救助
沈んで行ったリソエールに手を伸ばす裕也、しかし距離を見誤って手が届かない。
そんな事をしている内に、リソエールはドンドン沈んで行く。
(何か……何か無いのか!)
裕也の脳裏に浮かんだのは魔法だった。
しかし、人を助けれる魔法は無かった。
人を下手したら殺してしまう……そんな魔法しかなかった。
泳いで助けられたら良いのだが、裕也は泳いだ事が無い。
浮かぶ事は出来ても泳ぐ事は出来ない。
(……助けられないのか…?俺は……何も出来ないのか?)
悔しさで拳を強く握る、その手からは軽く血が出ている。
しかし、あのプロテインの悪魔の言葉を思い出した。
(無いなら作れば良い……しかし……俺に出来るのか?そう言えば、メイリが言ってたな…)
修行中に、メイリに裕也はこんな事を言われていた。
『あんたは、根性はあるのよ…でも、諦めるのが早い。だから、私に勝とうって意思が見当たらない…勝とうって根性はあっても、意思が無いんじゃそんなのいつまで経っても私には勝てないわよ』
その言葉を聞いた時、裕也は何がなんでも勝ってやると思った。
しかし、その後も勝てはしなかった。
何故、その言葉を今思い出したのかはわからない……しかし。
(根性はあるけど、意思がない……本当だな。助けようと思うがその意思がない……だが、今は!!)
心の底からリソエールを助けたい!!
その心が、胸の内を占める。
腕に青白い光が輝く、裕也の頭には色々な魔法陣が流れていた。
そして、魔法陣の構成を分解、解析、創造して行く。
そうして、完成した。
「間に合え!」
作られた魔法陣から出て来たのは、人一人を包み込めそうなマントのような物。
沈んで行くリソエールを包み込み陸に上げる。
そうして、裕也も陸に上がり呼吸を確認する。
呼吸は微かながらあった。
心臓マッサージを行う……そして、人工呼吸を行う。
(生きろ!生きろ!!)
そう願いながら、人体蘇生を行う。
水を吐き出し、息をするリソエール。
その様子にほっとしながら、リソエールを抱える。
その時に考えたのは、やけに軽いなっと思っただけだった。
_______________
裕也は宿屋に戻り、リソエールを寝かせる。
そして、裕也はシャワーを浴びる。
冷めた体を暖めないと、風邪を引くと思ったからだ。
しかし、リソエールの事を考えるとリソエールの体も暖めないとダメだなと思った。
なので、桶にお湯を入れタオルを暖める。
その前に、忍びないがリソエールの服を脱がす。
(男の服を脱がすのは少し嫌だな……)
その時に何やら硬いものに手が触れる。
鉄の板の様な……とにかく硬いものだった。
とりあえず、ローブを脱がせると白い服が見えた。
そして、鉄の服の様な物があった。
「……なんだこれ?」
そう言いながら、鉄の服を脱がせる。
すると、結構豊かな丘が二つ姿を現わす。
その光景を見て裕也は……。
(……リソエール……女だったのか)
そう考えつつ、リソエールの体を暖かいタオルで拭く。
完全に拭き、リソエールに毛布を被せる。
裕也はズボンを履いて、リソエールの寝ているベッドに倒れこむ。
「流石に……疲れた」
1日で構築した魔法陣を直さま使った為、魔法陣の慣れが無くそして、構築の際に無駄な工程を経た魔法陣の為、普段よりも魔力を使ったからだ。
「人を助ける為とは言え、無茶したな……取り敢えず、寝るか」
そう言って、裕也は眠りに就いた……リソエールが寝ているベッドで。




