異世界の街前。そして…
ヘイシに案内されて、森を抜けた。
そして着いたのは大きな城壁様なものがある場所だった。
高さ的にも、40mくらいはあるんじゃないかと裕也は推測する。
ヘイシは城門?の前に居る衛兵に声をかけた。
「よっす、お前ら元気にやってんな」
「あれ?ヘイシさん?第2種禁断系の魔物を討伐しに行ったんじゃ無いんですか?」
「終わって、帰ってきたところだ……あ、俺は何もやってないからな?」
「え……じゃあ、彼処に居る変な奴ですか?」
……変な奴で悪かったな。
そう裕也は思いながら、遠巻きで観察する。
「あーみえて、結構強いんだぞ?ヘビーベアーを傷一つも付けずに倒したからな」
「傷一つ……?それってどんな悪魔ですか?第2種禁断系の魔物を一瞬で絶命って……いや、もしかしたら武術の心得があってそれで……」
「動物系の武術の心得って、結構幅狭ぇけどな……一応、重要警戒に入れとくべきだ。しばらくはな」
裕也は観察する事を止めて、城壁の周りをグルグルと移動した。
その時に、二つの針が森の中から飛び出して来た。
その針を避け、飛んだきた先を警戒する。
すると、現れたのは二体の熊だった。
一体は氷が少し頰に付いた熊、もう一体は変化した体、そして体の節々から熱風を巻き起こして居る熊。
その熊達を見た瞬間衛兵は慌てだした。
「第1種禁断系の魔物?!しかも、第2種禁断系の魔物も!?」
「いや……第1種禁断系が二体だ……片方進化しかけてる」
「な!?今すぐ、ギルドに応援を要請して来ます!」
「頼んだ……流石に二体は手が折れる」
そう言って、衛兵は城壁の中に入っていった。
ヘイシは体の前に魔法陣を浮かべ、その中に手を入れ大きな大剣を取り出す。
そして裕也にこう言った。
「お前も手伝ってくれ……もし、倒せたらなんか奢るから……な?」
「……いや、片方俺の処理のミスが招いてるだろ……頰に氷が付いてる奴は俺に任せて欲しい……ケリをつける」
「おう……任せた」
そう言うと一斉に二手に分かれ、お互いの戦闘の邪魔にならない様な位置に移動する。
二体の熊は裕也を目で追っていたが、節々から熱風を巻き起こして居る熊に向かって、ヘイシがナイフを掠めさせる事で、目線をヘイシに向けさせる。
裕也はさっきと同様に駆け出し、熊に向かって蹴りを食らわせ、凍結魔法で行動を止めるつもりだった。
見事、体の一部を凍らせるが体から、熱が吹き出し解凍する。
一方ヘイシは、飛んでくる針を大剣で弾きながら、熊に近づき、頭部らしき部分に大剣を振り下ろすが、グニャリと衝撃を吸収する様な感覚を覚え、後ろに飛ぶ。
今の武器じゃダメかと思ったのか、裕也の方向を向くヘイシ。
裕也もヘイシの方向を向いていた。
裕也もヘイシ同様、打つ手があまり無かったからヘイシの方向を見たのだ。
互いに頷き、背中を合わせる。
「アレを使うぞ……ぶっつけ本番だから、タイミングがヤバイが」
「別に技みたいな奴じゃ無いだろ……ヘイシが言ってるのは」
「わかってんな……じゃあ、合わせろよ?」
「俺に言うな……あの熊達に言え」
そして、裕也達の求めたいた物が来た。
裕也達が待っていたのは、熊達の針だった。
針と言うには大きいが、この際どうでもよかった。
ヘイシは避けて大剣の峰で針を反対側の熊に飛ばす。
裕也は魔法で、弾きヘイシとは別の熊の方向に針を飛ばす。
針は見事、熊の皮を突き破り刺さる。
「……うっし、これでアレの倒す算段は付いた……後は各々倒すぞ……こっちが終わってそっちが終わってなかったら手伝うからな」
「……助かる……が、必要ないと思うぞ、それより俺より先に倒す事でも考えとけよ」
そう言うと、同時に自分の目標としていた熊に向かって走り出す。
裕也は考えていた、発熱の器官があるのならそれの根本を凍らせて倒そうと。
その為には、内側から凍らせる必要があった。
なので、ヘイシの方向を向いていた。
針の横に手を突っ込み、凍らせる魔法を可能な限り、全力でやる。
最初は熱かった体も直ぐに冷たくなった。
完全に凍らせる事を忘れない為に数秒はそのまま凍らせた。
ヘイシはニヤリと笑っていた。
裕也はまだまだ、荒削りな部分があるが後々はもっと凄い奴になると。
(もしも、裕也が望むのなら、俺が……いや、俺たちが指南してやる)
そう考えながら、熊に刺さった針に向かって、大剣を金槌の様に叩きつける。
完全に貫通した時、もう熊は絶命していた。
「呼んできました……よ?」
衛兵が戻って来た頃には全て終わっていた。
針が刺さって居る以外外傷のない熊。
何かが貫通した後のある熊、近くに血塗れの針が落ちて居る。
その様子を見て、衛兵と呼んで来た冒険者達は呆然としていた。




