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A-to-Zombie!  作者: 時流話説
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病院へ 2

その日の夜は、雀荘で過ごした。

月明かりがあるので、全く完全に暗闇な、夜ではなかった。

十五夜お月様―――の季節である。

布団ではなく、雀荘のクッションや絨毯の上で寝ながら、呟くように、話をする。


「―――特殊部隊なんかでは、無い」


(かし)と呼ばれた、名乗った男。

防護服を今は外した、男が呟いた。

我々は特殊部隊などではないと。


「私たちは―――生存者を探している、もちろんそれはそうだ―――しかし私はただの製薬会社の職員で―――特殊部隊のような、特殊部隊と言えるほどの―――戦闘訓練は受けていない」


説明をする。

だから特殊部隊という言い方はよしてくれ、と言われる。

俺はそれを聞いて、どう反応すればいいかわからなかったが、防護服の二人のいう、単なる事実らしかった。

彼ら防護服組二人は弱音を吐いた―――特に隠しもせず。

随分昼間に疲れたらしく、無理をしたらしく、もう寝る―――と、それきりだった。


雀荘組はうるさく声を上げなかったが、話は細々と続けた。

雑談では、無いと思う。

この状況を切り抜けるかのような、それは会議。

明日どうするかの作戦会議は、眠りに落ちる直前まで続くこととなる。


「逢野が持って帰った少し話を聞くに、どうやらパターンがあるらしい………」


おそらくは、伝染病―――ウイルスが原因だろう。

今起こっている事件は、病気なのだ。

原因は色々と―――細菌、ウイルス、真菌(カビ)、あるいは―――寄生虫っていう筋もあるが。

極めて規模が大きいが、病気が蔓延しているだけだ、という。

なんにせよ専門家らしき人と出会えて接触出来て、心強さはある。

心強いというほどではないが、何かあったときに薬とか、何か相談には乗ってくれるのではないか、この状況ならば。


「パターン?」


「ああ」


竹部が言う。


「外を歩いた結果、あいつらだけじゃあ、無かったんだろう―――そのウイルスで動いている奴以外だ。死体があったんだろう」


「………ああ、あったな」


たくさん見た、その横を歩き、過ぎ去ったのは事実だ。


「ああ………とりあえずパターン分けしよう………まず、パターンA(エー)


「それ―――やってもいいが、意味あるのか?襲われた時にどうするか考えたほうがよくないか」


「それはそうだが、もうやっただろう―――逃げるしかない―――つまりパターンAは、『あいつら』だ」


パターンA。


「お前が外出して、外を見て―――できる事が増えた。だからもう少し、この―――なんだ、『事件』を考えるぞ、整理しよう。これは感染者がまず―――噛まれて。噛まれて死んで、でも歩き出す場合だ。『歩く死体』になるパターンがAだ」


「パターンA………それと、それでもう一つは?」


「パターンB(ビー)は―――死ぬ。動かなくなって、文字通り、死ぬ―――普通に死ぬパターンだ」


ちなみに俺は死ぬならパターンBがいい、と帯金は付け足した………別に聞いてもいないが。


「このウイルスの騒ぎは、パターンAかBによって………」


「Aトゥ………『あいつら』」


A-To-病気………とか、眠そうに呟く帯金。

俺はそれを―――面白くもない冗談を聞くような、反応に困る顔をして聞いていた。

確かに、呻いて歩くあいつらと、横たわったままの死体とがあって、パターンはあるのは事実だ。

だが、何が両者を分けているのか―――老若男女、様々なあいつらと、死体とがあった。

見た目では、少なくとも見た目ではパターンがわかれないと思うのだが………。

そもそもそれぞれ別のウイルスという話も有り得る。

二種類以上のウイルスが流行っているなど、考えたくもない話であるが―――。


インフルエンザウイルスにもA型、B型、C型ウイルスがあり、それぞれ違うが、A型が一番症状が重いらしく、B、C型と軽くなるらしい。


「なあ、専門家さんよ―――まだ寝ていなかったらあんたも何か返事してくれ」


声をかけて、ややあって、暗闇から声が聞こえた。


「―――致死率、それ自体は………珍しくもないわ、必ずかかるわけではないし」


ウイルスの、その感染は絶対ではない。


「発症して致死率が百パーセントのウイルスではない………というだけよ」


言われて、確かにこの現象は―――病気とみるならば、そうおかしなことではない、おかしな現象ではないと思う。


確実に死ぬような恐ろしい病気の方が珍しいのだろう。

パターンというより、身体の耐性の強さ、抵抗力のような話だけかもしれないが。

それでなくてよかった、と思うべきか―――いや、事態は良くないのだが。

どうなのか、知識が無いので深くは考えられないが、こういうのは確証が持てない。

あれも心配だ―――感染してからしばらく間を置くという、それで症状が出る―――そう、潜伏期間。

何にせよ―――個人差だ。

一人一人、違うらしい。


「『血液』は重要よ――――けれど、もう寝なさい」


これは血液を媒介に感染する―――極めてわかりやすい例だ、という。

この事件は、なんでそうなっているのか、つまり原因はわかった。

ウイルスによる感染症。

これがしっくりくる―――まあここまでひどい事態だとは想像つかなかったが。


それから眠りにつき、ちゃんと朝を迎えることができた。

だが翌日からの道のり、再びの外出が困難なのは、予想できたことだった。


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