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ヲタ村ダンジョン  作者: KOJHIRO
EPISODE 2 After
3/24

肩慣らしにもなんねぇな

 たこ焼き(ぽいの)とかタコさんウインナーとか,タコ絡みなものが目の前から消えていくのはナニかの布石か伏線かなんて思いながら『適度』の扉に手を当てる。

 食事しなら見ていたが<>冒険者は出てきていたが</>傭兵の一団はまだ出てきていない。横目で見た『死亡』カウンターはまた上がっている。<>冒険では</>自己責任と言うが自分が上げないことを願うばかりだ。


「狩るゾー」

「「「(げっぷっ)」」」


 『簡単』では層が進むほどに照明が弱まり,薄暗くなっていったが,入ったすぐからここは『簡単』の三層目ぐらいのほの暗さだった。

 壁の作りはと言うと,『簡単』は明るい黄土色の煉瓦の耕造で,『<>簡単</>』だと,少し大きなコンクリートブロックで組まれている。


 敵がいつ出てくるか分からない状況では,声での会話を控えアイコンタクトとハンドサインで警戒の邪魔であったり,相手に気付かれないようにしてる。

 先頭はわし。フットワークはそれなりにあるがリーチが短いので,天井近くとか狩り残した物はすぐ後ろのポン○が潰す。その左右の後方には,長弓から取り回しのいいサイズに持ち替えたナナ○と魔弾を放つミィが,後衛から長・中距離をカバーする。もし背後から襲われたとしても,むしろわしやポン○以上に頼りになる。うん,特にゴブリンだと女子の敵として認識していて,遭遇してすぐの名状しがたい音にわしら前衛組二人は,なぜか背後を確認できない。怖ーよ女子。


 難度は『適度』の一層目は『簡単』の三層目ぐらいか。脇道とか広さも体感からだけど格段に広くなっている。


 後衛に例外があった。『簡単』よかレベルが上で脅威度が増したコウモリとかゴブリンとかでも,射程にはいると近寄るよか早くドロップ品に変えるのだが二層目以降からで始めたムシには,甲高い悲鳴を上げか弱い女子をアピールしやがります。ムシは多様で床と壁を這うクモとアリ,跳ぶホッパー,飛ぶキラービーとかアブ,ドラゴンフライとか。そしてムシには入んないがヘビとかは虫類もダメみたいだ。


「あかーん! こっちぃこささんといてぇー」

「DoDoDo Dho---ih!」


 通常は倒した獲物は解体しないと素材にならないが,わしらが大物を狩ると滅多に起きないが,目減りするしランダムで部位も変わるが直接素材にかわったうえで,レア素材がとれる確率でそれに関わったパーティメンバーのアイテムボックスに収納される。

 それがこのダンションでは,高い確率でソレが起きる。楽っちゃー楽だわな。まるでゲームシステムそのものだね。NPCとの混在パーティだとどうなるのかそれとなく誰かに訊いておかないと。


 ゴブリンもシャーマンであるとかのバリエーション,そして上位種とかが下層になるにつれて手強さを増してきたようだ。実感としての差は殆ど無く,見た目?


 4層目は,コボルドが発生していて一つ上と同じぐらいの広さを進んだあたりで床が数センチ上がった通路があった。直線で20メートルぐらいで突き当たりは扉が閉じられている。その少し手前に,パネルと関係者以外立ち入り禁止のスタッフルームへのドアがある。向かい合わせに,エチケットルーム。いつものセーフティゾーンだな。

 そしてはやくもボス部屋か?


「ここってあれだよね。先に入ったPTにも追いつかないし,後からも追いつかれないし」

「個別対応してくれているのでござろう」

「どうして」

「んー そこそこ経験値とドロップ品を手に入れるため?」

「・・・」

「なんか一口で言う言葉があったよね」

「「「・・・」」」

「冒険者視点では不心得なPTに襲われない反面,困ったところを助けてもらえないか」

「運営側からすると安心させて先に進ませられるのか」

「油断させられてる?」

「ダンションにとっちゃあ,わしらがエサだからな」

「「「おおー」」」

「ちなみにダンジョンマスターがいるとしたら,ゼッタイ日本人か日本かぶれだね」

「「「おおー」」」


 この『適度』での『死亡』は,対PTでなくモンスターに寄る物なのかと疑問に思ってきた。


「ここから先は罠にも注意しないとね」

「ペースが落ちるが,致し方ござらぬ」

「安全第一」

「油断大敵」

「弱肉強食」

「焼肉定食」

「それ言いたかったのにぃ」


「まっそれはそれで,トイレ行きまーす」

 両肩にトトンと衝撃を受けて,ミィが頭上を越えた。「わしを踏み台にしたぁ?!」目の前に立つとわしの頬を引っ張って回れ右をさせられた。

「そっちちゃう。こっちて何遍ゆーたら覚えれるん」

「ひゃい」


 ヘルムを脱ぎ便器に座って腕を組む。こっちは落ち着かないのだ。天井を見上げると隣のコンパートメントとの仕切りは以外と低い。そして背面の壁にも天井からの隙間がある。大人は無理だがわしなら十分だ。

 頬はまだジンジンしているがにやりとするわし。隅を交互に駆けて一気に突き進むわし。額に衝撃を受けて鈍い音とともに墜落していくわし。見えない結界が張られていたようだ。ミィにバレないように身体のバネをフル稼働して着地の音を消す。

 向こう側からこちら側への侵攻なら分かるが,なぜ反対があり得るのだろう。まさか「心は乙女よーん」系の方達対策か? オネエはどっちへ入るのか? えっ練度によって変わるの? へぇーそうなんだ。


 ドアがトントンされた。


「何の音?」


 聴かれてた? ああ結界に当たった音のほうか。


「ちょっとうとっとして,頭ぶつけた。中に落ちとれへんぞー」

「ふーん」

「これから糞をするので,よぉーっく耳を澄ませててな」

「変態!」

「ありがとぉーす」

「褒めてない」

「TELEMANNがな」

「ド変態」

「最高級のお褒めを頂きましたーっ」

「知らんわほけぇ」


 やっと離れていってくれた。さて便座に落ち込まないようにするには難しい。なぜかこの世界のトイレでは男の大きい方は殆ど和式で洋式との併設もあるが,女性トイレは全て洋式なのだ。下からのノズルで温水が出てくるのも付いてたりする。残念なことに当たる位置が違うのでわしは恩恵にはあずかったことがない。ミィはどうやつているのだろう。下をすっぽんぽんにしてまたいでいるのかなんて訊けない。


 複数の意味で,くそーっ。


 通路に出るとなぜか3人の視線がこわい。かれらの視線がおでこに集中している。ナニがあった?

 ナナ○が手鏡を出してきて,覗くとわしの額に出っ歯のカメの絵。まっまさかあのときかっ?


「寝てて,ゴッツンしたときのかなぁ」


 (ちっ)

 ミィの舌打ちが聞こえた気がした。


「行く?」

「「「応」」」


 コボルドリーダーを中心にコボルドチーム,ゴブリンリーダーを中心にしたオオカミを含むゴブリンチームがその左右に,最前列にムシ,最奥に椅子に座ったオークの布陣だ。

 ムシの大群に固まる女性陣。その目はわしを見て,無言で「やれ」と強要している。


「ファイヤーウォール&エクスプロージョン拡張ばぁ----ん」


 ファイヤーウォールで幅と高さ,エクスプロージョンで床面をカバーして床のムシと飛ぶか跳んで逃げようとするムシにも対処した。あとでボルケーノても良かったかと気づいたのはMPポーションを飲みながらだった。

 奥のアークまでは届かずに無傷だが,対象のムシの殲滅以外にもコボルドとゴブリンの殆どが焼かれて戦闘持続は困難な感じだ。

 急激な魔力消費で身体がまだわずかに弛緩する。ぺたりと床に座り込み「あとはシクヨロ」と肉弾戦が得意な3人にサムズアップした。


「まかされた」

「応」

「サボるな」


 重い身体をしぶしぶ動かしザコと言っちゃあ悪いがコボルドとゴブリンを始末して,まだ自分が出る程じゃないとでも思っているのか始終ニヤニヤしているオークに向き直る。


 視線はナナに向いているようだ。


 わーナナ○さんこいつに苗床候補にされてますよ。キモいよねーとポン○を見上るとなんとなくシルエットが似てるよなー。

 たしかナナ○さんてBL系も好物だったから,オークとポン○のめくるめく・・・ボツだ。


 オークは横にある棍棒を持ちにたにた笑いのままに椅子を立つ。大きな的に迷い無くナナが放ちミィが撃つ。胴が貫通する穴ぼこだらけになってもまだニタニタが止まらず,おおっ即死だったみたいね。

 みんなボス相手だと思ってか力が入りすぎててオーバーキルしただけだいっ。


 小粒の魔石などドロップ品を拾っていく。レアだとゴブリンは難度やっても小さな角とか小さな牙程度だが,コボルドは炎系で仕留めたときに出るホットドッグ,オークは高級ポーク肉などにドロップする。


 ただただ無残に散っていったオークに合掌。キミにはナナ○さんは高嶺の花だよ。

 回収が終わったら,わしらの身体が光り出して転送するんだと気がついた。


 送られた先は次のステージへの扉前でなく,4層目に設置されている休憩室だった。

 丸テーブルに椅子が5つ,それが4組で20人まで収容できるところだ。

 見渡すと,トイレ,無料と有料に別れたドリンクバー,回復ポーションと回復グミを扱った自販機など。

 わしらは一つのテーブルに掛けた。


「中ボスだったんだね」

「ここは8層耕造だと言われてたのに,まだ4層目だと気づくべきでござった」

「御意」

「あほちゃあうん」

「誰も気づかんかったんやけん,もーえーでぇー。それよか魔力回復に時間掛けさせて」

「MPポーション飲んだらええやん」

「飲み過ぎて,こんなになっとぉ」


 わしはぷっくり膨らんだ腹を見せた。


「おおっロリイカ腹っす」

「眼福 眼福」


 そしていつ出したのかハリセンでわしの後頭部をはたきながら「はよしまいっ!」と宣わくミィさま。


「ぐてっ」

 やられたらやり返す。わしはミィに反撃する。しかし力も早さもミィが上なんだよな。返り討ちにあってテーブルに頬を当ててひくひくするわし。


「ところでさあ,フードコートからお取り寄せできるって」

「3時には少し早い出ござるが各方,ティータイムとするでござらぬか」

「同意」

「チョコパフェ」

「フライングはダメ。じゃあ改めて注文をとるから,魔石も用意してね」


 3人の注文を訊き,カウンターの上によじ登ってスタッフコールをする。「スタッフー! スタッフー!」じゃなくて注文用のインターフォンだ。

 呼び出しブザーを押ししばらくして返ってきたのは,しわがれた高い声だった。

 初めての利用だと告げ注文を言い魔石を投入口に入れると,現世(リアルワールドの省略形だよ)で見た呼び出し端末みたいなのと,ポイントカードだ。


 それを掴むとわしはテーブルに戻った。


 ここまでお読みいただき,ありがとうございます。


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