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13話 side 一式陽華

お久しぶりです……。













幼い頃から、私は特別な存在だった。

人よりも頭が良かった、異常なほど足が速かった、怪我の治りが早かった、顔も可愛かった。

そしてなにより、普通の人には見えない物が見えた。


私が始めて他人との差異を感じたのは、身長が今の腰の位置ほどもない時のことだった。


「おとーちゃま!どうしてゆーれいさんとお話しちゃだめなの?」


これは4才の頃の私だ。

まだ難しいことがあまり分からなくて"普通"というものを知らなかった私は、家族で出掛けた先でそこら辺にいる幽霊にまで挨拶をしていた。

幼稚園で挨拶をすることは大切だと教わったばかりだったのだ。


しかしいくら私が幼くて一目見ただけで万人にクリティカルヒットするくらい可愛らしかったとしても、誰もいない空間に向かって元気よく挨拶する幼女の姿は周囲からは若干変な目で見られた。


そこで父は言うのだ


幽霊に向かって話しかけちゃいけないよ、と


確かに幼稚園でもなぜか幽霊の見える友達は居なかったし、必死に伝えようとすると先生は若干青ざめながら「わかったから……ね?」と言うのでなーんかおかしいなぁとは思っていた。


だが小学校に入学する頃にはなんとなくだが理解していた。

私は周りの人達とは明らかに違う。

私の家だけが特別だったのだ。

そしてそこから生まれたのはどうしようもない孤独感だった。


彼ら彼女らは本当に何もかもが私とは違う存在だった。


少し高い所から落ちただけで怪我をする。

体調管理をおろそかにしただけで風邪を引く。

数十メートル走っただけで息を切らす。

たかが骨折を治すのに何ヶ月も掛かる。

もちろん霊感なんてありはしない。


もはや私には、家族以外の人間が同じ生物には思えなかった。


そんな小学校時代を過ごした私だが、中学に上がってからは別の問題が起こった。


「お、お前声かけろよ」

「無理だって、俺らなんか相手にされねぇよ」

「はぁぁぁ……いつ見ても美しいよなぁ……」


中学生といえば男女の違いを意識しだし、色恋ごとに興味を示す時期だ。

恋愛の対象として女子を見るようになった男子中学生達。

そしてそんな彼らの注目の的になったのは私だった。


その頃の私は連日のように人目を浴びていた。

男子からは恋慕や劣情の籠もった視線を、女子からは羨望や嫉妬が混ざった視線を集め続けた。

しかし誰もが遠巻きから眺めてくるだけだった。


良く言えば"高嶺の花"、悪く言えば"ボッチ"。

まるで動物園にいる動物のような気分。

子供の頃から育んできた孤独感はどんどんと大きくなるばかりだった。


だからなのかもしれない。

私は二次元という空想の世界を好んだ。


画面の向こうの住人達はちょっとやそっとのことで死んだりしない。

私のことを認識することもないし、私もそれを気にしなくてよかった。


そんな中で私は"アイドル"という存在に出会った。

頑張る女の子達をこちらで勝手に応援する。

彼女達は私を他のファンと同じように扱ってくれる。

向こうが現実に存在しないのなら勝手に神格化することも出来た。


中でもキバちゃんは私に大きく影響を与えた。

誰かをあんなに好ましく思ったのは初めてだった。

私はもしかすると女の子の方が好きなんじゃないかと思ったほどだ。

好きすぎて思わずフィギュアを目に突っ込んだ時はかなり痛かったけど。


キバちゃんのおかげで心に少し余裕が持てた私は、周囲に対する認識もだんだんと変化していった。

彼ら彼女らはただ弱いのではない。

あんなに弱いのに一生懸命に日々を生きているのだ。


些細なことで死んでしまうけど、毎日笑って、怒って、泣いて、また笑って、いろんなことに悩みながらも必死に生きている。

そう考えたらなんだか優しくなることが出来た。


今回怪我をしたのだってそうだ。

下校中、運悪く鉄骨が落下してきた。

それが私と一緒に下校していた女の子達に当たりそうになった。

だから私は鉄骨を思いきり蹴飛ばした。


私は軽い骨折で済んだが、彼女達に当たればその体は豆腐のように容易くに砕け散っただろう。

やはり私は上に立つ者として、下の者を庇護すべきなのだ。

そう思いを新たにした。


そんな時だった。

陽一と出会ったのは。


初めて見た瞬間は本当に驚いてしまった。

あまりにもキバちゃんに似ていたから。

もちろん性別は違うのだが顔の造形やら話し方やら纏う雰囲気やらが、血が繋がっているのではと思うほど酷似していた。

ストレートな言い方をすると全てがどストライクだった。

少し興奮してしまって変なことも口走ったかもしれない。

今まで生きてきて、人と話すのがこんなにも楽しいと感じたことはなかった。


そしてそれと同時に虚しくなった。


一族の掟として、霊感の無い者との結婚は出来ない。

だから私と陽一が結ばれるようなことは絶対にない。

家族や周りがそれを許さない。


でも私はこの初恋かもしれないと思える感情をもう少しだけ味わっていたかった。

だから無理を言って部屋を同じにしたし、陽一にも積極的に話しかけた。

いつか離れなければならないと分かっていながら。

陽一との仲が深まれば深まるほど、私の心の穴も深くなっていくようだった。


だが神は私を見捨てなかった。


陽一と出会って三日目の朝。

起床したあと、ふと何気なく陽一の方を見た。

そして気がついた。

明らかに陽一の雰囲気が変質している。

これは私や私の家族と同じ性質のものだ。

あり得ない。

こんな事例今までに見たことも聞いたこともない。

しかし直接触れてみて確信した。

事故の衝撃が原因?

そもそも陽一の出生は?

いや、今はまだ知らなくていい。

大事なのは、陽一が私と結婚する上で最低限の条件を満たしたということだ。

将来はどこの馬の骨とも知らない血筋だけの男と結婚させられるものだと思っていたし、私もそれを受け入れているつもりだった。

だけど、ああ、こうして目の前に糸を垂らされたら我慢など出来るはずがない。

心の底から願っていたことが現実になったのだ。

私達は赤い糸で、いや深紅の大縄で結ばれているとしか思えない。


私は決めた。

どんな手段を使ってでも、他の何を犠牲にしてでも

陽一の心を手に入れる。

そうだ、陽一にはこれから上に立つ者としての在り方についても教えないといけないな。

一般人というのは私達から見れば本当に脆く儚い存在なのだから今まで通りの認識ではだめだ。

風が吹いただけで死んでしまう存在なのだと知らなければ。

それから、家族への紹介と……

あと二人の子供の名前も考えないといけないな。

ふふっ、やっと見つけた私の人生の伴侶。















絶対に(のが)しはしない。









陽華は俗に言う支配者系ヒロインというやつですね。

一般人の生態を遥か高みから好奇心で見物してます。


あと感想欄なのですが、実はまだ見れていません。

本当にすみません……。༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽

前触れもなくいきなり失踪とかは嫌なので、一応自分が納得出来る区切りまで書き上げたときに覚悟を決めて見たいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] フィギュアに目突っ込んだのお前だったんかい…w
[一言] 絵文字に癖しかないww
[一言] 何その絵文字キモ…w
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