第五話~哀別~
私はこの状況に耐えられなかった。そして気付けば教室から走り出ていた。
「あ、凛〜!」「けっ、意気地がねえな。んで!てめぇはいつまで泣いてんだよ!健太!」「ま、待ってくれ千鶴!もう少しで涙が止まる気がするからぁ...」「あー、みっともねえ。」「凛大丈夫かなぁ...」「まあそのうち帰って来んだろ。」「そうよね。とにかく今は明るくしなきゃ。」「ん?でもそういやなんでお前手ぶらなんだ?」「あ〜、私一回教室に来たの。だけど荷物置いてから部室に忘れ物を取りに行ってたの。ほらこの体操服。」「なるほどな。」「ん?美月ちゃん来たのかな?」「おはよう。ごめんね〜凛。遅くなっちゃって...あれ?凛は?」「あ、おはよう美月ちゃん。」「おいおい、呑気に挨拶してる場合かよ。」「どうしたの?」「俺は二度も説明しねえぞ。」「はいはい。あのね美月ちゃん。落ち着いて聞いてね。実は、あなたの机にあなたに対しての酷い落書きがあったの。それでね、その落書きを書いたペンが凛の物だった。もちろん凛は頑なに否定したよ。だけどあなたに会うのが恐ろしくなって教室から出て行っちゃったのよ。」「そんな...嘘でしょ、そんなはずない!」「だがなぁ長澤、当の本人は逃げたんだぜ?怪しくねえか?」「お、やっと泣き止んだか。」「おう!もう心配いらねえぜ。」「あほか。心配なんざしてねえよ。まあそれより長澤、こいつの言う通りあいつは逃げた。自分がやってねえっていう自信がない証拠だ。」「うっ...!私ちょっと出てくる...!」「お、おい!」「やめとけ健太。ありゃ止めても無駄だ。」「しかしどうなるのかな。あの二人。」「さあな。」「ま、あとは二人の問題だぜ。」「んーまあそうね。よし!とりあえず落書きを消そうか。」「頑張れよ。」「あんた達も手伝うの!ほら用意して!」「おいおい、まじかよ。」「ま、しゃーないな。いっちょ手伝ってやろうぜ!千鶴!」「ちっ、ったく。めんどくせぇな。」「ほらほら急ぐよ!」
私は教室から少し離れた階段でうつむいて泣いていた。どうしたらいいのか分からなかった。今弁解しても言い訳にしか聞こえないだろう。一時何も考えないでいよう。そう思ってから二、三分経ったころ、私の前に人が来た。驚いた事にその人は理事長だ。「どうかしたのかね?」「い、いえ少し困ったことが...」「悩み事か。ふむ。あの時伝え忘れたが私は少しの間、一週間程か...この校内にいる。一時的に校長室を借りてそこにいるので困った事があれば相談しに来たまえ。」「ありがとうございます。」「まあ私から今言える事は、どんな困難があっても諦めずにぶつかる事、だ。では失礼するよ。」そう言って理事長は去っていった。相談か...まあしないだろうな。
そうして私と美月はすれ違ったまま一日を終えた。今日は久美子が私の為に部活を休んで一緒に帰ってくれた。「大丈夫?しかしとんだ災難ね。」私は何も言えない。「でも本当に凛の親友って言うんなら凛を信じたらいいのになんで信じてあげないのかな。やっぱりあんな訳の分からない子と関わったらいけなかったんじゃない?」「久美子に...!美月の何が分かるっていうの!」私はつい久美子にあたってしまった。「ごめん...だけど凛のそんな暗い顔見たくなかったから...励ましにでもなればと思って...」私はバカだ。関係ないのに久美子にあたって。久美子は私の心配をしてくれたのに。「いや私の方こそごめん。ついカッとなっちゃって。でも大丈夫よ!」「そう。それならいいけど。」そして私は家に着きしばらく動かなかった。
翌日。私は朝早く家を出ていつも美月と待ち合わせする場所に行った。しかしいくら待っても美月は来なかった。遅刻するといけないので一人で学校へ行った。
教室に入ると、どうやって来たのか美月がいた。話しかけようとしたが勇気が出ない。そしてそのまま席に着いてしまった。ああ...これからどうしよう...




