表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A-to-Zombie!  作者: 時流話説
10/50

雀荘にて 3


雀荘内にいる男たちは、スマートフォンをいじっていた。

雀荘内にいるのか、それとも果たして取り残されたのかは、まだ確定していない。


「―――で、誰か、無いのか」


「ない、とは?」


「アレだよ、連絡取れたの?」


「………お前はどうなんだよ」


言われて、黙ったのが帯金。

檜垣(ひがき)は喋りつづけ、責め立てる側だ。

しかしながら、彼も冷や汗をかいていた。

近親者や友人と連絡が取れない―――そしていくつかの方法を試して、それがまともに機能しなかったところである。


「まず『ケーブル』がつながらない」


『ケーブル』は近年利用率トップのコミュニケーションアプリで、特に若者の間では、知らないものはいないほどの浸透率だった。


「入れない―――インできない。アプリケーションごと停止になっているから」


「………他にあるだろ………檜垣、『フェイスアルバム』は、どうなんだよ。俺はやってねえから、アレ」


それも世界的に有名なSNSサイトであった。


「打ち込めねーんだよ。なんか書いてあるけど」


濃紺色の画面が、タッチしても動かない。


「―――なんか、とはなんだよ」


「なんかっていうのは―――ええと、なになに、『不適切な暴行動画が大量にアップロードされたため―――』なんたら、とか」


そのサイトは停止していた。


「じゃ、じゃあ『ウィスパー』はどうなんだ」


「止まってるよ、それも停止」


「なんで停止してる………それ?」


「知らねぇよ開発者に聞けよ!」


「―――落ち着け」


竹部が言い、前へ進みだす。

頭に血が上って来ている檜垣が、このままではここで暴行動画を起こしそうだったため、口を挟む。

口をはさんだ彼もスマートフォンを見ている。

死んだような目で。


「俺見てたぜ―――『ウィスパー』が止まってない時」


帯金と檜垣が、少し息を呑み、姿勢を正す。


「え、お前の携帯は『大丈夫』なのか?」


「いいや―――そういう訳ではなく、『前』、さっきってこと―――」


近くにあった椅子にのろのろと歩き、背を預けて、ぎしり、と鳴らす竹部。


雀荘(ここ)に来る前な―――タイムラインに流れてたんだ。『あいつら』が襲ってるところの動画がバーッと流れて………それも一人や二人じゃない」


一つや二つの動画ではない。


「んで―――あとは見てない」


「「はぁ?」」


「駅に着いたからお前たちと遊ぶために急いできたんだよ、で、麻雀やってた」


帯金と檜垣が無表情で竹部を見ている。


「―――だいたい夕方からだな、まぁそれがだいたい夕方の事」


逢野が言う。

だいたい夕方から―――この、現象、騒ぎ、いや暴動が起こり始めた。


「もう携帯、切っておけ、電池が無駄だから」


そう言われて、顔を見合わせる帯金と檜垣。


「いや………で、でも助けとか………俺、(かぁ)ちゃん………連絡入れないと」


「繋がらないんだろ?」


今は。


「警察と救急車にもかけた。繋がらない。今はとっておけ」


まぁ、仮につながっても―――警察のパトカーが走ってここまで来られるかどうかも厳しいところだろう、と逢野は言う。


親指でスマートフォンの電源ボタンを押しっぱなしにしていた。

少し間をおいて、逢野の持っていた真っ白な画面が、黒くなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ