表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/50

23話:初デート!!!!(前世も含めて)

<お知らせ>

午前のUP分から最後の部分を少し変えました。



 「バラのジャムって珍しいよね。加工してもバラの香りはしてたし美味しかった。俺にはちょっと甘すぎたけど」


 テオフィルスはエマの手を引いて近くの屋台でコーヒーを買い、「飲む?」と差し出した。エマが首を振るとトラベラーリッドに口をつけ、ゆっくり飲み始めた。その間も手は握られたままだ。


 テオといるとやっぱり落ち着く。テオの手、好きだ。


 今朝は久しぶりに1人の登校だった。距離が一気に縮まってまだ1週間もたっていないが、隣にテオフィルスが居ないことがこれほど落ち着かないとは思わなかった。

 気持ちが一気にテオフィルスへと傾れ落ちてゆくのが分かる。

 もう側にいてくれないとしんどい。


 エマが黙り込んでいると、


 「やっぱりコーヒー飲みたかった?」


 テオフィルスは飲みかけのカップを渡した。


 「あ、いやそうじゃなくて。テオのこ……」といいかけてエマはちょっと温くなったコーヒーをぐっと飲み込んだ。

 とっくに確信はしていた。


 ……何となく言えない。ううん、勇気がでない。


 テオフィルスはそんなエマを気にする様子もない。


 「演劇部の公演まで時間あるし、どこかいこうよ。何かしたいことある?」


 「あ、工芸部の体験講座ワークショップあったよね? 螺鈿体験の。あれやってみたい」


 「螺鈿か、いいね」


 プログラムをポケットから取り出しエマの前に広げた。


 「美術棟だね。混む前に行こう」 


 雑踏の中を縫うように二人は美術棟を目指した。

 どうとでもないことを話しながら、笑いあうのはとても楽しかった。

 いつもはきれいな標準語で話すテオフィルスも、こうして二人で話しているときだけはモーベンの訛りが端々に出る。

 学園の誰も知らないんだろうなと思うと「そばかす」のことと合わせて自分だけが特別なのだと思えて嬉しい。

 美術棟のエントランスに付き、エマは不意に気づいた。


 これってデートじゃない???


 前世の高校時代、死ぬほど憧れた文化祭デート。

 同校の彼氏(もしくは偏差値の高い学校とこの彼氏)を連れて文化祭を廻るのが一種のステータスだった。

 誰かしらに片思いはしていたが彼氏に無縁であった前世ゆうなにとって高校の文化祭とは別の意味で地獄であった。

 羨望の眼差しを受けながら彼氏といちゃつくスクールカースト上位陣のあの上から目線は、前世ゆうなを含むフリー女子ズを屈辱まみれにした。ブーイングを飛ばしながら、廊下の隅で臍をかんだものだ。

 前世ではかなえられることがないまま終わってしまったが、現世エマのこのシチュエーションは、


 これって念願の……


 「デートじゃん!」


 思わず口からもれた。


 しまった……!


 心の声が駄々漏れするのは悪い癖だ。こんなときに出るなんて!

 エマはこわごわ隣のテオフィルスを見上げた。焦っているエマとは対照的にテオフィルスは平然としている。


 「俺は最初からそのつもりだけど?」


 事も無げに言う。


 「はい??」


 「聞こえなかった?」と黒い瞳を細めてエマを見ると、テオフィルスは顔を寄せ、


 「エマとデートだと思ってる。今日はエマといたかった。」


 そっとささやいた。

 舞い上がらせるのも程がある。雑踏をいいことに甘すぎる言葉を紡ぐ。


 「そういうの反則……」

 

 エマは美術棟エントランスを彩る組着細工の床を見つめ小さく言った。


 「そう?」


 テオフィルスは面白そうに笑った。

 エマの反応を愉しんでいる風もあるテオフィルスにいつか仕返しをすると誓ったのであった。



 

 カレンと合流できたのは演劇部の演目が開演する直前のことだった。


 それまでどこを廻ったのか、エマは正直おぼえていなかった。

 テオフィルスの“ささやき”は不意にやってくる。準備もなく全身に浴びせられる甘い言葉のシャワーはある意味毒だ。

 HPもMPもゴリゴリに削られまだ午前中にも関わらず疲労困憊気味である。


 エマの様子に気づくと、カレンは“最上級”の笑顔で二人を迎えた。


 「ソーン先輩、エマに何かなさった?」


 「んー、別に何も?」


 テオフィルスも外面笑顔で応戦する。


 「意図なく行っているならば、すばらしいことですわね。私もそのテクニック伝授していただきたいわ」


 「ヴァーノンさん、面白いことを言うね。テクニックなら後ろに控えている君の子爵に教えてもらったらいいんじゃないかな。……俺達じゃまかな? キース」


 カレンの後ろに視線を送る。

 背が高く温和な顔立ち青年が立っていた。カレンの彼氏のキース・ルウェインだ。ティーグ侯爵家の嫡男でティーグ子爵位を持つ上級貴族。そしてテオフィルスと同い年の友人でもあった。


 「自分は構わないよ。ていうより、テオフィルス何でここにいるんだ? 委員会はどうした?」


 キースも同じ委員会メンバーでテオフィルスの立ち位置をよく知っている。


 「俺がいないくらいで回らないとか、そんな無能は委員会にはいないだろ?」


 「……まったく。残留組に同情するよ」


 絶え間なく飛び込んでくるトラブルに忙殺されている委員会残留組の顔が浮かんだ。

 “一騎当千”のテオフィルスの穴を誰が埋めれるというのだろう。今頃、事務室は大混乱してるはずだ。

 自分がその中にいないことをキースは心の底から神に感謝した。


 「エマちゃん、テオフィルスに変なことされてない?」


 「こんにちは。キースさん。だ…大丈夫だと思います」


 キースは大笑いした。テオフィルスが不機嫌そうに眉をゆがませると、


 「行こう。席がなくなる」


 足早に会場入口へ向う。


 これってダブルデートですよね?!


 エマはカレンに助けを求めるようにカレンを見た。カレンは「がんばろう? エマ」とでも言ってるのか胸の前で握りこぶしを作りガッツボーズを決めたのだった。


見ていただきましてありがとうございます。

実はこの小説を書き始めて一か月。

わーーーほんと私的に快挙です!!!

読んでくださる方、ブクマ入れてくださってる方のおかげです。

感謝!!多謝です!!!


追伸:

今回実は投稿する直前まで書いていました。

ちょっと散らかっていますが(汗)

後々訂正します。すみません……。


次回更新は明日できたらなぁと思ってます。閑話になるかもです!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ