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19話 情報屋は信用商売















『今日は関東全域にかけて広い雨雲が発生し、所によっては落雷があるでしょう~~』

 

 帰宅から一夜明けた翌朝、誰もいないリビングで陽一は一人朝食を取っていた。

 昨日は久しぶりに休みが取れて 息子との休日を存分に満喫した和利であったが、本来の予定とは違う急なことだったのでその分の仕事が溜まっているのか 今朝は少し慌て気味に家を出ていった。


「ふわぁ……」


 眠たげにあくびをしつつ、陽一は自分で作った焼き鮭を口に運ぶ。

 足にギプスを着けたまま料理をするのは危ないかとも思ったのだが、試しに松葉杖なしの片足立ち状態で動いてみると不安定さを微塵も感じなかったのだ。

 元々バランス感覚は悪い方ではない、しかし何十分も片足立ちをして少しも疲れないほど足を鍛えてもいない。

 病院での事があってからの体の変化に若干戸惑いつつも、別に悪いことでもないので陽一は好意的に受け入れていた。


 朝食を食べ終え 音楽を聴きながら皿洗いや洗濯物を畳んだりなどの家事をこなしていくと、時計はもう八時を回っていた。


「そろそろ出るか」


 玄関で靴を履き、高校に上がった際に入学祝いとして父親に買ってもらった愛用のリュックサックを背負う。

 そして手にはたくさんのゲームが入った袋を持つ。

 お見舞いの品として奏が持ってきてくれた物だ。


(あいつに礼言っとかないとな、これのおかげで陽華とも遊べた……し……)


 と、そこまで考えたところで陽一は自身の重大なミスに気がつく。


「陽華の連絡先聞いてなかった……」


 松葉杖に体重を預けて気だるげに脱力する。

 せっかく自分と趣味の合う可愛い女の子とお近づきになれたのに、連絡先を聞き忘れたというのはかなり痛い。


(病院に戻って聞くか?いやでもそれはな………とりあえず後で考えるか)


 早く学校に行って 信頼出来る親友に相談でもしてみようかと思い直した陽一は玄関のドアを開ける。

 外に出て空を見上げてみれば、昨日とは打って変わって灰色の曇天模様であった。

 遠くの方では 思わずおへそを隠したくなる程の大きな雷鳴も響いている。


「うわ、降ってきそうだな……急ぐか」


 松葉杖を突いたままでは上手く傘が差せないため、雨が降り始める前に登校しようと陽一は早足気味に家を飛び出した。







♨♨♨







 なんとか本格的に降りだす前に登校出来た陽一は 朝のガヤガヤとした喧騒の中、自分の教室である二年三組を目指して歩を進めていた。

 校舎内では生徒達の明るい声と 降りしきる豪雨の雨音が混ざり合って、どこか心地の良い雰囲気が漂っている。

 

(なんかすげー久しぶりに感じる……)


 そんなことを思いつつ教室のドアを開ける。

 すると即座に陽一に気付いた奏がものすごい速さで駆けつけてくる。


「陽一!退院したって本当だったんだね!!」

「おう もう大丈夫らしい、あとこれな 本当助かった」

「あぁ、楽しんでくれたなら持っていった甲斐があったよ」


 ゲームの入った袋をを返却して二人は窓際の陽一の席に向かう。

 窓から見える外の景色は もはや先が確認出来ないほどの雨粒で覆い尽くされており、陽一は間に合ってよかったと内心で安堵した。


「それにしても後遺症とか残らなくてよかったよ」

「そうだな、久々に運が味方についた」

「あははっ、もしかしてこの時の為に溜めてたのかもね」

「今回でプラマイゼロかよ……」


 陽一が最近続いていた不運に思いを馳せていると、奏の顔が色恋に目覚めたばかりの女子中学生のように変化していく。


「そ、れ、でぇ~、陽一はあの女の子とどこまで進んだのかな?」


 どうやら聞きたいのは陽華との関係についてらしい。

 質問の仕方が明らかに色恋沙汰を示唆するようなものだったので、恥ずかしがって否定の言葉が出るかと予想していた奏であったが、その予想とは裏腹に陽一は よく聞いてくれたとばかりに話し始める。


「それがなぁ、結構仲良くなったんだけど連絡先を聞き忘れちゃって……」

「えぇ!何してるのさ!?」

「いや本当にな、あんな良い出会いそうそう無いのにな……」


 陽一は良縁を不意にするかもしれない自分のミスに肩を落とす。

 後日病院を訪ねたら既に陽華は退院しておりもう二度と連絡を取ることすら出来なくなる、そんな悪い可能性ばかりが思い浮かんでしまう。

 

 だが、その想像に待ったを掛ける者が現れる。

 

「果たしてそれはどうかな?」


 突然現れた乱入者を見て奏は目を見開く。


「き、君は……データバンク藤本!?」

「そのリアクション毎回するの?」


 奏の驚いた顔を見てデータバンク藤本はクールに微笑む。


「ふっ、まずは退院おめでとうと言っておくよ、陽一君」

「お、おう ありがとう」


 退院祝いのチロルチョコを陽一に渡したデータバンク藤本に対して、奏はさっそく先ほどの言葉の意図を尋ねる。


「それで、今度はどんな情報を掴んだんだい?データバンク藤本」


 データバンク藤本は一つ頷いて 自身の得た最新の情報を公開する。


「なんと今日、この学年に転校生が来る」


 彼が言うそれは確かに驚くべき情報ではあったが、聞いた二人は首を傾げざるを得ない。


「転校生……って、二年のこんな時期にか?」

「普通は転入するにしても休み明けとかだよね」


 通常、転校にはかなり多くの手続きが必要であり 場合によっては引っ越しの作業などもあるので、長期の休暇の間にそれらをこなして新学期から転入、というパターンが多い。

 しかしそこはデータバンク藤本、ちょっと噂程度に聞いたようなテキトーな情報を流す男ではない。


「ここだけの話なんだが、どうやら最近学校に多額の寄付金が寄せられたらしいんだ」


 陽一は なぜ今このタイミングでその情報を出したのかを考えて、データバンク藤本が言いたがっていることを察する。


「その金で無理を押し通したっていうことか……?」

「関連性はあると思っている」

「そうまでしてこの学校に入りたい理由ってなんなんだろうね」

「そこまでは……だが女子であることと、二年三組になることは分かっている」

「マジか!」


 『女子の転校生』という言葉に心踊らない男などこの世にはほとんどいないだろう。

 ラノベやマンガでは定番の存在であり、それだけで強力なステータスとなる。

 

「転校生かぁ……どんな娘なんだろうな」


 データバンク藤本の情報を聞いた陽一もその例に漏れず、少しだけウキウキしてしまうのであった。











「ていうかお前、職員会議の盗聴とかしてないよな?」

「ふっ……どうだろうね」

「陽一、情報屋に手の内を聞くのはご法度だよ?信用商売なんだから」

「いや商売では……まぁ知らない方が良いこともあるよな」






最近、話を読み返してみたんですが結構容姿の描写してないキャラとかがいたのでここに貼っておきます。(今は本編に書き足されてます)


     髪           容姿

陽一   ダークブラウンの直毛  好きな人は好き

奏    亜麻色のロン毛     良い

茜    桃色のセミロング    可愛い系

陽華   黒髪ロング       すごい


データバンク藤本の容姿って皆さんはどんなイメージなんですかね。

すごく迷いますね……。

近日中には決めます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 茜はヤバいやつではあるけど確かに理由はあったんだなとなんとも言えない気持ちになりました。 あとデータバンク何某はエンジェルビーツのクライスト(竹山くん)を想像してました。
[一言] まだここまでしか進んでないのに読み返してる(自分が何書いたか把握してない)って時点でかなり感想で言われてるラブホの件とか完全に忘れて書いてたとしか思えねえな。ここまでだな
[一言] 何故かわからんけど俺の中ではクリス松村がピッタリハマってる
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