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A-to-Zombie!  作者: 時流話説
6/50

海老沢譲司 3

周防(すおう)さん」


サッカー部部室。

その密閉空間で、蛍光灯もつけずに、海老沢は尋ねた。

闇の中で、スマートフォンの灯りだけが頼りである。

閉じこもっていた先客の女子生徒によびかけた。


「海老沢くん………?」


「周防さん、同じクラスの周防恵さんだよね」


隣の席になったこともあるので記憶だけはしていた。

大人しそうな普通の女子生徒だという印象で、今はいつも以上に、黙り込んでいた。

それでも声を上げようとしていた。


「ええ―――あの、『あの人たち』は来ないの?」


彼女は震えながら言う。

あの人たち。

この高校の生徒。男子生徒、女子生徒、先生たち。


「みんな、来ないの?もう」


あの人たち。

みんな―――だった、もの。

みんなだった者。


「来ないよ。鍵も―――閉めたから」


このサッカー部部室のドアは一つしかない。

底のドアは閉めたはずだが、もう一度、ドアノブを握る。

鍵を指でなぞり―――、確認する。

外からこじ開けようとするものは―――今は、いない。

どこかに行ったのだろうか。

どこかの誰かを襲いに行ったのだろう。


「もう大丈夫だ。周防さんは大丈夫?怪我はない―――?」


気遣うようなことを、会話の流れで言ってから、ひやりとする海老沢。

怪我をしていないか、聞いた。

もし彼女が―――周防 恵(すおうめぐみ)が、怪我をしていたら。

その場合は―――?

いや、今はそんな様子に見えなかった。


『この事態』が、どうして広まっているのか。

どうしてこの騒ぎが大きくなっていったのか、彼は、うっすらとだが、理解していた。

だが信じたくはなかった。


どうやって広まっていったのか。

僕はさっきまで走りながら、不可解な光景を見た。


あいつらが人に、集まって―――生徒に集まって、群がって。

生徒が噛みつかれる。

複数人に噛みつかれた生徒は叫びながら助けを求めるが、覆いかぶされている。


覆いかぶさっていた数人が、剝がれて―――離れて。

しばらくしてから被害者が立ち上がるのである。

それは―――あれは。

生まれ変わったのか、別の生き物になったかのように叫ぶことを知らず、呻きながらゆっくりと歩きだす。

あいつらの仲間入りを果たすのだ。



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