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最終話 それが『お約束』と言うもの

「龍ちゃんおはよう」

「おう、おはよう」


今日は駅で待ち合わせにした。

その方が何となくデートっぽいかなと思って。

2人で出かけるのも久しぶりだ。


「楽しみだね。早く行こう。」


桜花はそう言うと笑顔で僕の手を引っ張った。


僕はドキドキした。


ゲームと頭では分かっているつもりでもやはり好きな娘に手をつながれるとドキドキするものだ。


僕がドキドキしていると周りからチラチラこっちを見ながらひそひそと話す女の子達の会話が聞こえてきた。


『あれ、赤坂君よね。今話題の日本人最速の高校生。次のオリンピックで確実に世界新記録を出せると言われている…。』


『隣の娘は赤坂君の何なのかしら、手をつないで楽しそうにしてるけど』


『もしかして、彼女じゃないの?だとしたらもしかして、スクープになるかも、雑誌にリークしたらお小遣い貰えるかも知れないね。』


なんか不穏な単語が聞こえて来るのは気のせいではないだろう。


辺りでスマホカメラのシャッター音が聞こえる。


『ヤバイ』

『なんか絶対にヤバイ』


この流れはバッドエンドの流れだ。


そう直感した僕はこの『ルート』を諦めた。


『time reverse』


僕は迷わずにスキルを使った。


時間は巻き戻され選択肢の場面に舞い戻った。


「よし、うまく行ったぞ」


僕は小さくガッツポーズをし、新たな選択肢を選ぶために思案した。


『水族館』…は多分同じルートに行き着くだろうと容易に推測出来た。


『公園』…もしかり、パパラッチは何処にでも居るもんだ。


となると『学校』か『何もしない』になるけど、『伝説の樹の下で告白』とか某ゲームもろパクリの流れはある訳無いよなぁ?


『何もしない』ってどう言うことなのかな?


『!?』


もしかして、『何もしない』は『何処にも行かない』の意味で、桜花を僕の家に呼ぶことなのか?


「そうだ!そうに違いない!」

(たくみ)のやりそうな引っかけだな!」


僕はそう叫ぶと『何もしない』を選択した。


* * *


【何もしない】


が選択された為、デートの約束が消滅しました。


「は?」


そして戸惑っているうちに強制的に次の日に…。



「龍ちゃん、遠くに行っても私の事忘れないでね」


いきなり桜花にそう告げられた。


どうやら僕はオリンピックの強化合宿メンバーに選抜され、海外留学することに決まったらしい。


ちょっと待てぃ!


強引過ぎないか?展開早すぎないか?


もはや完全にバッドエンド直行便じゃないか?


仕方ないからスキルで戻って…。


・・・・・・・・・・・・


「龍ちゃん、遠くに行っても私の事忘れないでね」


『!?』


今朝に戻っただけ?


【time reverse】時間を巻き戻すスキル、だだし巻き戻せるのは『1日まで』


何もしないを選抜した直後1日強制的に進行していた事を忘れていた僕は頭を抱えた。


「やってしまった」


もう取り返しのつかない鉄板ルートに組み込まれている事に気づいた僕は諦めて全てを受け入れる菩薩のような乾いた笑顔をするだけだった。


* * *


現実世界に戻った僕はフラれるどころか告白も出来ずにエンディングを迎え、スタッフロールが流れている画面を見つめながら呟いた。


「結局何が正解だったんだよ」


直ぐに(たくみ)に電話して問いただしたが、データを確認しないと何とも言えないと言われたので明日学校にて確認する事になった。


次の日…。


僕は(たくみ)にゲームデータを渡して確認してもらっていた。


「色々な改善案は紙に書いておいたから修正頼むわ」


そう言いながらテストプレイで気になった箇所の書いてあるメモを渡した。


「おう、サンキュー」

「お前のデータ確認させて貰ったけど、いやこれお前が悪いわ」

「ほらこれ見てみろ」


そう言いながらテストプレイデータのパラメータを画面に表示させた。


「特訓モード重ねがけのせいで運動パラメータが異常値を指しているだろ?」

「やり込みゲーマーに多いミスだよな」

「まあ、それを逆手に取ってある意味あり得ない世界を体験させてあげようとの試みで仕掛けたトラップに見事に引っ掛かった訳だ」

「世界記録の樹立やシンデレラストーリーが体験出来るって凄くない?」


(たくみ)はそう言うとダメ押しの言葉をかけてきた。


「ちなみにあの選択肢は『何もしない』以外はちゃんと告白イベントまで進めてパラメータさえ問題なかったら各エンディングに移行するはずだったんだよ」

「全ては君が舞い上がりすぎてパラメータを上げすぎたのが原因って訳だよ」


僕はひきつった表情でポツリと呟いた。


「自作のゲームでもフラれるのかよ」


「やっぱりゲームでも現実でも女の子の気持ちは難しいものだな」と言いながら「早く改善点を修正してくれよ、もう一回テストプレイしてやるから」と(たくみ)に伝えて部室を後にした。


締め切りまで後1週間か、僕の方のシステムももう一度チェックしとくかな。


そう言いながらパソコンの電源を入れた。


今度こそハッピーエンドにたどり着きますように…。



~完~

最初の設定では何回テストプレイしてもハッピーエンドにたどり着かない落ちが待っているマルチバッドエンドループの話になるはずでしたが、最初の設定が甘過ぎだったのとリアル仕事が忙しくて定期更新が出来なかったのがまずかったと思いました。つくづく定期投稿される皆さん凄いなと感じた初投稿作でした。現在もうひとつ別に投稿している小説がありますので、これからはそちらを進めていけたらいいなと思います。読んでくださった方ありがとうございました。

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