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それでは、行こう。

「おはようございます!」


ラストダンジョン入口につくなり、イルが元気よく挨拶をする。


「あの後相談した結果、今日はよろしく頼むことにするよ。案内報酬は無事帰還できたときでいいかい?」


「はい!問題ありません!何より無事に戻ってくることが最大の報酬です。」


「それでは、行こう。」

勇者一行はラストダンジョンに入っていった。


ナナが暗がりを照らす照明魔法を唱える。見た目はいたって普通の洞窟だ。


「さて、皆様改めましてラストダンジョンにようこそ!案内人を勤めさせていただくイルです。」

先頭に立ったイルが振り向きツアーガイドかのように挨拶した。


「まず始めに基本事項を説明します。もう知っていることもあるかも知れませんが、おさらいということで聞いてください。」


・一度入ったら最奥の魔王を討伐するまで出られない。帰還魔法も不可。帰還アイテムはダンジョン内部で入手したものに限り有効。


・一度にラストダンジョンを攻略するのは最大四人まで。イルはカウントされない。


・ラストダンジョンのモンスターは魔王の魔力によっていくら倒しても枯渇することがない。


・ダンジョン内で取得したアイテム等は攻略者が全滅するとまたダンジョン内のどこかに再配置される。


・反魂魔法不可。(死亡して魂が消えうせた身体に再び魂を呼び戻す行為は不可)


・イルが案内できるのは到達したフロアのみ。到達していないフロアの案内をしようとすると魔王の呪いによりイルは爆散し死亡したあとに町にリポップする。また副次的なペナルティが課せられる。


・次のフロアへ続く階段の場所は攻略毎に変化する。


「問題なければまずこの1階層をご案内いたします。」


 ここで出現するモンスターは物理攻撃か魔法攻撃に完全耐性を持っています。気を付けないといけないのは同じ種類のモンスターであってもどちらの耐性を持っているかどうかは攻撃するまで分かりません。


 宝箱が配置されていますが、中身はほぼエルダーミミックです。よほど腕に自信がなければ宝箱は無視してください。稀に貴重なアイテムが入っていますが、入手するためには百体以上のエルダーミミックを倒すことを覚悟してください。


トラップが無数に張り巡らされています。発動効果はそれぞれですが、そのどれもが即死級なので罠検知スキル必須です。


「これさえ知っていれば今いるフロアはみなさん攻略可能だと思います。不明点等あればご遠慮なくご質問ください。」


デルミーが早速質問する。


「宝箱に運良くアイテムが入っていた場合って、一体何が入っているの?」


「おいっ!エルダーミミックなんざ一匹でもごめんだっ!」

「私も宝箱漁りには反対です。反魂魔法が使えない状況ではミスする可能性は少しでも0に近づけたいですもの。」

ハオとナナがそれぞれ宝箱を嫌った。


 エルダーミミック。

宝箱に扮した魔物ミミックの上位種である。その宝箱に触れたとたん箱の中に折り畳まれた本体が弾け体積にしておよそ60倍ほどまで膨れ上がる。中身は甲殻系モンスターの時もあればデーモンのこともある。宝箱が開くと同時に猛毒と麻痺ガスを撒き散らし使い魔を数体召喚する。通常であれば撒き散らされた致死レベルのガスに倒れ、動けないうちに使い魔によって八つ裂きにされて喰われる。体躯は非常に頑丈、状態異常耐性持ち、属性攻撃は吸収される。討伐は非常に困難。


「エルダーミミック狩りの判断は慎重にお願いします。ボクも開始早々に死にたくはありません。あと、取得できるアイテムは石呪剣メドゥーサもしくは霊鳥の羽です。」


 石呪剣メドゥーサ。

魔物を愛し魔物と共に生きた加治屋ビノスの遺作レプリカ。攻撃対象者に常時石化効果が発動する片手剣。同時に使用者の手元も呪い効果により石化する。石化は腕ごと切り落とさなければ全身に回り、やがて石像と化す。


 霊鳥の羽。

ゴルゴニア山脈奥地に生息する霊鳥の羽。別名は神の御鳥。所持者の状態異常耐性を倍増させる。上限耐性は状態異常無効。


「流石に貴重なアイテムだね。」

勇者アルテはエルダーミミック関係のアイテム説明を聞き終えて、ある決断をした。

「ドロップアイテムが帰還ポータルやイルみたいに死に戻りできるアイテムなら僕はエルダーミミック狩りに賛成しそうだった。けれども火力は足りているし、状態異常対策もそれなりに整っている状況では優先すべきではないと思う。」


 デルミーはこう続けた。

「同意見だよ。レアアイテムと聞いてもしかしたらとは思ったけど違ったみたい。エルダーミミック乱獲なんて怖すぎるよ。」


 アルテ一同の戦闘形態はこうだ。

アルテ、ハオ、デルミーによる物理・魔法攻撃の高火力で圧倒。それに加えアルテ、ナナの体力回復や状態異常治癒がそれを補助する。

構えた状態での戦闘は強いが、反面奇襲を受けるとバックアップに要する時間がかかるし、イレギュラーな戦闘向きのパーティではない。


「わかりました。宝箱は無視でOKですね。罠探知とモンスターの耐性に気を付けて、次のフロアを目指しましょう。」


「ちなみに、町へ帰還できるアイテムはこの階層では手に入らないのか?」


「はい、ここではありませんね。具体的にどこかと説明することは呪いのルールに抵触しますので、入手可能なフロアに到着しましたら勿論ご案内いたします。」


 道中、魔法耐性トロルや物理耐性魔導士など、これまでの旅で出会ったモンスターとちぐはぐな特性を持ったもの達ばかりであったが、事前知識と経験により対処は難しくなかった。


 イルはかつてピッカー(荷物持ち)の役割であった。人では到底積載不可能な量の道具を持ち運べるマジックバッグ、手持ちの治療薬やバフポーションを自動で使用するオートリング等のレジェンド級アイテム所持者であり熟練者であったが、初回の魔王討伐で全滅した際に全ロストした。


 ラストダンジョン内でロストしたアイテムは魔物等によって回収されるため、運が良ければ入手できる可能性もあるらしい。


そんな場繋ぎの自己紹介が終わる頃に、次フロアに続く下層階段に到着した。


「流石皆さん。第一階層は難なくクリアですね。おめでとうございます!」


イルの言う通りアルテ達はほぼ無傷でアイテム消費も0であった。皆、歴戦の戦士たちたる風情である。


「この調子で地下2階も頑張りましょう!」


ラストダンジョン攻略はまだ始まったばかりである。


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