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背徳の異世界家族計画  作者: carel
勇者救出計画編
7/95

06.プロポーズ?



 昨日は、色々ありすぎた。


 魔石から親父たちが出現、妹達と婚約、食事改革、ファナとの婚約、異世界生活2日目でこれだけのイベントが起きている。


 今日は落ち着いて情報収集出来ればと思う。


 




 朝起きると、右には琴音、左には鈴音がいる、昨日の夜に潜り込んできたようだ。

 

 昨日は説得するのに苦労した。『お前たちの事は一番大事にしている。こんな訳の分からない状況で子供なんて出来てしまったら、それこそどうしようもない。待たせて悪いと思っている。拠点は絶対作るから我慢してほしい。』と言って説得に成功したのだが………。


 その後ファナまで乱入してきて大変だった。


 ファナを帰し、琴音、鈴音を落ち着かせ、やっと就寝出来たのだ。



 現在


 全裸でシースルーのベビードールを着て、ベットに潜り込んでいる。指輪の収納に入っていた物だろう。


 母さん………。なんて服を用意しているんだ………。あれもアーティファクトなのだろう魅力補正とか付いてそうだ……。


 朝から頭を抱えている。


 「「正臣さん、おはようございます。」」


 「おっ、おはよう。」


 まだ妹って事が抜け切れていないから、自制出来ているが。容姿端麗な義妹の婚約者と意識していない訳ではない。俺の自我をいつまで保つことが出来るだろう。名前の呼び方も「にぃ」から「正臣さん」へ替える事にもなった。


 どんな拷問だよっ!!!!!!


 「なぁ、どんなことがあっても、お前達が一番だから、その寝間着は止めてくれないか。」


 「ムラムラ来た?」


 「いいんですよ、正臣さん。」


 琴音、鈴音が煽ってくる。


 「っだぁっ~~~。早く着替えろ!!!。今日も、やることが山積みだっ~~。」


 朝から災難である。





 しぶしぶ、二人ともミニスカメイド服と黒ニーソ、黒のレース手袋と言ういで立ちに着替えている、収納に入っていたのだろう似合っている。

 俺も、収納を探してみたが『世紀末覇者セット、忍者セット、侍セット、スパイセット三種、エンジニアセット、スーツ一式、道着一式、トラックスーツ一式、』等だった。ネタを仕込んでいる辺りは母らしいと言うべきか。とりあえず、無難そうな、エンジニアセットを着る事にした。



 顔を洗い、朝食を取りながら今日の予定を話していく。


 「まずは、冒険者ギルドへ行く、ついでに、勇者召喚と世界情勢について調べる。その後に、橘先輩に会いに行き、午後からクエスト、町の外に出たい。時間を見て親父たちに報告だ。問題はあるか?」


 「「特にない。」」 

 

 寝起きに拒否された事で二人とも少し不機嫌なようだ。


 朝食を終え、部屋で準備を整え、下に降りて行くと、ファナが出てきた。

 

 「行ってらっしゃい、あなた。」


 「ああ、行ってきます。」


 頭を撫で、出て行く事にする。


 まずは、冒険者ギルドへと足を向ける事にする。


 「正臣さんは、なぜ、ファナの頭を撫でたんです?」


 「ファナだけ、ずるい。」


 ああ、それでまた一段と不機嫌になっていたんだ。


 「大人の女性は、頭を撫でて何て言わないぞ。」


 「「そっ、そうよね。」」


 懸命に背伸びしようとする所は微笑ましいんだが。なんか甘えるようになっていないか?


 そんな事を思っていると、冒険者ギルドについた。


 「例のテンプレのように、絡まれないようにしよう。今日は、時間が惜しいからなるべく避ける様に………。」


 二人に言って、扉を開ける。思ったよりは騒然としておらず、繁忙期は過ぎていたようだ。

 受付にたどり着き冒険者になりたい旨を伝える。担当してくれたのは、アサギと言う18歳の女性だった。

 それなりに、受付の経験が長いらしく、すぐに冒険者登録が終わりギルドカードをもらう事ができた。 冒険者の説明として、ランクがS/A/B/C/D/E/Fと有り、最初はF級から始めて貰うって事らしい。ギルド貢献度に応じてランクアップしていく、D級までは試験がないがC級以上は実技試験が課せられる。

 

 ランクも個人ランクとパーティーランクがありパーティーランクの試験は無く個人とパーティーの総合のギルド貢献度で決まるそうだ。

 E級になったら担当受付を指名できるので上がった時は、是非、私にしてくれと言われた。なんでも、高位ランクの冒険者を担当すれば給料が上がるらしい。

 皆に声を掛けているようだが。アサギが担当すると、行方不明になったり再起不能になる事が多く、付いたあだ名が『呪怨のアサギ』だそうだ。何かフラグ臭がプンプンする。もうアサギルート突入済みだろう。

 

 「ふぅ~。」

 

 まあ、こっちもすぐにはイベント発生は無いだろうから。しばらく放置だな。


 ついでに、パーティー登録もして、お薦めクエストを受注してもらった。


 クエストは薬草採取。常時クエストらしく本当は受注もいらないらしいが。初めてという事で受注の流れを教えてもらった。

 薬草はどこでも見つける事が出来る。南の森へ向かった方が効率良い。ポーション作成に必要な薬草を取ってきてほしい、量に応じて薬草の買取を行うという。単純明快なクエストだった。

 注意事項として、薬草採取に夢中になってモンスターに襲われることもある。採取中は見張りを立てた方が安全である。北東の方に半日程進むと大森林があるから近づかないようにとの事だった。


 「最後に世界情勢についてと勇者について知ってることがあれば教えてほしい。」


 「世界情勢ですか?」


 「ギルドに居れば、その手の情報は入ってくるだろ?」


 「冒険者はあんまり興味を示しませんけどね。まあ、いいでしょう。どこまで、しってますか?」


 「そうだな、ここがロストニアで魔族と戦争しようとしてるって事ぐらいか。それとここの料理が口に合わないってとこか。」


 「あっはっはっ!料理ってピンポイント情報ですか。料理の世界が気になるんですか。昔の勇者見たいですよ。」


 どうやら、勇者の情報も手に入りそうだ。


 「その勇者の事も、聞きたいんだが。」

 

 「どこで情報を知ったかしれませんが、戦争についてはここではちょっと………。ちょっと、待っててください。個別面談スペース空いてるか見てきます。」


 そう言うとアサギは奥の方へ行ってしまった。少しすると、戻ってきて3畳程の部屋へ案内される。


 「さて、話の続きなんですが、これはあくまでも憶測です。勇者の話とも関連があります。まず、魔族とは常に小競り合いが続いています。これは人族と魔族が相容れないという事に基づいて、この国と教国が相違ないとしている為です。帝国なんかは魔族を亜人と位置づけ奴隷にしています。

 勇者召喚は約100年ごとにこの国が行っており、前回から150年たっていますが、50年前に教国で勇者召喚を行ったため、ずれが生じているらしいのですが、その修正がそろそろ完了して、近いうちにこの国で勇者召喚を行なうんではないだろうか、と噂されています。

 そして勇者を召喚し魔族と本格的な戦争を行おうとしているという事です。………なんで、こんなことを知りたいと思ったのですか?」


 あっ、不味い不審がられてる。


 「ええとですね。昔いた美食勇者って呼ばれていた人に興味があって、俺達も美食勇者の足跡を辿り、美味しいものと出会いたいと思ったからですよ。」


 「ああ、そう言う事ですか。それでしたら、込み入った話は要らなかったですね。すいません。てっきり、勇者以外の英雄候補かと思ったものでして。」


 「なんですか、それ?」


 「ええと、たまに居るんですよ。意図せず色々と巻き込まれて、何やかんや流されていつの間にやら英雄にされちゃう人が。そう言う人に限って、平穏に過ごしたいだとかが口癖で、どうしようもない位の、お人好しなんですよね。」


 「えっ、俺そういう風に見えました。」


 「お人好しには見えます。これでも、いろんな人を見てきましたから、人を見る目はあります。期待していますよ。」


 「食の探究者を目指しているんですがね。」


 「そうでしたね。それじゃ、大雑把に各国のこと説明させていただきます。

 ここがロストニア王国です。この国を中心に説明します。

 北西に進むとレイニール教国、法皇が国をまとめています。

 南西は国が乱立しています。召喚された勇者たちが何故か南西の島国に小さな国を作って行くんですよ。まとめてクロスティール諸国連合です。一応、連合議会が国家経営してるのかな?。

 北が魔族領です。まだ魔王の報告は入っていません。

 南には海を挟んで大陸があり、亜人種が住んでいます。エルフとドワーフはこの大陸にもいますが、獣人や竜人、ドワーフ、エルフ、人族が個々に村や町を形成しているようです。南の大陸は亜人大陸と呼び国家と言うものが有りませんね。

 東には大国ヴァストラ帝国があります。帝国は南の大陸より亜人を奴隷として連れてきて、大きくなった国で、世界中にいる奴隷の大半は帝国の払い下げだったりします。奴隷により領土の拡大と資金の確保を行っている国です。奴隷には、滅ぼした国の人民だったり攫ってきた魔人などもいて、ロストニアとも何度か戦争をしているんですが、今のところは大丈夫そうです。

 大まかにはこんな所かな。細かい国なんかも沢山あるけど、食を求めるならクロスティール諸国連合一択ですね。」


 「勇者の事をもう少し詳しくお願いします。」


 「前回の勇者召喚は、4人150年前ね。魔族との戦争で呼ばれている。美食勇者、ケモミミ勇者、闘神勇者、反逆の勇者ね。

 美食勇者は知っての通り、食を求めて旅をしていて、各地の食事事情を変えていったわね、使い方の分からない調理器具とか、各地にあるらしいのそれは全て美食勇者が残したものらしいわ。

 次はケモミミ勇者なんだけど、亜人がいると知ると、「ケモミミ、ヒャッハー。」て叫び、亜人大陸に行って帰ってこなかったわ。それ以降の足跡は亜人大陸に行けば見つかると思うけど………。

 闘神勇者は文字どうりの戦闘狂だったらしいわ、6代前の国王の親になるわね。魔族との戦争に貢献し、当時の王女と結婚してこの国に骨を埋めたわ。

 最後に反逆の勇者なんだけど、あまり詳しくは伝わっていないの、魔族との戦争中に逃げたとか、魔族側に寝返ったとか、って話になってる。………ああ、それと補足なんだけど、当時はすっごい賢者が居たらしいんだけど、その時の戦争で、足跡が消えてしまっているわね。」


 「名前とかは分かりますか?」


 「ええと、確か美食がコハク、ケモミミがサラ、闘神がテツヤ、反逆がユウキだったかしら。」


 ケモミミ勇者って女なのかよ。


 「「正臣さん亜人大陸………。」」


 ああ、分かってる。分かっているとも、モフモフだよな。


 二人の衝動に同意しながら、この場での話を終える事にする。


 「ありがとうございます、これで俺達の進む道が見えました。」


 「あっはっはっ!やっぱり、食の探究なのよね。食のっ!こんな冒険者なかなかいないわよ。トウドーさん、美味しい差入れは、いつでも大歓迎ですからね?。それと、担当の事も考えておいて下さい。」


 「ええ、考えておきます。担当の事も差入れの事も。色々と情報ありがとうございます。」


 「それじゃ、後でクエストの報告の時に。」


 そう言って、ギルドを、あとにしようとした。


 入り口を出たところで不意に呼び止められる。


 視線には気付いていたんだが………。


 「おい、お前、今登録したばかりの初級冒険者だろう。後ろの二人の娘を置いていけ、お前のような痩せ細っている奴に冒険者など出来ん。俺達が色々と面倒見ていやるから、さっさと置いていけ。」


 7人の冒険者らしき者に囲まれている。声を掛けてきたのが、煌びやかな鎧をまとった貴族っぽい男で、その周りに取り巻きらしい人達、フルプレート2人、遊撃と斥候っぽい軽装備のが2人、ローブ姿が2人である。


 テンプレ来ちゃったか………。さて、どうしたものか………。んっ、ローブ姿は二人とも女性か?


 「えぇーっと、どちら様で?」


 

 「ええい、我を知らんのか、我はC級冒険者、ライト・ハジ・キリフトス。キリフトス伯爵家に連なるものだ。」

 

 「それはそれは、あなたの様な経験も権力も豊富なお方に、ついて行けばさぞかし優秀な冒険者になれる事でしょう………。」


 「そうか、分かっているなら、早く置いて行くのだ。」


 徐々に野次馬が、集まって来ている。


 琴音、鈴音に目で合図を送る。


 「「「だが断る。」」」


 「きっ!貴様、愚弄するつもりか!」


 言うと同時に、鞘に手を掛け剣を抜こうとするライトを無視し、フルプレート2人に向かって行った。 驚いたのか、フルプレート2人が剣を抜こうとしていたが、すでに、1人目の前に立っており、鎧の上からみぞおちの辺りを裏当てで殴ってみた、浸透勁の技は鎧でも通すようで、口から泡を吹いて前のめりに倒れてきた。続けて、二人目の拍子をとり、近づくと同じように、裏当てで倒した。


 琴音、鈴音も軽装備の男たちの首筋に一撃浴びせ、失神させローブの女性たちにスリーパーホールドを掛けている所だった。女性には傷が無いようにと、二人とも気を使ったのだろう。


 だが、あれは失禁する事もあるからなぁ~。ある意味、世間的な抹殺につながる。無事だと良いが………。


 などと考えていると、剣を抜き終えたライトが威嚇する様に話し出す。


 「おっ、お前ら何者だっ。こんなことをして許されると思っているのか。訳の分からない術を使う様だが私には効かん。なにせミスリル製の鎧だからな。」


 「今日、登録したばかりの初級冒険者ですよ。どう見ても抜剣した盗賊に襲われているんですよ。許されないのは、あなた方ですよね。返り討ちにして何が悪いのでしょう。町中に盗賊が出るのでは、この国の警備に疑問が出ますね。冒険者として、盗賊の討伐は奨励されているのですよ。首謀者を無傷で捕獲し、懸賞金を頂くとしましょう。ミスリルか何かはしれませんが、鎧は鎧です、本気で打ってみましょう。」


 「きっ、きさま、我をっ………。」


 「盗賊の戯言など聞きたくありません。私の婚約者を奪おうとしました。立派な盗賊です。では、いきますよっ!」


 ライトが観念したのか剣を構え直す。その動作の拍子を奪い接敵する、もうライトとの距離に剣の振る、隙間は無い「ぎょっ!」とするライトを他所に、四方投げで背中から地面に落とす。

 

 「かっはっ!」


 受け身も出来ず、重量のある鎧をまとったライトにとっては、たまらないだろう。


 「ヒュィ~ ヒュィ~ 。」


 呼吸が出来ず空気の抜ける音がする。まだ意識はあるようだ。ご要望通り、裏当てを試すことにする、瓦割の要領で拳を下に向け殴ってみる。


 「 エレロロ~~~~。」


 胃の中の物が逆流してきた様だ。このままだと死んじゃうので白目を向いたライトを横にして野次馬の中に放置し、ギルドへと戻った。


 「アサギさ~ん。盗賊団、生け捕りしたんだけど。どうする?」


 「トウドーさんお手柄ですね。って、出て行ってから10分位しか経ってませんよね?」


 「そうなんですよ。ギルド出たら琴音と鈴音を寄越せって襲われちゃって、返り討ちにしたんですよ。随分立派な鎧を着た盗賊でした。盗賊討伐の懸賞金は幾らですか。頭目もいるみたいですが。」


 「盗賊1人頭金貨1枚~ですよ。頭目は懸賞首にもよりますが金貨5枚~ですかね。ところで、町中に現れたって盗賊はどうしてますか?」


 「琴音と鈴音に見張ってもらってます。ギルドのすぐ近くですから案内します。いや~、冒険者になって10分で金貨11枚かぁ~。冒険者って稼げるんですね。」


 「まずは、案内してもらっていいですか。」


 入り口を出たところから現場が見える。人垣の中に倒れている人を縛り上げてる琴音と鈴音がいる。


 「琴音、鈴音、大丈夫だったか?」


 「大丈夫。ローブ2人と軽装備2人、フルプレート2人は意識が戻った。」


 「声を出そうとしたから猿ぐつわしておいた。褒めて。」


 「よくやったな、二人とも。今ので金貨11枚以上になるぞ。今日はお祝いしよう。」


 青ざめた表情でいるアサギを無視し、勝手に話を進めてみた。


 「ちょっ、ちょっとっ!トウドーさんっ!誰に何をしてるんですかっ!」


 「盗賊を、討伐をした。」


 「「何か、問題でも。」」


 「えぇ~~~~。彼はC級冒険者のライトさんですよ!」


 「冒険者ギルドは、強盗の斡旋もしてるのですね。初めて知りましたよ。」


 「えぇ~~~~。そんな事はありませんっ!」

 

 「だって、ギルドに認められたC級冒険者が強盗してますよね?周りの人たちが一部始終見てましたよ。」


 「ふぅ~~~~。分かりました。このことはギルド長に報告します。」


 「それでは、懸賞金を頂いたら、予定より遅れてしまったが王城へ行くとしよう。琴音、鈴音準備は出来てるか?」


 「「時間が無いから、早く懸賞金を頂きましょう。」」


 「それじゃ、アサギさんお願いします。」


 アサギはさらに、青ざめ急いでギルド長へ報告に行った。うまく勘違いしてくれたようだ。


 ギルド長への報告は、『伯爵家の権力を眼中においてない王城関係者に、C級冒険者ライトが強盗まがいの喧嘩を吹っかけて返り討ちにあった。強盗まがいの行為は盗賊行為だろ、懸賞金を早く寄こせ。』と言ったものだった。


 ギルド側から謝罪と共に迷惑料として金貨50枚貰う事が出来た。金貨50枚の内訳はローブの女性2人、軽装備2人、フルプレート2人は各金貨3枚、ライトは首謀者として金貨30枚の借金とし、残りはギルドの謝罪分らしい。ライト達はさらにC級から2級降格のE級冒険者となった。


 「アサギさんのおかげで臨時収入が増えましたよ。お礼に食事ごちそうさせて下さい。食の探究者たる俺のこの国唯一のおススメ店が有りますので。」


 青ざめながら対応していたアサギさんが、おススメの食事を、と聞いて表情が柔らかくなった。いつまでも青ざめて対応されても困るので、クエスト後に約束をして、城へ向かうことにした。


 

 

 城門へ到着すると、橘先輩を呼び出してもらった。10分位で橘先輩が姿を現した。


 「お疲れ、正臣くん。」


 「お疲れさまです、先輩。みんなは大丈夫ですか?」


 「今は座学を受けているわ。近藤先生も見てるし大丈夫よ。ここでも立話もなんだから、守衛の屯所、行きましょう。会議室、借りれるようにして置いたから。」

 

 「防音とか大丈夫でしょうか?話し辛い内容のものも、ありますので。」


 「大丈夫のはずよ、一応会議室だから。」


 そう言うと会議室へ向かう。


 「さあ、着いたわよ。適当に座ってちょうだい。」


 「了解、何から話します。」


 「それじゃ、私から話すわ。私達のこれからの予定ね。まずは………。


 基本的にここでは、勇者の訓練、いわば魔法剣士としての訓練を予定していて、午前中は、生徒達と会議、その後、座学と魔法の訓練、午後からは戦闘訓練、独自スキルの訓練、を30日間、15日過ぎくらいからは、ダンジョンを使って実践の経験を積んでもらう。……って予定かな。

 一応、夕食後に書庫の出入りの了解を貰っているんだけど、勇者の事とか調べ始めたばかりで、まとまっていないわ。」


 魔族との戦争までには、まだ、時間があるようだがダンジョン探索が2週間後くらいか、ちょっと、急がないとな。


 「了解しました。次はこちらの話なんですが。ちょっと待てって下さい。」


 そう言い、バッグに左手を突っ込み、大賢者の石と大錬金術師の石を取り出し、魔力を込め小声で呼びかける。


 「親父、出て来れるか?出て来れるなら、この部屋の防音対策の事、教えてくれ。」


 「なんだいきなり。ああ、ダメだ、こりゃ筒抜けだな。とりあえず結界張っとく?」


 「ああ、頼む。」


 そう言うとバッグの中がほんのり暖かくなった。


 「結界張ったぞ、そろそろ出してくれ。」


 そして、テーブルの上に大賢者の石と大錬金術師の石を出し魔力を込めた。


 「ふぅ~。やっぱり外はいいなぁ~。」


 「そうですね~。おや、新顔かな?」


 石から出てきた、半透明な人の形をした者を見て、橘先輩が目を丸くしている。初めて見せる表情に、俺は見惚れている。


 「「彩ねぇ、これは藤堂夫妻の様な者。」」


 「えっ、どういう事?」


 「実はですね………。」


 昨日の婚約までの事を話した。


 「そう、琴音ちゃんと鈴音ちゃんと2人とね………。」


 蔑んだ目に見える他に、嬉しいような、寂しような、複雑な表情をしている橘先輩に、琴音、鈴音が話しかける。


 「大丈夫だよ、彩ねぇ。」


 「この世界は重婚が認められてる。」


 「すでに、宿屋の娘ファナも婚約済。」


 「後は、冒険者ギルドの受付アサギもフラグ立ってる。」


 「だけど、心配ない。」


 「彩ねぇは、私達と同列、第一婦人。」


 「正臣さん、甲斐性ある。」

 

 「3人一緒に、初めてを捧げるの。」


 「ちょっ、ちょっと待て~~~ぇい!」


 琴音と鈴音の頭を鷲掴みして、締め上げる。


 「「正臣さ~ん、頭がっ、頭が取れますぅ~!やっ、やめて下さ~い!」」


 「ちょっと、母さん聞いてないわよ、誰よ。ファナちゃんとアサギちゃんって教えなさい。」


 「クソガキ、何でお前ばかりモテる、俺は………。俺はコハク一筋だったんだぞ!」


 何かドリフ的な落ちになってきた…………。




 「あっはっはっはっはっはっはっ!」



 不意の笑い声にみんなが止まる。


 こんなに笑っている橘先輩は、初めてかもしれない。いつもの、クールビューティーが崩れている。



 「ダッ、ダメだよ。正臣くん、わっ、笑わせっ、ないで~。いっひぃっ、ひぃぃ、ひぃっ!」


 「いや笑わせてるつもりは無いんだが。」


 「あっ、だっ、ダメ話しっ!っかけないでっ。ふっふっふっ~~~~。」


 橘先輩が落ち着くのを待つ。





 「ふぅ~~~~~~~。やっと、落ち着いたわ。ごめんね、正臣くん、私、笑うと止まらなくなっちゃうの。」


 「初めて見ましたよ。橘先輩のそんな姿。」


 「「初めて見た。彩ねぇ、可愛い。」」


 「私達は、見た事あるわよ。正くんの許嫁だから色々知ってるわよ。」


 「ちょっと待て、許嫁の件は初耳だぞ。先輩は知ってた?」


 「えぇっ~~~!。あれって、本当だったの!」


 「本当よ。神主さんには了解を得ているわ!」


 「こっちの世界だと、何の問題なく結婚できるわね。琴音、鈴音も、あと2,3日で16なるだろうし、時間を見て近々に結婚の儀を行いましょう。良かったわね、正くん。ああ~孫の顔が早く見たいわね~。あなたっ!」


 「ああっ~~~。まっ孫かぁ~~~~。」


 親父が壊れてきている。母さんが絡むと話が脱線する。


 「母さん、その前に問題があるんだ。えっ、えぇーと、さっ、彩香さんが勇者契約しているんだ。」


 許嫁の婚約者に対して、先輩と呼ぶのも変なので思い切って名前で呼んでみた。顔を真っ赤にして、彩香さんも続く。


 「はっ、はふぃっ、しょっ、しょうにゃんでひゅ。ゆうひゃけいりゃきゅ、ひていりゅんでひゅ。」


 噛みまくって、何とか母さんに伝えている。

 

 ヤバイ、元々彩香さんに恋していたかもしれん、いつものクールビューティーも捨てがたいが、何だこれは、ギャップ萌って奴か。たまらん、萌える~~。


 「「正臣さん、彩ねぇに見とれるのはそれくらいにして下さい。」」


 「えっ、顔に出てた?」


 「顔が緩みっぱなしです。」


 「変顔選手権出れます。」




 顔を真っ赤にした彩香さんが俺の前に来る。


 「まっ、正臣くんの口から、プッ、プロポ―ズの言葉、きっ、聞きたいなぁ?」


 上目遣いで迫られている。





 覚悟を決めよう…………………………。よしっ!


 

 「さっ、彩香さん、中学で初めて会った時から、好きだったと思う。武道館の試合に立ち会ってくれて、実は非常に心強かったんだ。

 高校入学した時は、また、一緒の学び舎に居れる事を嬉しく思っていた。彩香さんがいる事で俺は強くあり続ける事が出来る。

 高校中退するときも、彩香さんが相談に乗ってくれたお蔭で、何も怖くなかった。その後も、会いに来てくれたお蔭で、仕事を辞めづに続けることが出来た。

そしてこれから、正社員に内定し彩香さんの前に堂々と胸を張って出られると、内心喜んでいた矢先の異世界転移だ……。妹達とも婚約し、これから一生守っていく決意は変わらない。

 それでも、彩香さんがいるお蔭で俺は強くいれる。


 彩香さんが好きだ。一生、俺が守ってやる。


 だから、彩香さんは、一生、俺を支えてくれ。


 ……結婚しよう彩香さん。」




 そう言い、彩香さんを見つめる。




 「そう、そんな風に思ってたんだ。

 私はね、小学校から正臣くんの事知ってたんだ、正臣くんのお父さんとお母さん、良く家に来てたでしょ、その時に正臣くんのこと聞いてたの嫁に来ないかって誘われててね。

 冗談だと思っていたわ。

 それでね、中学で正臣くんの噂話を聞いててね。かなりの野蛮人だと思ってたの。

 ところがね、武道館で20対1で試合するって聞いて、仲介役を買って出たわ。

 でっ、現れたのが私より小さくて可愛い男の子よ、信じられなかったわよ。

 そして、結果は全員無傷の引き分け……。

 その雄姿は、今でも私の目蓋に焼き付いているわ。

 そしてこの目蓋は、一生消えることなく貴方を見続けるの……。


 ………私を……違うわね。


 …………私も、選んでくれてありがとう。


 あなたに一生ついていくわ。」




 そして抱擁を交わす。




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