第2話 幼なじみ設定なのに名前呼びするハードルが高くて焦った
「知らない天井だ」
目が覚めたら部屋のベッドの上だった。
周りを確認してみると、普通の男子高校生の部屋っぽく配置されているがよく整理整頓された部屋だった。
「普通の男子高校生の部屋がこんなに綺麗なわけ無いと思うけどゲーム内だからそんなものかな…」
独り言を呟きながら非現実なセリフを唱えてみた。
「ステータスオープン」
普通のアドベンチャーならあるはずのない物だが、このゲームはRPG要素が入っているから世界観をファンタジーにしていなくてもあるはずだとの思いから試してみた。
これで何も起こらなかったら只の中二病なのだが短く「プン」と言う音と共に半透明のステータス画面が表示された。
「内容は体力、知力、人気度、所持金、ヒロインとの相性度、ゲーム内の日時、そしてチート能力の表示」
ファンタジー物ではないから「MP」とかはなく当然魔法などあるわけがない。
「チート能力で選択してれば使えたかも知れないが…」
だが、現在社会でそんなことすれば良くて「マジシャン扱い」悪ければ「異端児・悪魔」の目で見られること請け合いだ。
テレポートくらいなら大丈夫かも知れないが、これも気をつけて使わないと時間的つじつまが合わないことになるから厄介だ。
その点「巻き戻し」は失敗しても(1日に1度だけ)だがやり直し出来るから攻略の難易度はさがる(はず)だ。
ところでこのゲームはレベルの表示がないけどパラメータはどうやったらあがるんだったかな?
たしか運動したら体力が勉強すれば知力が上がったような気がする。って必要か?ゲームの中でも勉強するとかあり得ない気がするんだが…。
そう思いながら電子説明書を表示させて確認すると「イベント時以外はスキップされます」とあった。まあ、当然だろう。
ついでにどのくらいまでレベルアップするか確認したところ、各パラメータごとに最大値が99で100になるときMaxと表示されるらしい。
「VR機能と人工知能以外はほとんど巧に丸投げしてたからなぁ」
呟きながら自分のパラメータを確認する。
「体力」50
「知力」50
「人気度」50
「所持金」5000円
「ヒロイン相性度」70、結構仲良し
「日時」2020年4月8日
「スキル」Time Reverse
「体力、知力、人気度が50からスタートは高すぎじゃないのか?」
「いや、でも10とかだったら怪我や病気のマイナスイベントが発生したら直ぐにゲームオーバーとかなるのか?」
「ヒロイン相性度が70なのは幼なじみ設定があるから高めなのかな?でも、70もあったら直ぐにクリアできるような気もするがはたして…」
バランス調整の必要性を記入しながら学校に行くことにした。
* *
「市立桜ヶ坂高校」ここが本編の主舞台になる主人公とヒロインが通う学校だ。
主人公とヒロインは共に3年1組で席も隣どうしと言うゲームならではの都合良すぎる設定だった。
「いや、都合良過ぎて何も言えないや」
「お約束とは言え、もう少しひねらないと駄目じゃないか?」
苦笑しながらヒロインが登校してくるのを待つ間これからの行動を考える。
「さて、どういった切り口で攻略していくかな」
「とりあえず挨拶イベからかな?」
「幼なじみで相性度70だから始めから名前呼びでも大丈夫か?」
「それとも無難に名字呼びにするか?」
考えこんでいると、後ろから不意に声がかけられた。
「おはよう。龍ちゃん」
ドキリとした。
リアルで彼女なんて居るわけないし、当然ながら愛称で呼んでくれる女の子なんて皆無。しかも美少女だ。(自分で設定したのだから当然なのだが…)
ヤバイ、緊張して頭が真っ白になってる。
早く挨拶を返さないといけない。
慌てた僕は………返事が出来なかった。
「!………。」
たいしてモテた経験も無く、だいたい同世代の女の子と話す機会なんて授業中のディスカッションくらいの僕がゲームとはいえ、VRの存在感ありまくり美少女に選択肢の無い会話を普通に出来ると何故思ったのか?
「現実じゃないから…」
「幼なじみだから…」
「そう言う設定だから…」
そう思って軽くみていたが駄目だ、桜花の顔をまともに見れない。
「どうかしたの?」
桜花が覗きこんでくるが
「いや、何でもないよ」
そう答えるのが精一杯だった。
「どんだけヘタレなんだよ」
自分の会話スペックの低さに落ち込みながら次こそは名前呼び出来るようにと考えていた。
『ヒロインとの相性度が低下しました』
突然頭の中に音声メッセージが聞こえてきた。
慌ててステータスを確認すると「ヒロイン相性度65、ちょっと仲良し」になっていた。
マジかよ。あんなことでパラメータが変化するのかよ。
パラメータが下がった事に戸惑いながらも上げるにはどうしたらいいか考えながら授業の準備を始めた。