80.VS?
魔闘部隊地上訓練場
「ユウキさん、俺この世界に来て全力出した事無いんで、胸貸してもらいます。」
「おっ、おう!」
「ユウキ死ぬなよ……。俺も周囲に被害で無い様に頑張ってみるからな。」
「ユウキ!私も幼なじみとして骨は拾ってあげるわ……。」
「僕としては、この決闘は止めてほしいかな……。」
「にぃ、お父さんと思わないでいい……。」
「私達の為に勝って!」
「「被害の事は考えないでいいから。」」
当事者の俺、琴音、鈴音、コハク、ラクト、ユウキ、レミがそれぞれ声を掛けるが、周りには何故か藤堂ハーレム他大多数が集まって来て、お祭りと化していた。
周りに屋台、観覧席などが出来上がり、所狭しと人がごった返している。
そして最前列に、メリエルを中心とした実況席、解説として琴音、鈴音、レミ、ラクトが隣に座っている。
「ジャッジは私がするわね。多分、他の人じゃ怪我すると思うし……。」
そう言って、コハクがオリハルコンボディーで審判を引き受ける。
ホムンクルス体では持たないと思ったのだろう……。
「一応、ルール何だけど……。何でもありで良いかしら……正くんも錬金術師だから、魔道具無いと全力と言えないだろうし、ユウキは聖剣使うでしょ。」
「使うな……。」
「そうだな……。」
「と言う事で、聖剣有、魔道具有、魔術有、後はダンジョン有にする?ユウキはあの不死王達使っても良いんじゃない?」
「しかし、それだと正臣くんに不利になるだろ……。ダンジョンマスターの権限行使は……。」
「ああ、良いですよ使っても。一応俺も弱小ながらダンジョンマスターですから……。」
「へっ?そうなの……。」
「今日の午前中に攻略しました。」
「へ~、遂に正くんもダンジョンマスターか……。」
有って無い様なルールが決まり、実況席のメリエルに説明……。
会場全体にアナウンスされる。
「皆さ~ん、元気ですか~!本日は久々の武闘会で~す。今日の対戦カードは1試合のみ!もはや伝説!反逆の勇者~~~ユウキ~~~!バーサス!我らがストレンジ評議国、影の裏方、食の探究者と名高い藤堂~~~正臣~~~!」
何だよ影の裏方って……。
「そして、この対戦は血で血を洗う骨肉の争い!家族間の不和問題!夫と舅の対決……。何でも有りの極悪ルール渡る世間の鬼対決!勝負に勝って真実の愛をとりもどせ!YouはShock!この後始まる!Coming Soon!」
メリエルもノリノリだな……。
「正くん、ユウキ準備は出来たかしら……。部位欠損位なら治せるからね……。」
準備と言っても特にないが……準備完了と言う事で、母さんがメリエルに合図を送る。
そして……。
カァ~ン!
ゴングが鳴り響き、戦いの火蓋が切って落とされた……。
ユウキが聖剣を手に、俺は六尺棒を手に対峙する。
流石ユウキさん今まで戦った中では、最上級の相手の様だ……隙らしい隙が無い……。
でも……。
俺は、滅多に使わない攻撃魔術を使用する事にした。
俺の周りに直径1m程の火球が12個浮かぶ……。
「ファイヤバレット!」
「えっ?」
俺はその火球をユウキさんに向け放つ、ユウキさんが驚きながらも、飛んで来る火球を聖剣で切り捨てる。
瞬く間に切り捨てられ、ユウキさんから声を掛けられる。
「正臣くん、あれでバレット系の魔術なのか……。」
「俺が行使するとそうなるんです。」
「そうか……、俺も本気にならないと駄目そうだな……。」
バレット系魔術……ファイヤ―ボールよりも速度優先の弾幕用魔術……。
通常魔術師のを見た事があるが、大きさにして5~10cm……俺のバレット系魔術が在り得ない大きさなのだ……、。
「それじゃ、これならどうですか……。」
俺はいつものように、無拍子で近づき六尺棒を振う。
ユウキさんは何気なく六尺棒の軌道を読み、聖剣で反らし返す剣で首元を狙って来る。
俺は剣を躱す様に近づき、裏当てをしようと拳を突き出す……。
ユウキさんはその至近距離からの攻撃をいとも簡単に体を入れ替え躱し、剣の振える距離を取り、胴を払って来る……。
俺は拳の突き出した方へ向かって前転、ユウキさんの攻撃を躱し、一旦距離を取り、ユウキさんに声を掛ける。
「ユウキさん、心眼ですか……それ?まさかあの距離で躱されると思いませんでしたよ……。」
「まあね……。正臣くんこそ何なんだい?賢者と錬金術師の息子が近接戦って……俺じゃ無かったらあれで終わってただろう……。」
「そうですね……。こっちの世界でここまで、持ったのはユウキさんが初めてかも……。」
「まあ、当たらなければどうと言う事は無い……。今まで当たった事なんてないんだけど、魔術然り物理然り……。」
「なら……。」
俺は武装をトンファーに替え、またユウキさんに接近戦を挑んでいく……。
肉薄する俺は先程よりもスピードを上げる。
俺の攻撃は、躱されユウキさんの攻撃が飛んで来る。
それを躱しまた攻撃する。
もっと近づきユウキさんの身体を掴もうとするが、それも躱される……。
返して来る攻撃を間合いを詰め躱し、後の先を取ろうとするが躱される。
そして間合いを取られ、剣閃による連撃……。
俺はトンファーでそれを反らしながら考える……。
考えが読まれてるのか?
躱す、反撃、躱す、反撃、躱す、反撃、…………。
幾度となく、それを繰り返す……。
そしてユウキの斬撃が俺の腕に届く……。
俺はすかさず間合いを取る。
そして会場にメリエルの声が響く……。
「おおっと、やっと膠着状態から動きが有った模様です……。藤堂選手の右腕が切られていますね……。こう言っては何ですが、今までのやり取り。私は全然見えていません。実況失格ですが、今の攻防見えた人は達人級でしょう……。」
メリエルの奴、実況放棄しやがった……良いのかそれで!
まあ距離を取りながら回復魔術を施す……。
手を握ってみる……。
よし動く……。
「おいおい、正臣くんこれで終わりじゃないだろ?さっきまでの威勢はどうした。周りからは俺が死ぬなんて言ってたから、ちょっとは期待してたんだがな。」
ユウキも脳筋なのか?
「テツヤみたいな、脳筋じゃない!だが、男なら戦いって心躍るだろ……。」
「俺、賢者でも在るんですよ……。」
「だろうな……ラクトの息子だ。それがどうした……。」
「勇者って職は持ってないですよ。」
「ふ~ん、だからなんだ……。」
「勇者の様な無謀な戦いはしない合理主義者って事です。ユウキさんは俺の心の声が聞いて、攻撃を予測できるようですが……。これならどうです。」
仕込みは終わった……。
俺はまた魔術を行使する。
「アースショット!」
俺のオリジナル土魔術、要は広範囲散弾銃……。
流石に全弾丸を切り落とす事は出来ないだろう……。
「おい、何だその魔術……。」
文句を言いながらユウキさんが大きく躱す……。
逃げた先に魔法陣が展開する。
そこからまたユウキさんに向け魔術が発動する。
今度はファイヤーストームだ……。
ユウキさんは結界を発動しながら後ずさり、その先でまた魔法陣が展開……。
それを躱す様に、ユウキさんが移動する。その移動先は俺の予想通りと俺は魔術を行使する。
そして躱されその先の魔法陣が展開……。
どこに逃げるか分からない?つまり予想できるポイントには俺が攻撃を仕掛け、その他は地雷的に魔法陣を仕込んでいたと言う訳だ……。
心を読む意味が無い……。
自分の移動先に罠が有った……それは俺の心に関与していないから、至近距離からの魔術は普通に当たると言う寸法だ……。
ユウキさんも心眼に頼りすぎる。
故に盲目、注意力が疎かだ……。
そして、魔法陣が粗方発動し終えると、幾度となく魔術に晒されたユウキさんがボロボロになって立っていた。
「ゴホッ、ゴホッ!やってくれる……。」
「致命傷を回避したユウキさんも凄いですけどね……。」
「魔術自体手加減されてた様に思うがな。」
「まあ殺してしまっては寝覚めも悪いですし、ここらへんでギブアップして貰った方が良いんですが……。」
「くっ!舐めるな、ひよっこが!男同士の決闘だぞ!」
あらら~、やっぱり脳筋だな……。
「ダンジョンマスターとして行使する。不死王達出て来い!」
ユウキさんの周りに3つの魔法陣が展開、そこからエルダーリッチー、バンパイアロード、ワイトクラウンが出て来る。
なかなかの大御所だ……。
その不死王達が、眷族召喚を行い会場はアンデッドの集団で覆い尽くされた。
観客席からは悲鳴の様な物も聞こえて来る。
まあ、アンデッドって見た目もあれだし、基本、生物の敵だからな……。
「そう来ますか。それじゃ俺も……。とはDP無くて行けないですけどね。」
俺はなけなしのDPで俺の周りをダンジョン化する。
そして収納より液体重金属、ゴーレムメリクリウスを出し、20個の水晶魔石を投げ入れる。
魔石は水晶との融合で奴隷契約以上に俺の思い通りに動く。
そして俺の並列思考とすこぶる相性がいいのだ……。
「錬金を行使させて貰いますね。この液体は猛毒です。ユウキさんは触れないで下さい。回復魔術の適用外になりますから。」
そうして、改めて俺VSユウキの戦闘が開始される……。
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