……」


最近はやたら予定が重なることが多くて、スケジュール確認が追い付かない時がある。

特に春休みに入り、学校がない彼女らはラインや通話をよくしてくる様になった。


スマブラやギャルゲーをする時間がドンドン無くなっている。

師匠である達裄さんは『元気で良いじゃないか』と鼻で笑っていたが、楽しんでいるようにしか見えない。


「私もそろそろ彼氏欲しいです!強くて優しくて私の家族関係とかに大きく干渉してくるような素敵な彼氏が欲しいな」


永遠ちゃんが俺の左腕組んでそんな発言をする。


「今日の秀頼さん香水付けてますね。私、この匂い好きですよ」

「あ、ありがとう」


くっついてる永遠ちゃんのシャンプーの匂いの方が強いんだよ。

え?

誘惑されてるんじゃないか勘違いしそう……。


「マスターとウチのコーヒーの味の違いがわかる彼氏が欲しいところだ。それでいて、マスターとウチともよく会話を合わせられる男が良いな」


咲夜がテーブルに置いていた右手を握ってくる。


「秀頼の手、冷たくて気持ち良いな」

「っ!?」


な、なんで俺は咲夜にこんなドキドキしてるの?

永遠ちゃんの匂い発言とかも男心をくすぐる。


何!?

何が起きたの!?

タケル誘惑への練習台なの!?


にしても、ピンポイントで俺を褒める発言とか多くて心臓がバクバクだ。

絵美から見られたら『にやにや』言われてしまうよ!


「お兄ちゃんはモテモテですね……」

「……」


星子が呆れたような声を出している。

兄貴として情けない醜態ばかり晒すので、だいぶ嫌われている気がする。

実際、じゃんけんされたら傷付く案件過ぎる……。

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