特訓
先ずは裕也がメイリに向かって、飛び蹴りを行う。
メイリはその足を掴み近くの地面に叩きつける。
裕也は軽く受け身を取るが、メイリに足を掴まれている為に、動けない。
しかし、捕まっている足は片足だけの為、捕まっていない方の片足を手に向かって、思いっきり蹴りを入れ少し出来た隙を見計らい、少し遠くに逃げる。
その様子を見たメイリは、面白そうに言った。
「運動神経は良いくせに筋肉は全く付いてない、なのにこんなに動けるって事は……魔法かしらね?」
「魔法……正解だな……」
そう言うと、メイリは裕也に近づいた。
そして裕也に向かって、拳を突き出した。
その拳を食らった裕也は、力がドンドン抜けて行く感覚がした。
そして、体が少しだけ……いや、だいぶと鈍くなった気がした。
「な……いったい何が……」
「貴方の魔力を使えなくしたのよ」
「は?……そんな訳……」
裕也は拳に魔力を貯めようとするが、魔力が溜まるどころか抜けていく感覚がした。
魔法陣を作ろうとするが、魔法陣が形成途中で崩れていった。
その様子を見た裕也は呟いた。
「……本当に使えなくなるとはな……」
「さて、貴方は今から走り込みよ私が良いと言うまで走りなさい」
「……マジで?」
「マジよ」
そう言って、裕也は町の外の森を走らされた。
しっかり、ヘイシの護衛はあったが魔力が切れる感覚では無く、全身から力が抜ける感覚がドンドンとしてくる。
その事に関して、裕也は考えていた。
(魔力が使えない訳じゃない……だが、魔法陣としての形成が出来ない。魔力の纏っている感覚がしない訳でもない、だが身体強化系には回せない……まるで水を入れたビニール袋に沢山の穴を開けてるみたいだ)
裕也が考えたのは、魔力の抜ける量が多いから使う魔力が無いと考えた。
しかし、裕也が考えるべき事は……。
「……これ、いつまで走るんだよ」
「ん〜、メイリのことだから……夜までじゃないか?」
その言葉を聞いて、少しはスタミナ制限しないとダメだなと思った。
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裕也は無事に夜まで走り、無事ヘイシ達の家に戻って来れた。
しかし、疲れが溜まり過ぎて自分の分の料理を作る気力が出なかったその為、メイリにご飯を作って貰った。
そのご飯は今まで食べた物より美味しかった。
美味いと凄く感心する程に美味しかった。
そして、用意された部屋に着いた瞬間ベッドに倒れ伏して眠った。
目が覚めると体の全身が物凄く痛かった。
「こんなの久し振りだな……物凄くいてぇ」
若干苦しみながら体を起こす。
体に手を触れ、全身の痛みを消そうとするが、その途中で思い出した。
「……魔法使えねぇじゃん…」
軽くお手上げ状態だったが、なんと無く回復魔法を使った。
すると、全身の痛みが引いて行き、下手したら魔法を使って居なかった時よりも体が軽く感じた。
「……物凄く軽くなった……1日でこんなに変わるもんなのか?」
そう呟きながら、ヘイシ達がいる部屋に移動した。
それからは、1ヶ月間ずっと走り回った。
魔法は朝の時だけしか使えず、回復すれば更に運動する。
筋肉が切れようが、回復出来るでしょう?と言われるだけだった。
そうして、裕也は魔法を使えずとも強靭な体を手に入れた。
もし、また魔力を身に纏う時は少しずつ体に慣らすようにやって行くと考えた。
……裕也は気が付いてなかった、体力や筋肉以外にもある物が物凄い成長を遂げている事に。
その事で、裕也がだいぶと苦労するのはまた別の話。




