家族
裕也はある程度豪華な食卓を囲んでいた。
裕也の他には、男性と女性が居て家族の様な雰囲気を醸し出す。
「いや〜、まさか俺たちに似てる奴が居るとはな……自分の顔程よくわかんねぇもんだな…」
そう言う男性……ヘイシはしみじみと言った様な感じで呟く。
それに同意する様に頷く女性……メイリ。
裕也に対する自己紹介は、食事をする前にした。
メイリは、ヘイシの奥さんで外では恥ずかしがって、ヘイシの事を『あんた』と言って居る。
ヘイシもメイリの事を『お前』と言っているが……これでも結婚15年目である。
「私だってビックリしたわよ……所で……ユウヤ……」
「…何ですかね」
「私達の息子に成らない?」
「ならねぇよ!まだ混乱してるのかよ……」
裕也は顔を軽く手で覆っているが、この会話を三回以上はしている。
どれだけ、息子にしたいんだよ…と思う裕也。
裕也も勿論のことながら、驚いている。
ヘイシ達を親に持ったつもりは無かったが、親の遺伝子を明らかに受け取っている様な人は、明らかにその親達の子であると思えるだろう。
それと同じ様に、それが他人だとしても、若干親として考えてしまう。
だが、やっぱり他人と考えれる。
それは親と過ごした記憶があるからだ。
例え、その記憶が薄くても……量が少ないからこそ、大切だと思える。
何処かに行った記憶……親の顔はもう忘れてしまった。
だけど……覚えている……覚えている……ちゃんと……覚えているんだ…。
そんな事を考える裕也、しかしヘイシ達の軽く笑うと少し家族と一緒に居るみたいに思える。
「……家族と過ごすのってどんな感じなんだろうな…」
そんな事を無意識に呟く。
それが聞こえたのか、ヘイシは笑いながら言った。
「んなの、無意識的に過ごしていりゃあ感じれる事だろ」
そう聞いた瞬間、裕也は少しだけだがそのぬくもりが欲しくなった。
自分には感じた事のないぬくもりを。
例え、手を伸ばしたとしても届かないであろうその望みを。
だが、もし裕也がヘイシ達の息子に成れば、届く望みである。
伸ばした手はその場所に届かない……だが、その先に居る人に手を引っ張って貰えばその場所には辿り着ける。
だから……こう返しても良いだろう。
「……俺がこの町にいる時だけなら……息子として扱ってくれても良いぜ……」
その言葉に、ニッとヘイシは笑いメイリとハイタッチしていた。
「んじゃあ!いただこうか」
「そうね……」
そう言って、ヘイシとメイリはご飯を食べ始める。
因みにご飯を作ったのはメイリである。
しかし、裕也は自分の分は自分で作った。
だが、いつも自分一人で食べている時よりも美味しい気がした。
「……いつも一人で食べてるより美味しい……」
「そりゃあ、みんなで食べているからだろうな」
「私も結構経験あるわ……まぁ、一人で食べるより、みんなで食べた方が美味しいって良く言うわよね」
「……そうなのか……あんまり、食べた事なかったから知らなかったよ」
そう言うと、裕也は若干優しそうな笑みを浮かべていた。
その様子を見て、微笑ましいと思うヘイシとメイリだった。
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ご飯を食べた裕也はメイリ達と共に、道場らしい所に居た。
メイリ曰く、「私の息子となる人は、強くなくちゃね」と言う事らしい、ヘイシ曰く「メイリは心配してんだよ……そういや、ユウヤ俺を父さんと言ってくれても良いぜ?」と言っていた。
因みに、父さんと呼ぶのは丁重に断った裕也。
ヘイシは審判、メイリが相手だった。
「……あれ?普通逆じゃね?」
「ははは〜俺、武術より武器使った訓練のが得意だからな…ま、俺より強いから安心しろ」
「良く言うわよ……武器使ったら誰にも負けない程強い癖に」
そう言って、少し構えるメイリ。
「んじゃあ、始め!」
ヘイシが合図すると同時に裕也は走り出した。




