第三話~予兆~
翌日。私はいつも通り美月と弘樹と一緒に学校に行った。
教室に入り、挨拶をして席に着く。後ろを見ると千鶴と吉田がいたが特にこちらを気にはしてないようだ。昨日の一件があったので少し声を落として話す。
そして朝のホームルームが始まり、長谷川先生の指示のもとグランドに向かう。今日は月初めだから全校朝会なのだ。
グランドに着き五分程経った。朝礼台に校長先生が立つ。「これから全校朝会を始めます。気をつけ!礼!」生徒達は礼をする。いま話したのは司会の教頭先生だ。名は豊川渉。教頭という地位だが、三十代のエリートだ。実家は資産家でそうとうお金持ちらしい。「おはようございます。えー先月は...」と校長先生の話が始まる。あるあるだがうちの校長先生の話も長い。校長先生の名は羽田透という。教頭先生とは違い、六十代のおじいちゃんだ。いつもニコニコしておりとても優しい。少し毛が薄くなってきている...(笑)なんて考えているといつの間にか校長先生の話は終わっていた。すると教頭先生が「校長先生ありがとうございました。さて、今日はこの学校の理事長が来て下さっています。皆さんにお話があるそうです。ではよろしくお願いします。」と言うとグランドがざわついた。この学校の理事長...入学して二年程になるけどまだ会ったことないな...どんな人なんだろう...とドキドキする反面すこしワクワクもしていた。朝礼台に一人の男性が立った。おそらくあの人が理事長だろう。「皆さん改めておはようございます。私がこの根矢川高校の理事長大塚義忠です。」おおっ中々渋くてかっこいい声だ。背筋はピンとしていて、顔は少し怖さがあるがどこか暖かさがある。髪は白髪混じりのロマンスグレーで、なんだか強者のオーラの様な物を感じる。一言で言うならダンディなおじいさん。だろうか。と自分の中で感想を言っていると「私が今日来た理由は、今月の全校目標を皆さんに教えるためです。」全校目標...?「近年他の学年、つまり先輩や後輩などと関わる人が少なくなっていると教育委員会で話があったのです。ですから、今日から月末まで皆さんには自分と同じ学年以外の人と仲良くなってください。これが今月の全校目標です。」またグランドがざわつく。しかし理事長が言うのだよっぽどの問題なのだろう。「では私はこれで失礼します。皆さん頑張ってください。」と言って戻って行った。「これで今月の全校朝会を終了します。ありがとうございました。」と司会の教頭先生が言った。しかしまだグランドはざわついていた。
「いやーでも驚いたねー」私は教室で美月と話していた。「ほんとだよ。他の学年の人かぁ...私人と関わる苦手なんだよね...」「大丈夫よ美月!私が一緒に行ってあげる!私も仲良くならなきゃいけないし。」「ありがとう!」と話していると「けっ...!くだらねえ、誰が好き好んで他のやつらと仲良くならなきゃいけねえんだよ。」千鶴だ。「ちょうどいいじゃない千鶴。可愛い後輩とか優しい先輩と仲良くなればあんたのひねくれた性格もちょっとは良くなるんじゃない?」「やなこった。お前こそ他のやつらと仲良くなりゃあそんなぎゃんぎゃんやかましくなくなるだろうな。」「なんだってぇ...」「おー怖。行くぜ健太。」「おっ!どこに行くんだ?まあ、千鶴がそこまで言うんなら行ってやるぜぇ?」と吉田はからかい気味に言ったが千鶴は無視した。「お、おい!嘘だって待ってくれよ〜!千鶴!おーい!千鶴く〜ん!?(泣)」やれやれ仲良さそうだな、と思いながら見ていた。「しかし誰と仲良くなる?」と美月は言う「んー、とりあえず昼休みに弘樹の学年のとこに行こうかな。」弘樹ならいい子を知っているだろうと思った。
昼休み。私は美月と一緒に弘樹の教室1ー2に行った。少し緊張したが教室のドアを開けて「失礼します...2ー2の戸塚ですけど戸塚弘樹はいますか?」ときいた。すると弘樹はこちらに駆け寄って来て「お姉ちゃんが僕の教室に来るなんてどうしたの?何かあったの?」と心配そうな顔で聞いてくる。やっぱり可愛い弟だ。「ううん。違うよ私は大丈夫。」「良かったぁ...じゃあどうしたの?」「うん。実はね今日の全校朝会で他の学年の子とも仲良くなれって言われたじゃない?だから弘樹に聞けば誰がいい子を教えて貰えるんじゃないのかなって思って。」「あー、そういうこと。分かった。今日の放課後までに何人かに言っておくよ。」「ありがとう!」私と美月は声を揃えて言った。弘樹に頼んだのは正解だった。
そして私達二人は弘樹からの紹介の女の子、沢田薫ちゃんと仲良くなれた。さらにその薫ちゃんの姉の沢田葵先輩とも仲良くなることができた。一石二鳥。なのかな...?でも嬉しかった。
しかしその時の私は次の日あんな事件が起こるなんて知る由もなかった。




