プロローグ5
少し遅れてしまいました。それではどうぞ
死後の世界……ということは俺は……死んだのか……?
「と、言っても貴方はまだ死んでいないですね」
「じゃあ、なんで俺はここに居るんだ?死んで無いんだったら、ここいない筈だ……なのに俺はここに居る……まさか、死にかけているからここに居るって事か…?」
「それも違いますね。実は私は向こうの世界………貴方の元々住んでいた場所から、人を他の世界に送る事を生業としています」
人を他の世界に送る仕事……?それってつまり……もしかしてだが、最近行方不明が多いのはそう言う事なのか……?
「他の世界は今衰退を迎えています。なら、ある程度栄えている場所から連れて来る他ありません。そして、それに貴方は選ばれました」
「選ばれたって……何を基準に……」
そう言うと店員らしき人は何かの紙を片手に持ち始めた。
「此処に来れたのが選ばれた証拠……ってことになってます」
「……つまり、此処に来れるのは偶然ってのもあるのか…」
「ええ、そういう事です。しかし、別の世界に移動できる権利があります」
店員らしき人物はそう言うと持っている紙を何枚かを、レジに置いた。
「そして、その者たちはこの中から特殊な力を手に入れることができます。力と言っても力以外も持ち込めますが」
「……力以外というと人とかか……?」
「はい、人、物、能力………そして病気を治すこともできます」
その言葉を聞いて裕也の顔が強張った。
(こいつは、俺が余命宣告を受けているの知ってるのか……?)
そう裕也は思った。
「しかし、貴方の親は貴方と同じ病気で亡くなってますね。ご愁傷様です」
如何してそれを……とついつい考えてしまう裕也だった。
裕也の両親も裕也と同様に病気にかかっていた。
「あなたを守るために身を挺して隔離施設に移動……そして、死亡を確認……しかし、貴方の親の体を調べつくしても病原体などは見つからず、対抗策などないと言われている……成程、あちらの世界では対処法はないと」
「もしかして、向こうの世界では治す方法があるのか!?」
裕也は身を乗り出して店員らしき人に突っかかる様に近づく。
そして店員は、その言葉を肯定した。
「ええ、きっちり後遺症の無い程に治療されますよ……さあ、向こうの世界に行きますか?それとも、貴方の世界で死を待ちますか?」
「……特殊な力ってのは、向こうの世界に行かないともらえないのか?」
「はい、貴方の世界には不要なものでしょう?」
「……この病気治すのでもダメか?」
「ダメです」
「……」
そう言われると裕也は、悩むそぶりをする。
そして裕也は口を開く。
「……向こうの世界って言うのは、どんな世界なんだ……?」
「剣と魔法のファンタジーな世界です。この紙には、その世界で役に立つものばかりです……そして、貴方には4つ特殊な力を差し上げます……どうです?行きたくなりました?」
裕也は悩んだ……まだ俺は死にたくないという意志と、自分の親の死んだ町で死にたいというわずかな思いが交差する……そして裕也は答えを出した。
「……向こうの世界に行く……」
「了承しました。では此方からお選びください」
店員らしき人はレジに置いた紙を裕也の近くに押し付ける。
しかし、裕也はその紙を見ずに言った。
「……この病気を治すことと、全部の魔法を習得出来て、魔法制作が出来る才能、なんでも製作できる才能…
…あと一つ……」
「ん?どうしましたか?」
……これは願っていいのか?この願いは……あいつらの人生を壊す。
それでもいいのか…?
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願ってもいい。叶ってもいい願いだ。
ほら、口に出して願いを叶えようぜ。
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どこからか声が聞こえる、その甘い声……魅力的で必ずかなえたいという気持ちになる。
そして言ってしまった。
「……人を3人巻き込んでほしい…橋崎徳伊、崎下彩花、香山美亜」
「人を三人ですか……これで特殊な力……いえ、特典をあなたに与えます」
言ってしまった。
そんな後悔が胸の内を染める。
「しかし、その人たちも酷ですね……何の力を持たずに異世界に送られるんですから」
「な!?」
「おや、想像してなかったんですか?当たり前でしょう?」
「…取り消しは出来るか?」
「何を言うんですか……そんなに人生が甘いとでも?」
「……」
裕也は全くの盲点だったと思った。
そして、店員の優しそうな顔が少し不気味に思えた。
「しかし、貴方が私の要求に従ってくれれば、貴方が呼ぶ人たちにも力をあげます……あなたにももう少しの力を差し上げます……如何しますか?」
「……従うその要求ってなんだ?」
裕也は従うことにした……関係ない友人を巻き込んだ上に、もし何かあったら守り切れないからである。
「そう言ってくれてありがたいです…では私の要求は異世界に行った人達……世界に貢献できない不要な方達を、殺してきてください」
「なっ……そんなのできる訳ないだろ…」
「なら断りますか?私は一向に構いません……困るのは貴方が、巻き込んだ人たちなのですから」
裕也は迷った……しかし、やっぱりというべきか裕也はこう答えるしかなかった。
「わかった……その要求を呑む…」
その時見えた店員らしき人の顔は、ひどく不気味に見えた。