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A-to-Zombie!  作者: 時流話説
4/50

雀荘にて 1

雀荘の店内の壁には、煙草(たばこ)の煙の臭いが染みついていた。

非常用ライトが机の上に置かれ、蝋燭のようなほのかな灯りを生み出していた。


カーテンを閉め切った部屋の中で、卓を叩く音が聞こえる。

(はい)が卓を叩き、その音が部屋に響いた。

牌は八萬(はちまん)だった。


対面の男が、ぴくりと反応するのに、さらに言葉を付け足す大柄な男。


「『ロン』で―――2600だ。ほれ、ほれ」


「あぁ~」


「まぁ、そうくるか」


「うん、うん………」


部屋では、四人の人間が深緑色の机を囲んでいた。

麻雀(マージャン)

麻雀(マージャン)である。

四人はその盤上遊戯の最中だが、和了(あがり)を決めた竹部(たけべ)の声色に、覇気がない。

その理由は和了(あがり)で入った点数が低いからではなかった。


「裏が乗ってないか!乗ってないな、なら三(ちゃく)だわ、俺三位ぃ~」


「竹部ぇ………お前、負けるってわかってるならその点数で上がるなよ」


檜垣(ひがき)がぼやく。


「いやぁ、点差を見ろよこれを、つまり(うら)が乗っていたとしたらだ―――、二着になってたんだよ………二位二位(にいにい)


「もう一回、もう一回だ………」


じゃら、と手で牌を掻き始める檜垣(ひがき)


「だから―――三人麻雀(サンマ)にしようって言ったじゃないか、それならお前を()ばせる」


「馬鹿。三人麻雀(サンマ)なんてもんは、馬鹿………。麻雀(マージャン)じゃない、アレは邪道………ババ抜きと七並べくらい、違うもんだ」


「………どっちが、どっち」


陰鬱に言ったのが帯金(おびがね)

この中では一番小柄な男だが、決して声まで小さくないはずだ―――本来ならば。

今は、状況のため、声量抑えているが。

状況―――異常になってしまった、状況。


「さぁてね―――それより」


言いながら、立ち上がる逢野(おうの)

身体は軽快に、卓が積み重ねられて山になっている、部屋の隅に向かう。

麻雀卓が、積み上げられていた―――暗くて見えにくいが、五つくらい集めれば、それをすべて窓のあたりに積み重ねれば―――とりあえず『持つ』だろう。

持つというよりも耐える、と言った方がいいだろうか。



この雀荘の出入り口は厳重であった。

窓も、ちゃんと、それぞれ、施錠して塞いである。

積み上げた机、麻雀の卓………それらの付近には、牌が転がっていた。

取りこぼしだ………拾い上げる。

赤い文字の「中」(チュン)だ。


窓の隙間は、カーテンで仕切られているのでわずかだった―――だいたいの隙間は塞いであるが、まったく見えないのはいただけない。

外の様子をこれからも知らなければならない、それと同時に、外の様子を見に行くのも禁物だった。

外出は出来ない。



カーテンを少しずらすと、そこから道路が見えた。

道路と、こびり付いた血痕が見えた。


見えている範囲は狭かった―――しかし。

町全体の状況が変わったことも、推測できた。

何かそう、『事件』が起きていると。


「それよりも――――で、どうするよ。『あいつら』はもう行ったみたいだがな」


逢野のつぶやきに、すぐに答える者は、いなかった。



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