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依頼達成

母親のぬくもりとはどういう物だったか、朧気にしか覚えていない。

父親の不器用ながらの優しさのようなものも、朧気だ。

大事な事だったはずのに……微かな新たなぬくもりで、軽く消えてしまった温もり。

強くて、多芸な新たな父。

強くて武道に長けた新たな母。

自分を生んでくれた母親。

自分の面倒を見てくれた父親。

異世界に来てから短い間のはずなのに、元の世界の事をだんだん忘れてしまっている。

元の世界の恋しさ……大事だと思える家族のいるこの世界。

元の世界の自分は捨てなくてはいけない。

もう、そう決意してしまった。

あの悪魔のささやきを聞いてしまった日……その時やっぱり、乗るべきではなかったとも思える。

大事だった記憶も、大事だった家族も……全てなくなってしまっては遅い。

日記を取ったとしてもきっと、その存在を忘れてしまうのではないかと思えてしまえる。

それ程確信めいた感情を抱いていた。

悪魔が何をしたのかはわからない、しかし……怖いと思っても悪くないだろう。

元の世界の事を忘れてしまったら、きっと……次の代償のような物を担うだろう。

もし、それがこの世界の関わってきた人物の事を忘れてしまったら……自分には……いったい何が残るのだろうか……。


「………」


何処からともなく声が聞こえてきた。

その声の方向に向かって虚ろながら手を伸ばす……。

_______________________

誰かの手に触れたそれによって、裕也は目を覚ました。

触れた手の相手は、やっぱりというかリンラだった。

リンラの方を見てみると、優しそうな顔をして固まっていた。

その様子に疑問を感じながら、リンラの手のぬくもりを感じていた。

しかし、しばらくしてあることに気が付いた。

なんで、『こんなにリンラが近くにいるんだ?』と。

それの理由はすぐに理解できた。

何故なら、寝ていた場所がリンラの目の前…よく言えば、膝の近くで寝ていたからだ。

裕也は気にせずにしばらく、目の前で過ごした……少ししたら裕也が暴れ始めるのは目に見える出来事である。

___________________________


「まったく……なんで、ああいう事になったんだ…」


裕也は朝食を食べて少し不機嫌気味にリンラに向かって質問した。

その様子に怒らせちゃったかなと、少し後悔したような表情をしたリンラが答えた。


「えーと……気が付いたらあんな感じに……もしかしなくても怒ってる?」


そういわれた裕也は、少し考えるような表情をして言った。


「いや……怒ってるつもりはなかったんだが…怒ってるように見えたのか?」

「うん……頭撫でたこと怒ってるのかなって」

「俺は怒ってないぞ……ん?頭撫でられてたのか?」

「え……知ってて私の手を握ったんじゃないの…?」


裕也が知らなかった事が露見した瞬間である。

そのあと、裕也はリンラに向かってさんざん質問攻めした。

因みに裕也が不機嫌だった理由は、結婚前の女子が気安く寝てる男に触れたらダメな気がしたからという事だった。

……もう一緒に寝てる癖に何言ってんだって話だが。

そして、この二人はすっかり忘れていたが、依頼どうですか?と町で出会ったギルドの受付の人に聞かれて、どうするか悩んでリンラの姿があった。

_____________________________

それから数日後……裕也が依頼から解放される日が来た。

依頼金をリンラは渡そうとしたが、裕也はその依頼金をリンラに返した。

その行動にリンラは驚いたが、裕也が『依頼料は十分に貰ってるから大丈夫だ』といって、帰っていった。

その背中に向かってリンラが言った。


「また会えるよね?」と。

裕也は言葉を返すことはなく、軽く手を挙げて軽く振った。

その姿を見て、少し嬉しそうに笑うリンラだった。

裕也は帰った…この世界の家族の元へ。

そんな裕也に向けられたのは怒号と、心配したという言葉だった。

それを聞いた裕也は……

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