プロローグ2
教室から叫び声が聞こえた3分後、顔が少し腫れて、足を軽く引きずった徳伊が教室から出てきた。
「よっす、お疲れさん」
「ものすごく殴られたり蹴られたりした…」
「……自業自得だよ、変態」
「相変わらず、変態発言懲りないね」
「それが俺です!」
「……」
「美亜、その生ごみを見る目で、裕也を見るのやめて差し上げろ」
「……は?俺巻き込むなよ」
徳伊が出た後に、美亜と彩花も教室から出てきた。
そういって、たわいない事を言ってふざけ合う集団、そんな時に一人の教師が近づいてきた。
「おーい、お前ら早く下校しろよ?お前らの担任なんだから、俺が怒られるんだぞ…」
その教師は、よれよれのシャツを着ていて、少しけだるげに裕也達四人衆の近くに行った。
「はーい、そういえば運動部もう活動してるんですか?」
「あ?橋崎ならともかく、結川がそんなことを言うとは…」
「せんせー、橋崎ならともかくって何ですか!」
「だってお前……変態だろ?」
「せんせーにまで変態って言われた!?」
「……自業自得」
「だね」
先生は少し外を見て、こう答えた。
「やってるみたいだな、暑い中よくやれるな~、さぁ帰れ帰れ」
そう言われて、教室の扉を締めて帰ろうとする面々、しかし帰れといった教師が裕也を呼び止めた。
「あ、結川は少し残れ。教室はまだ使うから、締めなくていいぞ」
「…徳伊じゃなく俺が残らされるとは…」
「おい、それどういうことだ?ん?」
「どういうことって……Mr.問題児だろ?」
「でも、裕也が残れって言われるの珍しいよね、徳伊じゃあるまいし」
「……どうでもいいし、暑いから帰りたい…あ、でも彩花に同意」
「ひでぇ!!」
「「(……)自業自得」」
「はもらなくても……下駄箱で待ってるぞ」
「了解」
そう言って、徳伊たちは離れていった。
そして、徳伊たちの姿が見えなくなった後、教師は教室の中に裕也を呼んで中に入った。
裕也は、普通に席に着く、そしてやたらと真面目な顔をした教師の顔を見る。
「お前を呼び止めた理由……わかってるな?」
「……問題行動も、問題発言もしてない筈なんですけどね」
「結川」
「あ、もしかして徳伊があんなことを言ってるから、俺にもそういう疑惑が付いてるとかですか?」
「……結川」
「いじめとかはされてないし、大丈夫ですよ」
「結川!!」
教師は裕也が座っている席の机を叩いた。
その行動を見て、どうでもいいような顔をする裕也。
「お前わかってるんだろ?目を逸らしててもダメだ、お前の事はちゃんと俺の耳に入ってる」
「……わかってるんなら、呼び止める必要ないですよね?」
「お前の事だ、お前がちゃんと言え…」
「……俺の病気の事ですよね?大丈夫ですよ、ちょっとくらい立ちくらみするだけですよ」
「嘘をつくな、お前余命宣告受けてるんだろ?俺はそこまで、聞いてなかったからな、そこを教えてもらおうと」
「……」
裕也は、この教師に嘘をつこうとした、しかしほんの僅かな命といわれている。
気の持ちようで、余命宣告より長く生きれる可能性がある。
しかし、伸びようのない宣告されているため伸ばせないと思っている。
裕也は恐る恐る、言った。
「……2週間です」
「………」
唖然としたように裕也をみる教師そして、へらへらした様子でその教師を見る裕也。
「笑ってる場合か!!お前……わかってるのか!?2週間だぞ!?まさか……結川今まで隠してたのか?!」
「隠してないですよ。元々、一ヶ月前に宣告されてたのは3か月くらいだったんですから」
「じゃあ……なんで……そんなに短くなるんだ…取りあえず、明日からはどうするんだ?」
「あ~……休むことにします」
「……そうか…元気でな」
「はい、先生も。では、さようなら」
「……」
そう言って裕也は軽手を振りながら、教室から出て行った。
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裕也の病気は今では珍しく全くと言っていいような、珍しい病気だった。
現代医療でもほとんど解決のしようがなく、自然に治るかどうかも怪しいといわれるほどに。
そして、その所為もあり余命の宣告もあやふやになり、推測のような感じで話すしかなかった。
きっと2週間も経たずに死んでしまうんだろうな、とまでに考えた裕也だった。