第4話 クラスマッチイベントは準備が大切だった
「さて、続きをするかな」
「巧はわざとトラブルを起こしてみるように言ってたから機会があればやってみるか」
そう呟きながらVRギアを装着し、ゲームの世界へ潜りこんだ。
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「おはよう桜花」
「おはよう龍ちゃん」
よし、今日は普通に挨拶できたぞ。学校に来る前に鏡に向かって練習してきた甲斐があった。
心のなかでガッツポーズをしながら席に着いた。
今日の1限目は来週行われるクラスマッチの詳細や練習についての話し合いらしい。
昨日桜花から言われたのだが、僕の出る競技は100m走とリレーだったな。
まったくどう考えても余り物競技のような気がするがその場に居なかったのだから仕方ないな。
今日はこれから競技の練習をするらしい。
と言っても球技とかならともかく、100m走とかは練習いるのか?
まあ100m走はともかくリレーは練習しとかないとバトンを落としそうだ。
「とりあえず今の自分のタイムを確認しとくか」
そう言いながら体操着に着替えてグラウンドに出た。
準備体操をしてからスタート地点でタイム測定の順番を待っていると桜花が話しかけてきた。
「龍ちゃん。調子はどう?」
「ごめんね。リレーとか配点が高いからか皆がやりたがらなかったから私が勝手に選抜しちゃったの」
「勝ちに行ってるクラスは運動部の速い人で固めてたり、それこそ陸上部員で固めてる所もあるみたい」
「うちのクラスは男女1人づつは陸上部員を確保出来たけど他の運動部の人はサッカーとかに流れてしまったの」
「あっ、リレーは男女2名づつの混合リレーだから女子のあと1人は私が入ったから男子が1名足りなかったって訳」
「ほんとにごめんね。でも私龍ちゃん信じてるからね。カッコいいとこ見せて欲しいな」
そう言って極上の笑顔を見せてきた。
可愛い女の子に期待されて頑張らない男はいないと思う。
とりあえず今の自分を確認するために全速力で走った。
「ただ今のタイム16秒00」
記録係から記録を受け取った俺は愕然とした。
「遅い、遅すぎる!?」
何でだ?一般高校生の平均が何秒かよく分からないけど陸上部とかと一緒に走らされるのにかなりヤバイ気がする。
でも、パラメータには『体力』ぐらいしか関係しそうな項目は無いし、大体寝て回復する項目で走る速さが上がる訳がないよな。
一体どうすればいいんだ?
記録用紙を眺めながら考え込んでいると桜花が話しかけてきた。
「龍ちゃんどうしたの?」
「いや、自分なりに頑張って走ったつもりなのに思ったより遅かったなと思ってね」
「どうしたら速くなるのかな?と考えてたんだ。せっかく桜花が推薦してくれたからには精一杯頑張ろうと思ってね」
俺は記録用紙を見られないようにしながら当たり障りのない受け答えをした。
「特訓をすれば大丈夫!」
いきなり桜花がそう言い出したかと思うと説明文を読み始めた。
『特訓モード。イベント発生時に選択できる特別なモード。体力を消費して必要なパラメータを上げよう。時間が足りないなら超特訓モードもあります。但し体力の減りも2倍になるから注意です。体力が減りすぎると倒れてパラメータもリセットされますので要注意です。』
「じゃあ龍ちゃん頑張ってね」
桜花はそう言い残すと自分の練習に戻って行った。
俺はいきなりの説明モードに苦笑しながら『これ、絶対ヒロインに言わせるセリフじゃないよな修正させよう』と思いながらデバッグメモに記載しておいた。
まあ、一応攻略の糸口はつかめたので特訓モードとやらをやってみる事にした。
◎特訓モード壱
『ひたすら走る』
内容:体力の限界一歩手前まで走り込む。
効果:走力(主に持久力)が一定量向上する。
注意点:限界を超えると倒れます。
◎特訓モード弐
『100Mダッシュ×10本』
内容:100M走を10回行う。
効果:走力(主にスピード)が一定量向上する。
注意点:1回につき体力が5減少します。
◎特訓モード参
『坂道ダッシュ×10本+ロードランニング10km』
内容:心臓破りの坂道ダッシュ+海岸線経由のマラソン10km。
効果:一定の確率で超人的なステータスアップする事がある。
注意点:失敗するとステータスダウンしてさらに1日消費します。
「まあ、普通なら特訓モード弐なんだろうけど」
僕は少し考えてから選択肢を選んだ。
『特訓モード参』
「やはりここは少し無茶をしてみるのが面白いな」
その後、面白そうだと言うだけで選択した自分の浅い考えを死ぬほど後悔する事になった。
かなり久しぶりの更新となりました。リアル仕事が忙しくなってなかなか執筆が進まないですが不定期ながら更新して行きたいと思いますのでよろしくお願いします。