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2、佐々木絵美は買い物に行きたい

俺の妹である細川星子の正体・スターチャイルドと知ってから約2年弱。

今日は3月31日、中学生最後の日だ。


高校入学まであと数日。

残り少ない春休みを満喫していた。


高校入学祝いだとおばさんからスマホを買ってもらったが、SNSよりもゲームの方がしょうに合っていた。


「秀頼くーん!遊びにきたよっ!」

「うわー、何このドエロいヒロイン?胸パツンパツンで、腋の書き込みがエグいな。誰だこの絵師?見覚えがねーぞ?」


本物の鬼畜クズゲス悪魔・明智秀頼が俺の中にいると本人から夢で告げられた数時間後には、そんなのどうでもよくなりギャルゲーで遊んでいた。

どうせすぐに出るわけじゃないだろうし、しばらく放置で良いでしょ。


「しかもヌルッとアニメーションで動いたぞ……。な、なんだこの神ゲーは……?こんなゲームあるならリアル恋愛しなくても良くないか……?」


新しい時代の幕開けに戦々恐々としていた。


「秀頼君っ!」

「うわっ、絵美!?いつの間に!?」

「さっきからいたよ!またギャルゲーしてっ!リアル恋愛はしなさい!」

「じょ、冗談じゃないっすか……、は、ははっ……」


またおばさんが俺の許可なく絵美を部屋にあげた……。

もう何を言ってもおばさんは『わかったわ、次からそうする』と言っては黙って部屋にあげる。

もう信用してない。


用事があるらしい絵美に向かい合うためにゲームをスリープモードにする。


「り、リアル恋愛に困ってるなら……、相談に乗ってあげなくもないよ?つ、付き合う相手がいないなら……つ、つ、つ、付き合っても良いし」

「猫たまさんっていう絵師か。あとでチェックだな。代表作なんだろ?」

「秀頼君っ!」

「う、うわっ!?飛び出る、目が、驚かすなよ、急に」

「文法が滅茶苦茶じゃないですか……」


絵美の叱りをする大声には俺もビクッとする。

まったく、ゆっくりギャルゲーの絵師すら調べられないのか。

猫たまさんという絵師は後でまた調べよう。


「早いもので明日には高校生になりますね」

「そうだな」


明日から学校に通うわけではないが、新学期のスタートで4月からは高校生扱いされる日。


「わたしと秀頼君も出会って10年、色々ありましたねー」

「色々あったなー……」


絵美と出会った公園を思い出す。

確かに4歳か5歳くらいだったから10年経つのか……。


絵美とはたくさんの思い出がある。


はじめてギャルゲーを披露して捨てられそうになったこと。

ギャルゲーの主人公とヒロインのイチャイチャシーンを尊い目で見ていたら乱入されたこと。

ギャルゲーのヒロインを真面目に30分語ったらおばさんを呼ばれそうになったこと。

男の娘のギャルゲーに萌えていたら部屋に乱入されたこと。

ギャルゲーの整理をしていたら『捨てた方が早いよ』とアドバイスされたこと。

ギャルゲーをしながらズボンを脱ごうとしたら部屋に乱入されたこと。


本当に10年間、色々あった……。




…………パッと浮かんだのがギャルゲーの記憶しかなかった気がする。




よく思いだすとブランコ乗っただけで『たのしー』って絵美がはしゃいでた記憶とかあるよ。

たまたまギャルゲーの記憶しか浮かばなかっただけだ。


ギャルゲー=絵美というくらいに、ギャルゲーハプニングばかりなのだ。


「それでですよ秀頼君」

「うん」

「4月4日は十文字君の誕生日ですが、プレゼントとか用意してますか?」

「誕プレな……。こないだ理沙の誕プレ買ったばかりで油断してたからまだ何も準備してねーや」

「やっぱり秀頼君は直前に準備する派ですからね。わたしも()()まだ十文字君のプレゼントを用意してないのですよ」

「なるほど、なるほど」


絵美も直前に準備する派だったか。

仕方ない、タケルの誕プレ買わねーと。


「意図は伝わったぞ」

「わかりましたか!?」

「一緒に探すか?」

「探しましょう!そうしましょう!」


俺は絵美にノートパソコンを差し出す。


「……?なんですかこれ?」

「いや?何が良いかア●ゾンで検索するだろ。今日注文でお急ぎ便ならギリギリ当日に間に合うでしょ。一緒に探そうぜ」

「バカっ!」

「え?」


絵美から突然バカ呼ばわりされて心外だった。


「通販じゃ気持ちが伝わらないでしょ!?きちんと自分の目で見て選ぶのがプレゼントってものでしょ!」

「いや、ア●ゾンも自分でレビューとか見て決めるけど……」

「違うんですよ!気持ちです!『想い』が伝わらないでしょ!?」


『想い』か……。

達裄さんが大事にしている教えだ。

つまり、絵美はそれだけタケルを想っている。

そういうことだよな……。


絵美とタケルが付き合ったら、俺は全力で応援するし、笑顔で見送る。



……だけど、それは悲しいなって最近は思う。


なんか考えると胸に穴でも開くような、締め付けられた違和感が出る。


この感情の正体は考えるまでもない。



『寂しさ』だよな。

絵美が家に乱入するとプライベートがなくなるなど色々ふざけてはいるが、それがなくなると寂しいよな。


好きなゲームシリーズが完結した、1話から応援していたラブコメマンガが打ち切りになった。

そんな心境。

『寂しい』は辛いよな……。


明智秀頼に生まれ変わり両親、来栖さんと会えなくて寂しい。

それと同じ心境だ。


「仕方ない、なら街に買い物に行くしかないな。絵美も決めてないということだし一緒に来る?」

「はい!行きましょう!今外に行けばお昼ですし、ついでにランチにしましょう!」

「そうしよう。なんかうまいの食べ行こうぜ」

「はい!2人きりでなんて……、デ、デ、デートみたいですね」

「あっ、ちょっと待って。電話きた」

「は?」


うまいの食べようと提案した瞬間、買ってもらったばかりのスマホが鳴り出した。

名前は『十文字理沙』である。

画面をタップして通話する。


「もしもし?」

『もしもし……あっ、こんにちはです明智君』

「おう、どうしたの理沙?」

『じ、実はですね……、近々兄さんの誕生日があるじゃないですか』

「おー、タイムリー」

「い……、嫌な予感。秀頼君の口からタイムリーって出た……」


ちょうど今、絵美とその話題で盛り上がっていたところである。

どうしたんだろ?


『い、一緒に兄さんの誕生日プレゼント探しに付き合ってくれませんか!?』

「良いよ、ちょうど今から行くところだから。昼も一緒で良いよね。駅にお昼集合で」

『わかりました!準備します!』

「ふーっ、まぁ理沙も兄貴の誕プレ買うよな」


通話が終わり、スマホを置く。

本当に良いタイミングだったぜ。


「秀頼君……」

「絵美?どうしたの?なんか不機嫌?」


電話する前までは凄い嬉しそうで、テンション高かったのに、急に負のオーラが見えるほどに不機嫌になっている。


……なんか電話している最中になんかあったのかな?

絵美さんの感情が来栖さんと同じなのに、出した結論が……。

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