異世界に上陸
森を適当な方向に進んで行く。
本来ダメなのだろうが、行く道が無いし、自衛の手段はちゃんとしているので熊などに出会っても、問題はない。
と思って居たが……。
「熊がいる……」
そう、大分と小声で呟いた。
流石異世界と言うか、熊が熊の形をして居ない。
熊の容姿はそのままなのだが、体中から針のような物があり、直に触れば間違いなく怪我をしそうな体をしている。
そして、気配察知能力も高いのか、こちらをジッと睨んでいる。
(声出したのがダメなのか、それとも今足元にある木の枝が悪いのか……まぁ、両方の可能性あるな)
『ガァァァァァ!』
「やっべ!」
何か嫌な予感がして、裕也は体勢を屈める。
すると、裕也の横を大きな針が飛んで行った。
「おいおい……遠距離も万全ってか?そりゃねぇよ……こっちは近接しかほぼ無いんだが」
魔法と言えど、裕也の魔法は魔法陣も使うのだが、体の側か、体全体しか魔法陣を浮かべられない。
頭に書き込むのも、手の平で集め頭の近くに設置して居ただけだ。
先ずは接近と裕也は行動をした。
今出せる全力に近い程の魔力を足元に貯めて、走り出す。
途中針を飛ばしてくる熊だったが、当たらないとわかったのか、接近してくる裕也に迎撃準備をして居た。
だが、熊も思っても見なかっただろう。
速攻で動きを封じられるとは。
足元に凍結魔法を展開、草木を凍らして熊の足元まで凍らせる。
迎撃を行おうとして居た熊は、足元に力を込めて居た。
しかし、急な足場の変更で態勢を崩し滑る。
その滑った所に裕也は熊の体の上に着地する。
勿論、凍結魔法で熊の体を凍らせる事を忘れない。
体の一部を凍らされた瞬間、条件反射なのか針を飛ばそうとして来たが、凍結された事により飛ばす事が出来ない。
そして、絶命したのか動かなかなった熊。
そして若干息切れしている裕也。
裕也は軽く呟いた。
「……命奪うのって若干の抵抗あるな……いや、もう奪っちまったから今更か」
息を整えながら、体を休める。
そして、足音が聞こえた為姿を隠した。
「あれ?この近くでヘビーベアーが居たはずなんだが……近隣の奴らに問題が出ないってのが重要条件だが……いや、急に反応が消えたって事は、誰かが倒したからだな……」
そう言うと、熊の遺体に一瞬目を向けて、裕也の隠れている場所に目を向けて声をかけた。
「おい、そこの奴。これを倒したのはお前か?」
「……」
裕也は走り出す。
出来るだけ遠くに、出来るだけ早く。
だが、凍った地面に足を軽く取られて滑りこける。
その裕也に声をかけた人物は、裕也に手を伸ばしこう言った。
「大丈夫か?」
「……ああ」
裕也は伸ばされた手を掴み立ち上がる。
「なんで逃げたかは聞かねぇよ、でもアレを殺ったのはお前か?」
「……あの遺体のことを言ってんなら俺だな」
そう言うと、声をかけた人はニヤリと笑い言った。
「お前のおかげで被害が出ずに済んだよ、ありがとな」
「……俺は別に」
「自分を卑下にすんなよ、感謝は普通に受け取りやがれ」
「……感謝は要らないが、情報が欲しい」
裕也はそう言うとバツの悪そうな顔をする。
そんな裕也に、声をかけた人物は言う。
「どんな情報だ?」
「……一番近い街を」
そう裕也が言うと、声をかけた人物は軽く警戒するが、裕也が悪そうな奴じゃないと思ったのか、警戒を解いて言った。
「案内してやるよ。あ、俺の名前はヘイシ アリセイズ。気楽にヘイシと言ってくれよ」
「俺は結川 裕也……気楽に裕也って呼んでくれ」
「んじゃあ、ユウヤ付いて来い」
そう言ってヘイシは、裕也を先導して歩いていく。




