案内
リソエールに連れてこられて最初に来た場所は、酒場だった。
リソエールは扉を開けて、カウンターに席をついた。
裕也もカウンターの席についた。
勿論のことながら、リソエールの隣に座っている。
「ここのマスターのスパゲティが美味しくてね……取り敢えずマスター、スパゲティ二つお願いするよ」
「あいよ」
そう言って返事したマスターは厨房の方に回り、何かを茹でる音が聞こえて来た。
裕也はリソエールに言った。
「……普通こう言う酒場ってのは、夜辺りに来るもんじゃねぇの?」
「夜だとね……人が多くて」
この酒場は昼あたりの為か、人は全くと言って良いほどいない。
すると、厨房にいるマスターが口を挟んで来た。
「昼辺りにこんなに空いてる方が気楽で良い。逆に夕方辺りだと、人多くてやってられないよ……」
そう言って来るマスターの声は何処となく疲れている。
それに乾いた笑いしか出来ないリソエール。
しかし、裕也はこう言った。
「でもよ、それのおかげで儲かってんだろ?」
「まぁな〜…忙しくなるのは仕方ないか……」
「手伝えるなら手伝ってやりてぇよ」
「手伝いは……今の所は要らないな……夕方になったらバイト達が来るからまぁ、まだ楽は出来る方だな」
そう言って、マスターが厨房から二つの皿を持って来た。
出来立てホヤホヤで、湯気がちゃんと立っている。
そして、綺麗に盛り付けられたスパゲティに粉チーズの様なものが掛けられている。
「はいよ、お待ちどうさん」
「ありがとうございます、マスター」
「サンキューマスター」
「……俺は夜の準備しとくから、邪魔するなよ」
そう言うと、マスターはカウンターでグラスを磨いていた。
裕也はフォークにパスタを巻いて食べるが、リソエールは、フォークにパスタを巻いて長さの半分くらいの所まで持って行って、フォークに完全に巻き食べる。
そして裕也は呟いた。
「結構いけるな」
「でしょ?だから、僕のお気に入りなんだ」
そう言って、美味しいそうに食べる裕也達。
そんな姿を見て、穏やかな笑みを浮かべるマスター。
そうして、裕也達は食べきった。
「ご馳走さん、美味しかったよ。また来たいぐらいだ」
「僕はいつも通り、また来ますね」
「おう……また来いよ…勿論忙しく無い時にな」
そのマスターの言葉を最後に、裕也達は店から出て行った。
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「いや〜それにしても美味しかったな」
「そうでしょう?夜あたりに行けないのが残念だよ」
そう言って、本当に残念そうな顔をするリソエール。
そして、少し疑問になっていた事をリソエールに聞いた。
「何で夜には行けないんだ?何か不都合でも?」
そう裕也が聞くと、リソエールは慌てたように言った。
「ちょっと、人が多いのが苦手で……ユウヤは大丈夫なんだね」
「ああ……大丈夫だ」
裕也は軽く、お前が此処まで引っ張って来たんだろ?っと思いつつも返事した。
次に向かったのは、船が置いてある所だった。
その船が置いてある所に、水に向かって伸びている階段があった。
その階段に向かって行くリソエールと裕也だった……だが、しかし此処でトラブルに見舞われる。
「此処水が綺麗なんだ〜……わ!?」
リソエールが、足を滑らせ階段から落ち様としていた。
それを見た裕也は条件反射的に体が動いた。
裕也はリソエールを胸に抱き、リソエールに衝撃が行きにくいようにするが、リソエールの背中に一回段差がぶつかるそして、しばらく階段を転げ落ち水深が深い所に体が落ちる。
水に落ちた時に、リソエールを離してしまう裕也。
かろうじて、意識は保っていた。
水面から顔を出す裕也、しかしリソエールは浮かんで来ない。
まさかと思い、水面に顔を突っ込む裕也。
案の定、リソエールは目を瞑ってドンドン沈んで行った。




