63.終戦?
俺は、琴音、鈴音、母さん、親父を引き連れ、指令室を出る……。
「いい加減、諦めろ!」
「「もったいないお化けでる!」」
「大丈夫だ、他の皆に食べて貰っている!」
「「………………、非道。」」
「何とでも言え!」
「「………………、早漏!」」
「ぐっ……!そっ、それは関係ないだろ!」
琴音、鈴音から、クリティカルな精神攻撃を受ける……。
「作戦終了したら!」
「倍のお菓子を!」
「「要求する!」」
「分かった……。それで手を打とう。」
母さんが、会話に介入して来た。
「それで、私達は何をするのかしら?」
「聞いて無かったのかよ!王国軍の左翼と右翼の迎撃、中央まで押し込む!」
「それだけでいいの?」
「まあ、主戦は魔闘部隊だし、俺達は遊撃に徹すればいいよ……。組み分けはいつも通りでいいか?」
「私と父さんね!良いわよ、私一人でもいいんだけど……。」
「俺達も、親父要らない……。」
「それじゃ、どうしようかしら……。魔導フレーム使っても大丈夫よね?」
「程々に頼むよ……。」
魔導フレーム、ホムンクルスの母さんは10歳児の体をしている、その体を補うのに作った、高さ200cmのパワードスーツと思ってくれていい……。
ゴーレム時に使っていた技術も応用されており、移動法は例のスライドドリフト!高速戦闘を可能にしている。
オリハルコンボディーを使えばいいのではとも言ったが、そこはロマンらしい……。
と言う事で、俺、琴音、鈴音は左翼、母さん、親父は右翼に攻め入る事にした……。
戦闘は、魔闘部隊が攻撃をするのに合わせる事になる。
俺達はいささか急いで、準備をすると言っても、所定の位置に向かうだけだが……。
光学迷彩発動し、所定の位置に着き、タイミングを見計らう。
そして魔闘部隊の進撃が始まった……。
魔闘部隊は101に対し王国軍5000、1人頭50人倒せば良い……。
アイシャ達の武装は高周波ブレードに、各種結界の付与された軽装と、身体強化の付いたインナー、索敵探知に通信機能付きのヘッドギア、魔術発動可能にしたブーツ、各種耐性の付いたマント、ベルトには、各種魔道具の発動補助装置にアイテムポーチ|(ポーション、マナポーション、換装用武器、等々)が入っており、1名を除いて全員がこの装備でいる。
余程の事が無い限り、攻撃を通す事は出来ないだろう……。
その残り1名なのだが……。
キリフトス家元騎士団長なのだが、王国軍の騎士と変わりない装備でいる為、識別として布を付けている。
一回り大きな体格と一人だけ別装備、明らかに目立っている……。
アイシャも、戦隊もの然り、エースパイロット然り、古今東西、リーダーカラーは赤と相場が決まっている為、色違いの真っ赤な装備であるが……。
こっちは、そんなに目立っていない……。
魔闘部隊の中で、一回り小さな体格だからだろう……。
戦闘が始まれば、否応なく一番目立つようになるだろうが……。
そして、車掛の陣を敷き、先頭をアイシャが駆ける!
対する王国軍の先頭は、重騎兵……次列に魔術師、その後ろに歩兵となっている。
重騎兵は突貫する事に置いてその攻撃力は、馬鹿に出来ないだろう。
魔術で混乱させそこに重騎兵が、襲い掛かると言った、算段だろうが……。
ただ相手が悪い、魔力によって身体能力を強化している、魔闘部隊の方が機動力が上だ!
時折飛んで来る攻撃魔術を躱し、近づいて行く。
そして、車掛の陣から、偃月の陣に展開!
王国軍も、逆に守戦に回るとは、想定していなかったのだろう、いち早く魔闘部隊が襲い掛かる……。
走りながら、各々の得意魔術で、戦闘に攻撃、前線が乱れると同時に接近、乱戦に持ち込む……。
と同時に、後方から一人遅れて駆けて来る者もいるが……。
その辺は無視しても良いだろう……。
やはりアイシャは目立つ、高周波ブレードβ!双剣となったその形状に炎の魔術を宿し、ヒートサーベルならぬ、炎剣を手に舞い踊るかのように、飛び廻っている……。
他の隊員も、魔術を纏わせ戦っている。
「あっ、圧倒的じゃないか……。」
「「我が軍は?」」
「それ、死亡フラグ!」
「にぃ、こっちも行く。」
「アイシャばかり目立つ。」
「それじゃ、無双するか!」
「「了解!」」
俺達は、共に光学迷彩解除する。
王国軍の直ぐ近くに突然姿を現した俺達!
「なっ、何者!」
「何処から出てきやがった!」
王国軍から声が上がる……。
「「「敵だよ!」」」
俺達は六尺棒でアブレシブジェットを発動……、一度に、二十数人の上半身と下半身が分かれた……。2473/2500
うん!グロイ!
密集隊形で居るから、そうなるんだけど……。
「たっ、隊長に知らせろ!ヤバイ奴等がいる!」
一人の騎士が叫ぶ!
その声と共に、王国軍騎士達は遠巻きに俺達を、囲もうとして来る……。
「遅い!」
琴音が王国軍兵士の動きに関係なく、密集地に突っ込み、六尺棒を振う……。
「甘いな!」
鈴音が同じように、反対側に突っ込む。
共にアブレシブジェットでまた、死体が出来上がる。2450/2500
「出遅れたか!」
俺は2人の間に突っ込み、王国軍兵士に向け六尺棒の爆裂魔術を放つ……、今回が初披露になるのかな?
それを真面に受けた兵士の胸に穴が開き、その後ろに肉片と凝縮された爆裂魔術が襲い掛かる……。
その効果は……。
「………………。」
「「にぃ、………………。」」
それは、俺を起点に細い扇状に50m位まで、人が居なくなっていた……。2083/2500
「何処の、マップ兵器だよ!」
その周りには、爆裂魔術 の余波を受けたのだろう。
身体の一部が欠落した者が、何十人とうめき声をあげていた。
「「悲しいけど、これって戦争なのよね。」」
琴音と鈴音が、俺の方に手を置きそう呟く……。
「それは分かっている……、だが……。」
ドッゴッ~ン!
大音量の音が木霊する……。
音のする方に目をやる……。
王国軍、右翼側……。
あれ……、何だろう……、大人数の兵士が、空に舞い上がる人柱が見える……。
「「にぃ……。」」
琴音、鈴音に肩を叩かれ、戦闘に戻る事にした……。
俺は、爆裂魔術を封印、アブレシブジェットで、殲滅して行く……。
琴音は、六尺棒から手裏剣に変更、鈴音も手裏剣、魔術による殲滅に切り替えたらしく、手裏剣からファイヤアローを放っている。1235/2500
大隊半分片付けた所で、残りの左翼兵が中央に合流し始めた……。
中央を見ると、魔闘部隊が善戦して居る物の、俺達程の殲滅スピードは無いようだが、約1/4位押し込んでいる……。
すると、中央で目立っているアイシャが、高周波ブレードδに変え、刃を回転させ突貫して行くのが見えた。
アイシャは返り血を浴びながら、10m位押し込んで戻って行く……。
失敗したような顔をしていたが後の祭り、全身血まみれになっている。
周りの隊員達は、それを見て苦笑いしている……。
確かにあれは嫌だなぁ~……。
そう思いながら、左翼を中央へ押し込む様に攻撃を続ける……。1097/2500
大体、纏まったかなと、思った所で中央に魔導弾が落ちて来る……。俺達、魔闘部隊、母さん達が、それぞれ王国軍から距離を置きそれを見守る。
ドッゴッ~ン!ドッゴッ~ン!ドッゴッ~ン!
ドッゴッ~ン!ドッゴッ~ン!ドッゴッ~ン!
ドッゴッ~ン!ドッゴッ~ン!ドッゴッ~ン!
混乱している王国軍に、容赦なく魔導弾が降り注ぐ……。
逃げ出そうと、外に向かってくる者に俺達は攻撃魔術を打つ……。
しばらくすると砲撃が止み、陣地より歩兵部隊が出て来た……。
どうやら、殲滅戦に移行した模様。
俺達も歩兵部隊に合流し、殲滅に向かう事になった……。
王国軍、後方4万も、殆どが壊滅状態 その後方から逃げようとする敵兵を、機動部隊が殲滅していた……。
さて、居るかな?
俺達はとある人物達を探している……、どうせ、高級装備を身に着け、生き延びているに違いない……。
後方を重点的に探す……。
まだ、魔導砲の着弾による着弾煙が舞う中、方円陣を組みながら後方に下ろうとする敵兵を発見する。
そしてその敵に近づくと、六尺棒で殴りつける。
周りの敵を、殲滅するとそこに守られていたのは、ローブ姿の女の子だった……。
「誰だ、こいつ?」
「誰かの娘?」
「貴族かな?」
「まあいい……。敵であることに変わりない、捕虜だな……。」
「「了解!」」
収納から魔導車を出し、その娘を縛り上げ、荷台に転がす……。
そんな感じに、敵兵の殲滅と、捕虜の確保をしていく……。
少しすると、着弾煙も晴れて来て捜索も易くなったが……、ほとんどが横になっており、数えるほどしか立って居る者がいない……。
他の部隊も何人か、捕虜を捕えている様なので、それに期待しよう……。
俺達は、10人ほど捕虜を連れ、自陣に帰って行った。
自陣前に広場を作り、そこに各部隊が捕えた捕虜を並ばせる……。
「東条くん……、金になりそうな捕虜いたかい?」
「えぇ~っと、騎士団長と魔術師団長がいます……。それと、貴族達の子息達が居る様なのですが……。」
「ああ、あれか……。初陣を経験させるとか、そう言う感じの……。」
「その点、前の南西領だと、負ける要素も無いし、丁度良かったかも知れませんね……。」
「ああ、前の……な。」
今は違う、王国軍が相手にしているのは、ストレンジ評議国軍なんだから……。
「まだ自国だと思っているのか?こいつ等……。」
「ええ、騒いでますよ……。」
「まあ、この場所は王国内だけどな……。」
「それじゃ、早いとこセレクト砦まで、引き上げますか。」
「そうだな。それから、作戦の反省会と捕虜の選別しようか……。」
俺達は、王国内の死体を放置し、セレクト砦に引き上げる。
いつまでも死体の放置も無いので、王都冒険者ギルドに伝令を走らせ、ここに死体が放置されてる事を伝えて貰う。
魔獣の増加もあり得るので、冒険者ギルドも、動かざるを得ないだろう。
セレクト砦に着くと、捕虜達を地下牢に入れ反省会を行なう。
城壁内に在る、会議室には評議国の幹部たちが集まり、感想、反省等が論じられていた。
「それにしても、圧勝でしたな!」
「3割消耗で、全滅と言いますが……。まさか、本当に全滅させるとは!」
「これだけの痛手では、ロストニア王国も、もう手が出せないでしょう。」
「貴族の子息達も、捕虜としているようですしな。」
各々が、戦闘の感想を述べるが、絶賛としか言いようが無いようだ……。
「やり過ぎたかと思うが……。」
「いいえ、そんな事は無いです、あれ位しないと、また攻め込んできます。」
「特に騎士団長、魔術師団長を拘束したのが良かった!」
「あれは、戦争好きですから!」
「戦争とは直接関係ないが、司令部の中の秩序が乱れていた、特に俺の関係者だが……。」
「いやいや、あれだけの戦果を見せられては、その位大した事では無いでしょう。」
「それにしても、お強い!」
「あっという間の事でしたね。」
「我らの兵も、ああ成れますかね。」
「評議国軍との合同訓練、させて貰いたい。」
「魔闘部隊でしたか……、隊長が若い女性でしたが……。どう言った、訓練を……。」
「そうですね……。そのうち、軍事学科での作りますか……。」
「それは有難い……。」
「是非、私達の兵達も参加させて貰いたい。」
「その時は、是非ともお声がけください。」
「ただ、やはり私共だけでは、人員が不足しておりますので、お力添えよろしくお願いします。」
「参加させて頂けるのであれば、是非も無い!」
「そうです。私共も評議国の一員です……。」
「となると、先立って見込みの有りそうな者を、ジストに送るとしましょう……。」
「どのような、人員がお望みでしょう。」
「そうですね……。将官候補でしょうから、何よりも人格者である人ですかね?武力一辺倒の人はむしろ邪魔ですね……。まだ、魔術寄りの人がいい。」
「武人は要らないと言う事ですか?」
「そう言う事です……、今日、見て頂いた戦闘で、魔闘部隊の後ろを付いて回っていた男がいたと思いますが、見られましたか?」
「ええ、甲冑を纏った御仁が居られましたが?」
「あの方は、魔闘部隊の上位者では無いのですか?」
「後ろで、指示してる様にも見えませんでしたが……。」
「あれで、ロストニア王国で指折りの実力者だったそうです。キリフトス家の元騎士団長ですが、ご存知ですか?」
「ええ、知っています。元王国在籍者では知らない人の方が少ないでしょうね……。」
「あれが、魔闘部隊最弱です……。評議国軍、一般兵にも劣るかと……。」
「何と……!」
「あのお方で最弱とは……。」
「基本、戦闘のルールが違います。騎士の誇りが……、とか要りませんから。我々が一番に守るものは、国民の安全です……。その事をお忘れない様、お願いします。」
「なぜ、魔闘部隊に?」
「元々がキリフトス家騎士団でしたから、そのまま在籍させています。騎士の誇りを優先させている為、魔闘部隊の訓練、仕事を放棄し独自で訓練してるみたいですがね……。」
「良いのですか?そんな事では、統制が取れないのでは無いですか?」
「魔闘部隊は、その名の通り魔力を纏い、闘う精鋭部隊です。最弱の者の意見なんか通りませんよ……。」
「では、評議国軍に編入すればどうです?」
「そっちはそっちで、問題外ですね……、魔導具主体の軍隊だから……。騎士とはかけ離れるだろうし……。戦うしか能の無い者に、務まりません。」
「そう言えば、陣地構築もお見事でした……。」
「それが、評議国軍の真骨頂です。まずは、防御……。そして遠距離攻撃からの敵削減、それから機動力を持っての遊撃、最後は残りの殲滅といった具合です。全ては、陣地構築から始まります……。」
「なるほど、味方の損害を少なくするのには、有効な戦術だ……。」
「それを可能にするのが、評議国軍と言うわけですね……。」
「今までの、戦争が一変した戦いでした……。」
「それを踏まえた上で、選抜して貰えれば助かります。」
その後、東条くんが軍の慰労を終え合流、軽く歓談し反省会は終了した。
次いで戦後処理があるのだが……。
今日は、戦闘の疲れを癒すべく、明日へと持ち越された……。
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