第四話~事件~
翌日の朝。私は起きて自分の部屋からリビングへ向かった。母は朝食の用意、父は新聞を読んでいる。母の名は戸塚綾子(旧姓は伊藤)おっとりとした性格。父の名は戸塚明夫。マナーやルールには厳しいが他は基本的に優しい。当たり前のことだが二人とも私と弘樹を大切にしてくれる。ふと見渡して見ると弘樹がいない。母にきくと「あんたもう忘れたの?昨日夕食の時に凛が弘樹に明日からは美月ちゃんと二人で行くから私を待たなくてもいいよって」「あ...そうだった!」「全く...そういう所は母さんにそっくりだな。」「あら、忘れっぽいのはあなたに似たんじゃなくって?」「そうか?」「そうよ。ふふっ...」「ははははっ!」と二人はすぐにこうして喧嘩してるように仲良く話す。そういえば弘樹にはそう言ったんだった。美月と行くと美月とばかり話すから弘樹が結果的に一人になってしまう。だから弘樹に昨日一人で行っても大丈夫だと言ったのだ。「あれ?でもまだ七時だよ?もう弘樹行っちゃったの?」「うん。弘樹は部活の朝練だって言ってちょっと前に登校したわよ。」「え?弘樹朝練あったの?それなのにいつも私と一緒に行ってくれてたんだ...」今度改めてお礼を言おう。「さて、俺も行ってくるよ。」「あ、行ってらっしゃい。気をつけてねお父さん。」「おう。んじゃ、行ってくる。」「行ってらっしゃ〜い。」「さ、凛も早く食べなさい、遅れちゃうわよ。」「あ、うんそうねいただきま〜す。」
そうして私はいつも通り美月と待ち合わせ場所に行き、弘樹についての事情を話した。「そう...でも弘樹くんも私達だけ話していて暗い顔してたから良かったかもね。」私はそれを聞いて安心した。
そして学校について教室に行く途中で美月が「あ、ごめん凛。ちょっとトイレ行って来ていい?」「いいよ。じゃあ先に行っておくね。」「うん。ごめんね。」「いいよ。全然大丈夫。」私は先に教室に行った。教室に入ると私は驚いた。千鶴と吉田がいるのだ。私は最近美月と早く学校に来るようにしていたので毎度一番乗りだったのだが何故か今日は千鶴と吉田がいる。「なんで今日は早いの?」「さあな。関係ねえだろ。」「むっ...!」「それよりあれお前のだろ?」と千鶴が指を指す。その先を見てみると美月の机の上に私の筆箱があった。「あ、私の筆箱あったんだ。良かったぁ...今日家で支度するときになかったから探してたんだ。あれ?でもなんで美月の机に?」「知るかよ。とにかく行け。俺でさえ驚いたからな。」「え?驚いた?」「いいから見て来いって!俺は面白かったぜ!お前を少し尊敬したぜ。」「あほか。こいつに尊敬なんざあ馬鹿みてぇだぜ。」「へいへい。」一体二人は何を言ってるのだろう?とにかく二人の言う通り筆箱を取りに行った。すると私は声を失った。「え...?何...これ...?」美月の机にはマジックペンで酷い悪口が書かれていた。しかも私のペンで。「ねぇ!これどういう事!?」「あ?なんで俺に聞くんだよ。お前がしたんだろ?」「そんなわけないじゃない!」「だってよ、お前の筆箱があんだぜ?お前以外にありえねえだろ?」「吉田...なんで笑ってんのよ!笑い事じゃないの!」「おいおい。こいつを責めんじゃねーよ。」「ち、千鶴ぅ...」「ばか!なんで泣いてんだよ!」「だ、だってよぉ...」「もう!それどころじゃないの!あんた達以外に誰がいるの!?今日に限って早く来てんだから!」「あのなぁ...マジで今日は早く来たんだよ。」「じゃあなんで...」その時久美子が教室に入って来た。「おっはよー!ってあれ?なんか珍しいメンバーだね。しかも暗い...なんかあった?」と久美子が言う。「高木。お前今日早くねぇか?」「そう?いつもこれくらいだけど。むしろ千鶴達の方が早いんじゃない?ねえ?凛。」「う、うん。確かに久美子はいつも私達の次に来るけど...」「ほらぁ。で、なんかあったの?」「ああ実はな...」と千鶴が事情を話していた。だが私には今それを止める元気もない。ただただその場に立ち尽くしているだけだ。「そう...そんなことが...でも誰が?」「さあな。ま、こいつだろうよ。」「だから違うって!」「まあまあ。あっ、でも私さっき美月ちゃん見かけたからそろそろ来るんじゃない?」久美子がそう言うと教室は静まり返り、廊下から足音が聞こえてきた。その足音が近くなる度に私は死にそうになっている...




