未完
吾輩は人である。
名前はアシュリー・リリウェル。
どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。
ただあのクソ上司のセクハラな眼差しと大量に積まれた紙の書類、それから過労死を迎えて異世界にやってきたということだけは記憶している。
……なんちって。
どうも、山田です。
過労死して気がついたら異世界に転生してました。
いやぁ、もうびっくり。
だんだん気が遠退いていった〜と思ったら、気がついたらベッドの上なんですもん。
おまけにケータイには『あんた抽選あたったで〜、よかったなぁ!』みたいなメールが届いてるし。
最初は、すわ、新手の詐欺か!とか思ったけど、実はそうではなく私はついに異世界転生を果たしていたことに気がついた時はもう感動しちゃったね。
というわけで前回のあらすじはこれまでにしておいて、さっそく今生の私のステータスをご紹介しましょう!
⚪⚫○●⚪⚫○●
名前:アシュリー・リリウェル
性別:女
種族:人間
年齢:10歳
魔力:無し
⚪⚫○●⚪⚫○●
以上、終わりッ!
……え?
異世界転生者の定番のチートスキルはって?
残念ながら、この世界のスキルとやらは、魔女になった人だけしか獲得できないものらしく、私はまだ持ってない。
この世界はどうやら剣と魔法の異世界という、異世界の中でも定番の異世界らしいが、最近よく見かける『安価でチートな異世界生活物』とは違うらしく、人間は魔法が使えないらしい。
主に魔法が使えるのは悪魔という種族で、“戦前”では魔族と呼ばれていた種族の人たちだけらしい。
ただ、人間の中にも魔女という存在がいて、その悪魔と契約を結ぶことで、擬似的に人間の女性に限って魔法を扱えるようになるのだとか。
ただ、その契約をするにはそれ相応の年齢に達した上で、必要な知識を身に着けなければいけないらしく……。
とりあえず魔法を使ってみたい私は、今屋敷の図書室で猛勉強中だったりする。
そして、屋敷で勉強したことは、忘れないうちにスマホの中にメモする。
絵とか図柄とかの情報は流石に書き込めないので、そこら辺は写真に撮って保存し、ファイルを作成することで何とか事なきを得ている。
そうそう、ここに転生してきてわかったことなんだけど。
私のこのスマホ。
どうやらゲームで言うメニューウィンドウみたいな機能がついているらしく、アイテムを出し入れしたり、ストレージ内のアイテムをそのまま装備することもできる上、自分のステータスの状態まで確認できるらしい。
おまけに欲しいときにはすぐ手元に現れて、使わないときは何故か知らないけど虚空に隠れる神対応。
ただ……。
ネット検索機能がなくなっていることだけが、ちょっと悲しかったりする。
……え?
充電の必要性?
それがね。
このスマホ、今まで電池切れになったことが無いんだよ。
自分で充電しているのか、それともそもそもそんなもの関係ないのか……。
よくわからないけど、考えても無駄なので考えないことにしている。
「えーと、このシンボルがこの数式に対応してて……だからこの場合の組み合わせの解は……んん〜?」
にしても、魔女の魔法というのはかなり複雑怪奇でわかりにくい。
悪魔の力を介して任意の魔法を発動させるために使う魔法の構造式。
それが魔法陣。
魔法陣は悪魔が理解しやすい数式……人間風に言えば筆算のようなものと理解している。
あるいは漢字に似ているのか。
数式の漢字化、イメージの化体……。
外国人が漢字を難しいと感じる理由の一端が、なんとなくわかった気がした。
「んー、多分これは凍結かな?」
私はノートに書き写した問題に、答えを書き込んだ。