表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A-to-Zombie!  作者: 時流話説
14/50

コンビニ 1

歩道を歩ききってコンビニエンスストアに入る前に、駐車場を横切る。

駐車場。

全国各地のコンビニの、多くがそうであるように―――このコンビニには駐車場が存在していた。

都会や駅の中では、そういうコンビニには、駐車場がないのかもしれないけれど。

とにかくたどり着いたこのコンビニには駐車場があり、死体があった。

顔はこちらを向いていないので、表情は窺えないが。


駐車場には、車が二台停まっていた。

一台はボンネットから前輪タイヤあたりが、血でべっとりと濡れていた。

それがさらに下―――アスファルトにまで水たまりじゃなく血だまりを作っていた。

もう一台は奥にあって、よく見えないが、新品には程遠いだろう。


コンビニは、そういえば前面がガラス張りなのだった。

中の様子が見える造りになっている。


電気は消えていた。

蛍光灯は消えていた。

しかし窓ガラスがあるからには、内部が見える。

黒い影が多かった。

人間がいるようだが、動かない。

アレも死体なのだろうか。

だとすれば―――そこを通って、飲み物を取ってくることはできる。

いい気分はしないが。


生臭い風が吹いた。

僕は左右を、後ろを、振り返る。


「………外にいる方が、マズいのか?」


コンビニ外にいて、コンビニの外の『あいつら』に見つかったら―――そう思うと、足早に、

入るしかなかった。

あの部室棟から出た以上、どこにいようが安全ではない。

三百六十度、どこからでも来るかもしれない。

そうなったら昨日と同じ、やることは走るしかない。

ええい、なるようになれ。


「走って逃げることは―――出来る、はず」


そう、いざとなったら走って逃げることは、出来る。できた。

昨日は出来た。

経験がある。

僕は部室棟までたどり着いたのだ。


いつもならば自動ドアが音を立てて開く。

だが今回、自動ドアが動かない。

開いてある状態で―――動かない。

二人の人間が、転がってドアの可動域上に、寝そべっていた。

一人は………一体、だろうか………シャツが胸のあたりまで捲くれ上がっている男だ。

女だったら多少は目の保養になるだろうか、この死体。


ぴくりとも動かない。

寝ているだけか、あるいは死んでいるのか。


ごくり、と僕は喉を鳴らし、唾を飲もうとしたが、喉が渇き、ひりついていて、危うく()せそうになった。

それでしびれを切らし―――それがきっかけかもしれない。

が、時間というものは有限だと悟ったのかもしれないが、とにかく僕は転がっている二体のの、おそらく当分動かない他人を、乗り越える。

足で跨いで進む。


「水を、水を………!」


コンビニの中は腐臭が強かった。

ドリンク類がレジ前の床に散乱していた。

落ちているものが多かった。

僕は転ばないように注意しながら、コンビニの中を歩いていく―――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ