07.解除?
目を見開き、瞬きしない眼で凝視されている。
「ジィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ。」
2人が呟く。
「彩ねぇ、ずるいっ。」
「私達、言われて無い。」
「「ずるいっ!ずるいっ!ずるいっ!ずるいっ!ずるいっ!ずるいっ!」」
二人が駄々をこねだした。
「まあまあ、二人とも子供みたいねっ。あなた達二人と正くんは、言葉がいらない程の仲だと思っていたんだけど。勘違いだったかしら。」
母さんが二人をなだめだした。たぶん、母さんが、彩香さんを焚き付けたのだろう。
名残惜しいが、彩香さんとの抱擁を止め、母さんに話す。
「そんなことないよ母さん。琴音と鈴音と俺は、言葉が無くても分かり合っている。そうだろ、琴音、鈴音。」
「そう、私達に言葉はいらない。」
「つ~か~の仲。」
「「以心伝心!。」」
「まあ、そう言う事にして置きましょう。」
一旦、話を区切り母さんに話を聞くとしよう。
「それで、母さん。彩香さんから無事プロポーズを受けて貰った訳だが。母さんが彩香さんを焚き付けたんでしょう?俺としては大願成就したから、嬉しいかぎりだが、母さんがそんな事をする理由が分からない。何か問題でもあるのか?」
「あら、気が付いてたの?正くんの幸せを願ってしたことよ……………ってのじゃ駄目かしら。」
「何か問題があるんですか。お義母さんっ!」
「あら嬉しいわね。お義母さんって呼んでくれるのね。………まあ、あなたの勇者契約が問題なのよ。簡単に言うと、勇者って職業の戦闘奴隷なのよね。」
「ああ、やっぱり戦闘奴隷だったか………。魔族、魔王を倒すために作られる、奴隷って事だよな。勇者への拘束を緩くして、戦闘への強制参加、王国への反感防止ってところか?」
「あっ!」
何かを思い出したかのように、彩香さんが声を上げる。
「何か心当たりでも、有ったの?」
「ええ、召喚初日、勇者に覚醒したでしょ。その時、近藤先生と生徒達の将来について、話していたら話の途中で近藤先生が、意識混濁の様な状態になったわ。」
「それは、制約に引っかかったのでしょう。私も昔、食事の最中、そんな状態になったことが有ったみたいだから。」
美食勇者は、この国の食事事情に不満でも、ぶちまけようとしたのだろう………。
「それで、彩香さんの勇者契約は、解けるのか?」
「そこは問題なく解けるって言うか、婚姻の制約を上書きしちゃえば良いんだけどね。問題は、勇者契約が解ける事によって、契約者に解けたことがばれるって事よ。解けるときは、死んだ時、異世界転移等でこの世界から存在が無くなった時、後は強制的に解かれた時の3種類よ。今すぐ解いてしまったら、強制的に解かれた事がばれるわ。まあ、ばれても7日間この国が火の海になるだけだけど、解いておく?」
「「素晴らしい! 最高のショーだと思わんかね。」」
「二人とも、それは昨日もやったから。母さんも話をそらさない。」
「えぇ~~~~。少しだけダメ?」
「ダメです。」
「彩ちゃんの事になると。真面目になる~~~。ぶぅぅぅ~~~~。」
「ブーイングしても、ダメです。」
「分かったわよ。話を進めるわね。処置としては、勇者契約不履行による罰則を書き換えて無くす。そして、婚約のための指輪を作りそっちに婚約の制約を掛けておくってのはどうよ。」
「なにそれ、完璧じゃない。母さんやれば出来るんだね。」
「当たり前でしょ、大錬金術師よっ!、早速だけど正くんの収納に指輪、何種類か入ってると思うの出して頂戴。それと、あなたっ!いつまで、壊れてるの彩ちゃんの隷属契約の改ざんはあなたの専門でしょ。早くなさい、いつまで、彩ちゃんを奴隷にさせてるのっ!」
そう言うと、収納から出した指輪を見ていく。
「これねっ!あっ、面白い物も入ってるわ。琴音ちゃん、鈴音ちゃん、ちょっと来て、これと、これに魔力入れて。」
みんなに次々と指示を出し、俺だけ眺めている。彩香さんは親父に魔法を掛けられている。そして、いつもの、鼻歌が始まった。
「テッテレ~テテテ、テッテレ~テテテ、テレテレテレテレテレテテテ・・・チャララン・たくさん上手に出来ました。One more time!yes!!テッテレ~テテテ、テッテレ~テテテ、テレテレテレテレテレテテテ・・・・・・」
ノリノリで作ってる、母さん。作ってるのは1つだけじゃない様だ。
「・・・チャララン・たくさん上手に出来ました。」
今度こそ終わったようだ。出来たのは俺達とお揃いの指輪、それとは別に一組のペアリングである。
「あなたっ、彩ちゃんの契約改ざんは終わったかしら。」
「さすがコハク仕事が早いな。こっちも、もうすぐ終わる。」
親父の方も、契約改ざんが終了し、説明に入る。
「ええと、彩ちゃんのステータスなんですが、見ても今までと変わらないようになってます。ただ、罰則が無くなりました。
今、正くん達がしてるのと同じ指輪を彩ちゃんに渡します。それとは別に、さっき琴音ちゃんと鈴音ちゃんに魔力を込めて貰った指輪が有ります、これを『ジェミニズリング』と命名しましょうか。
この二つの指輪は魔力の同調により特定の周波数を発生させ、遠く離れた場所でも、会話が出来るようにしました。会話も魔力によるものなので、声を出さずに脳に直接呼びかけることが出来ます。今回は、彩ちゃんの拉致………。もとい、確保は難しい様なので、婚約早々別れて暮らす事になります。
そこで、守衛を通さず連絡が出来るようにしました。どう、すごいでしょ。」
「「「「「すっ、すごいよ!コハえもん!」」」」」
皆が皆、大絶賛だった。コハえもんの秘密道具に今後も、期待だ……。
「収納には、まだ何も入って無いから、琴音ちゃんと鈴音ちゃんの収納に入ってる、装備品とか分けて上げて。相当量の服入れてあるから、足りるでしょ。」
「ありがとう、お義母さん、何から何まで。」
「いいのよ気にしないで。もう私の娘なんだから。あなたっ、ついでに強力な防御系の魔法なんか、指輪に付与しておいて。」
「おう、任せとけ孫の為なら何でもするぞ。」
こんな感じになった。
婚約の指輪(婚約制約済)
付与: 隠蔽(任意on) 封印(任意off) 偽装(任意on) 収納
制約魔術無効(任意on) 状態異常無効 回復力上昇
然魔素吸収上昇 物理結界 魔術結界 遮音結界
気配遮断 魔力感知 スキル反射 索敵
何でも、この指輪一つでクーデター成功できる仕様になったそうだ。ついでに、俺達の指輪も強化して貰った。
そして、俺が彩香さんの左手薬指に指輪を付けてあげる。
「これで、彩ちゃんの方も余程の事が、無いかぎり大丈夫でしょう。」
彩香さんが指輪の説明を受け、情報交換へと話を戻すことにし、冒険者ギルドで聞いた事を話した。
「母さん達が召喚されたのが約150年前だとすると、やっぱり、時間の流れに10倍位のずれが生じるみたいだな。」
「そうなのよ。私達はこの世界で10年間いたの、帰って見たら1年経っていなかったわ。その1年間は、私達が存在していないみたいで、事件にすらなって無かったの。15歳で召喚されて25歳で旦那と子供を連れて帰還、一年間いない事になっていたのに、そんな状況で実家にも帰れなかったわ。幸い大賢者ラクトと一緒の帰還だったから洗脳魔法の掛けまくりで、向こうの家に代々住んでいたって事にしたのよ。」
「あの時は、苦労したな魔素がほとんど存在しない世界で、魔力の行使だったからな。隣町の橘家は、家から一番近い魔素溜りがあったんだ。
神域って呼ばれている所などは、少なからず存在したのでやくにたったな。遺跡なんかには、もっと多く溜まっていていた。そんな所を巡りながら魔導具作成などしてたんだ。」
母さん達の苦労話を聞かされたのだが。
「でも、向こうのオタク文化は凄かったな、家にいる間ずっと研究してたが、あそこまでの発想はなかなか出来ない。研究成果はお前の収納に、本としてまとめて入れてある。後で呼んで置け、こっちの世界でいろんな物が作れるぞ。」
収納に格納された、鈍器にも使えそうなA4サイズ厚さ10cmの本が、全30巻入っていた。気付いてはいたのだが、本のサイズと冊数でちょっと遠ざけていた、まさかそんなものとも知らずに………。
「と言う事は、向こうに帰っても、社会的に苦労するって事と、魔族と戦争する時間さえ無いって事だよな。帰るための魔力も無く、実質、帰っても仕方がない事か。」
「そう言う事ね。受け入れ準備もない帰還ほど、大変な事は無いわね。」
「よしっ!勇者達を救出したら、この国を滅ぼそう。」
「正くんまで、そんなことを言い出したら誰が止めるのよ。」
「彩香さん、お願いっ!」
「旦那様の、御心のままにっ!」
彩香さんも王国に対する不信感でいっぱいの様だ。
この時、王国の未来が決定した………。
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その後、勇者救出は、ダンジョン探索の時にまとめて契約を解除し、全滅を偽装する予定って事で話がついた。
その間、彩香さんには、勇者と接触、それとなく逃げる準備をしてもらう事にしたが、勇者の中に強奪系スキルを持ってる者がいる事を思い出し注意しておく。
彩香さんの分析スキルは鑑定の上位互換らしく、その情報は把握している様だった。
もし使われても指輪のスキル反射で逆に強奪できるらしい。
俺達のしている武術も、この世界での魔力操作のための鍛錬であると教え、夜にまた、連絡する事にした。
クエストに向かうため、母さん達は魔石に戻ってもらいその場を後にした。
彩香さんと一緒に暮らすために、頑張ってみるか。などと思い薬草採取に向かう事にする。
薬草採取の準備のため、ギルドで聞いた魔道具店でアイテムポーチを購入する。アイテムポーチは収納の魔術が掛けられてる魔道具で、金貨1枚する、皆が気軽に持てる金額ではないが、そんなに珍しいものでは無い。指輪の収納を誤魔化すため金貨3枚30万ペロを払い3人分のアイテムポーチを受け取った。
指輪の収納には、武器なども入っているがチート武器の為、普通の武器がほしい所だ。
とっ、言うわけで武器屋に来てみたのだが、西洋風の武器ばかりで何かしっくりと来る物が無い。琴音、鈴音も同じらしく腕を組んで唸ってる。
とりあえず、剥ぎ取り様にとミスリル製のナイフは選んでるのだがメイン武器になるものが無いのだ。 幼少より武術を嗜んでいた俺達にとって、どの武器を選んでも、それなりに使えるのだが………。
ちなみに、収納には、180cmの棒、45cmのトンファー1組、後は手裏剣、多数が入っている。それらを使うのが一番手に馴染みそうなのだが、一般の武器も選ばなければならない。
そんな武器屋の中を隈なく探していくと、カウンターの脇に棒を発見した。『これはもしや伝説のヒノキの棒か?』などと思い店主に聞いてみる。
「店主、この棒はなんに使うんだ。」
「ああ、それはただの棒だよ。150年前、勇者が武器屋にはヒノキの棒を置いておくようにと言ってね。それ以来どこの国の武器屋にも置くようになったのさ、使い道はさっぱりなんだがな。」
「見る限りヒノキじゃ。無いのも混ざっているようだが。」
「ああ、木材やに言って、棒になりそうな端切れの木材が出たら持ってきてくれって、言ってるんだ、何かに使えるかもしれんだろ、見てくかい?」
「それじゃちょっと見させてもらおうか。」
ヒノキ、スギ、ラタン、カシ、ビャクダン、リグナムバイタ、ナラ、………。一体何種類あるんだ?
「この棒を3本とこの棒を6本くれ。」
「全部で大鉄貨9枚だよ。なんに使うんだい。武器としてはつかえないだろ?」
銅貨1枚を渡し答える。
「この棒で鉄の剣なんか折れるぞ、鋼でも刃こぼれするかもしれん。」
「えっ?まじかっ?」
「ああ、本当だ。いい買い物させて貰った、ありがとう。」
そう言って、180cm位のリグナムバイタの棒と100cm位のカシとビャクダンの棒、各1本ずつを琴音と鈴音に渡し、武器屋を後にする。
準備も整ったので南門より町を出て、薬草を探すとしよう。
とりあえず、南の森へ向かう事にする。南の森に到着し鑑定を常時発動させ、薬草を探す薬草はそこら中に生えており1時間しないで、300本ほど収集した。
「後は、色々検証しないとな、勇者救出もあるし早いとこ済ますか。」
南の森を出て、周りを見回したが誰もいない。だが、町が近すぎる。
さすがに、城門出て何もない所30分歩いただけじゃ城が目視できる。もう少し、離れるか。
「琴音、鈴音、もう少し城から離れよう。30分ほど森に沿って走って行こうと思うんだが、体力はもちそうか。」
「愚問っ!」
「毎日、鍛錬してるっ!」
「よしっ!それじゃ走るか。」
森を右回りに30分位走ったら、大分、景色が変わってきた。左側にあった草原地帯が荒野と言うに相応しい景色になっていた。
「この辺なら大丈夫かな?」
「周りに人の気配は無い。」
「それ以外のが、少し感じる。」
「これから、色々検証するから。逃げて行くんじゃないか?」
そう、これから検証するものは、自分たちの封印を解いてみたり、核兵器級のアイテムだったりするわけで………。
「まずは、自分たちの封印解いてみるか?」
そんな事でみんなそれぞれ封印を解き鑑定する事にした。
藤堂正臣/20歳/男/人族/正常
職業 / 賢者LV01 / 錬金術師LV02/ 魔闘術師LV08/ /
HP 730/730
MP 658/658
STR 335
DEX 198
VIT 222
INT 189
AGI 211
MND 235
LUK 98
スキル 分析 理解 並列思考 無詠唱 魔力操作 気配察知 錬金 直感
適性 光、闇、火、水、風、土、練
藤堂琴音/15歳/女/人族×魔族クウォーター/正常
職業 /メイドLV03 /魔眼使いLV02 /心眼使いLV02 /魔闘術師LV08
HP 449/449
MP 1283/1283
STR 188
DEX 211
VIT 223
INT 201
AGI 244
MND 187
LUK 298
スキル 無詠唱 魔力操作 気配察知 料理 掃除
魔眼(鑑識眼、威圧、遠視) 心眼(予測眼、千里眼、読心)
適性 光、闇、火、水、風、土、魔、聖
藤堂鈴音/15歳/女/人族×魔族クウォーター/正常
職業 /メイドLV03 /魔眼使いLV02 /心眼使いLV02 /魔闘術師LV08
HP 449/449
MP 1283/1283
STR 188
DEX 211
VIT 223
INT 201
AGI 244
MND 187
LUK 298
スキル 無詠唱 魔力操作 気配察知 料理 掃除
魔眼(鑑識眼、威圧、遠視) 心眼(予測眼、千里眼、読心)
適性 光、闇、火、水、風、土、魔、聖
やっぱり、突っ込みどころ満載だった、とりあえず、親父たちに出てきて貰おう………。