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背徳の異世界家族計画  作者: carel
勇者救出計画編
6/95

05.彩香?

 



異世界1日目




 どうやら、私達は異世界転移してしまったらしい。


 勇者召喚………。


 魔族と戦争………。


 魔王討伐………何それ………。




 「ちょっと待ってくれ。異世界転移は150年間は無理と言うことか?それは、帰れないと同意だろ。」


 あっ。正臣くんだ………。彼は私が巻き込んだようなものだ………。琴音ちゃんと鈴音ちゃん、二人もいる………。


 周りを見渡すと、生徒達もいる。どうやら今までパニックを起こしていたみたいだ。


 彼の声で、落ち着いたようだ。


 「それについては、いま説明する。魔族は我ら人族より魔力を多く保有している。魔族を倒すことにより、異世界転移魔法陣の起動に必要な魔素をより多く取り込むことが可能である。ましてや膨大な魔力を保有する魔王を倒せばすぐにでも帰還できるであろう。」


 とりあえず、宰相の話によると帰れるという事は分かった。納得いかないにしろ、この場での判断材料が不足している。



 

 「これは、覚醒の魔石と言う、これに触ってもらい、まずは勇者としての力を覚醒してほしい。元の世界での、職業、スキル、経験等が加味されて、適性のある職業になるはずだ。基本、異世界人は勇者としての適性が有るため成長補正はついている。触った者から。自分を鑑定してみると良い。

 勇者補正があると言っても、この世界で生きて行くには、知も武も生活の仕方も分からないと思う。そこで、覚醒の結果をもって大まかに攻撃職は騎士団、魔術職は魔術師団、生産職は文官預かりとして、訓練を行ってもらい生きて行く上での基礎を学んでほしい。まずは、我からと思う者から魔石に触ってくれ。」

 

 

 困惑している生徒達は動こうとしていない。


 このまま、黙ってても事態が動くわけないし………。生徒達に、試行させる訳にはいかないよね。



 「近藤先生、まずは私達から生徒の手本に成らないと。」


 「そうだな、異世界に来た事で、どういった事態が起こるかわからん。子供たちを守るのは、大人である私たちの役目だな。」


 

 勇者って言ってくれてるから、死にはしないと思うけど………。


 二人で魔石に触れると、魔石が輝きだした。そして収束する光、魔石の傍らには補助のためについていた、魔術師たちが何やら羊皮紙に書き込んでいる。それをもとに選別を行うらしい。


 「勇者、教師見習い……。あっちの文官の方に行ってくれ。」


 ローブの男が指のさした方へ向かった。


 体の異常は………ない様ね。とりあえず、ひと安心。………鑑定。



 橘彩香たちばなさやか/23歳/女/人族/---


 職業 / 勇者LV01 / 教育者見習いLV01


 HP   68/68

 MP   115/115

 STR  34

 DEX  79

 VIT  70 

 INT  121 

 AGI  35

 MND  84

 LUK  23


スキル:分析、理解、修得、指導、並列思考  


適性  火 水 風 土


 

 ふぅ~。まるで、ゲームね。


 

 「橘先生、どうでしたか?」


 「あっ、近藤先生。特に体の異常は感じられないかしら。」


 「そうですか、良かったです。私の方も異常は無い様です。生徒達も大丈夫だとは思うのですが………。」


 「近藤先生もこちら側なんですね。やはり教育者になりましたか?私の場合は見習いが付きましたけどね。」


 「ええ、教育者になりました。私達は元々その立場に居ましたからね…。」


 「問題は生徒達ですか………。」


 「職業に夢を見ている子達もいるんですよ。それ………。」


 話の途中で言葉が途切れた。


 ……あれ、近藤先生の様子が少し変ね………。目の焦点が定まっていないみたい。


 「近藤先生、どうかしましたか?」


 「えっ、ええ、大丈夫です。ちょっと、考え事をしていたみたいです。」


 「そうですか、どこか見て、ぼーっとしていましたから。」


 変ね、近藤先生が深く考えるなんて、熱い人だから、子供たちの事でも考えていたのかしら?


 


 「それにしても、生徒達は楽しそうですね。」


 時折聞こえる笑い声が何とも楽しそうである。こっちまで、微笑ましくなってくる。


 「今だけかも知れませんよ。これから、戦闘訓練とかもしないといけないようですから。」


 賑やかに成り過ぎないよう、自制を促してみんなが終わるのを待つことにする。




 ここまでは、問題なく進んでいた。


 そして最後の3人である。


 魔石に触ると光だし、やがて収束する。


 補助の魔術師達が不思議そうな顔をしている。そして、もう一度やり直すよう促している。


 もう一度、魔石に触ると光だし、やがて収束する。


 またしても、納得いかないでいる魔術師達が重鎮たちに報告を始めている。


 何があったの。………ごめんなさい。………鑑定。


 あまり人を覗くのを、良しとしなかったが気になるので鑑定してみる。


 『なっ、何このステータス。さっき説明で受けた一般人のステータスより低いじゃない………。正臣くん達がこんなステータスなんて、いくらなんでもあり得ないわ。』





 正臣くん達とは、中学生の頃からの知り合いである。

 小学生の頃は隣の小学校だったらしく、顔を会せたことは無かったが、正臣くんの両親がよく家に来ていて、「家の正くんの嫁に来ない?。」などよく揶揄われていた為、名前だけはよく覚えたいた。

 そして、私が中学3年の時に彼は入学してきた。その頃には、そこそこの有名人で、空手の大会に出て相手に怪我をさせたとか、柔道の大会でも相手を怪我させたとか、荒っぽい内容で有名だったらしく、武道系の部活関係者からよくスカウトが来ていたらしい。

 本人は、怪我をさせるのが嫌で文化部に3年間入りたかった様だが、スカウトに来る人達と良く揉めていたらしい。生徒会長だった私が、一度揉め事の仲裁に入り、そこで初めて話した。

 もっとやんちゃな人を想像していたが、そんなことは全然なく、むしろ周りの事を良く見て思いやりをもって人と接する態度に好感が持てた。

 正臣くんは面倒くさそうにしていたが、一度試合をすることで話が付いた、負けたら入部って事だった。

 当時の正臣くんは、小学校を上がったばかりで130cmそこそこしかなく、本当に小さくて可愛らしかった。それに対し、空手、柔道のスカウト連中と来たら3年の主将だのエースだの数名引き連れて来るもんだから、まったくもって大人げなかった。

 さらにスカウト連中は全員と勝負などと言い出す始末で私も怒鳴り散らそうとしてた所に、「いいよ、いいよ。面倒くさい。」と言って、20数人と試合することになった。

 正臣くんは、空手部、柔道部と交互に試合をすることになったが、その時の様子を今でも鮮明に思い出すことが出来る。


 「当たらなければ、どうということはない。」と言い放ち20数人全員と引き分けたのである。


 そして、部活ではないが、図書委員になって3年間図書室で過ごしたと言っていた。


 月日が流れ、高校も私のいる所に入学してきて、身長も随分伸びていて160㎝の私を越していた。久しぶりに声を聴けて楽しかったのを思い出す。高校では正臣くん争奪戦は行われなかったが、随分と筋肉質になっていたのが見て取れた。半年後、親の不幸な事故があるまで、保健委員をしており、高校では保健室で過ごそうとしていたらしい。

 親が亡くなり、私に相談に来てくれた時は、この場に相応しくなく、嬉しく思ってしまった。正臣くんは妹達の事を本当に大事に思っており、高校の進退について、仕事バイトについて、親の葬儀について等、よく私に相談に来てくれた。親が家にいない事が多かったため、親戚とは会ったことも無く、近所付き合いも殆ど無かったらしい。

 その時に琴音ちゃんと鈴音ちゃんを紹介された、当時、小学生だった二人も、兄を支えようと家事等は率先して行っており、正臣くんは妹達の為に高校を辞めて、働こうとしていた。


 高校中退は保留で、私の紹介で決めたバイトにい行っていたが、半端になるって事で高校中退した。幾つかバイトの掛け持ちもしていたようだったが特に体調不良に陥ったりはしてなかった様だ。

 

 正臣くん達の事が心配で、何回か家に訪れており、道場での組み手を見せて貰った事があったが、あの正臣くんとほぼ互角に立ち回る琴音ちゃんと鈴音ちゃんを見たときは度肝を抜かされた。

 私も護身用に教えて貰っており、中学時代のスカウト連中1人ぐらいなら相手にできると言われている。


 あれから、苦労はしていたが順調に生活していたはずなのに………。


  


 なんで……。なんでなの私なんかより、ずっと強いはずなのに。私はあなたの弟子でもあるのよ………。



 「橘先輩、あとお願いします。」


 何かを決意した笑顔を向けられる。


 「!!?ッ」


 そう言うと、彼は王様に向かって話し出す。


 「王様、どうやら私は勇者ではなく只の極潰しのようです。このまま、勇者達と一緒に訓練をしようものなら、只の足手まといになってしまいます。私は迷惑がかからないよう、ここを出て行く事も考えてます。………が、勇者召喚と言う名の拉致、誘拐、魔王を倒さないと帰れないという詐欺、魔族を殺せという殺人の斡旋それらの犯罪に関与している事実を認識していただいているのでしょうか?つきましては、慰謝料としていくらかいただあぁぁぁぁっ……………。」


一人の騎士に、殴られた。


 『正臣くんが避けられないはずがない!ワザとなの?』


 「きっさまぁ、無職の分際で、誰に何を言ってんのか分かってんのかっ。」


 「分かってますよ。王様に私から見た真実とおねだりをしただけです。」


 あ~、煽りまくっている。何か考えがあるとは思うけど、この国、信用できないみたいね。


 「まだ言うかっ!その口、叩き切ってやる!。」


 騎士も、乗りまくりだし。終わったわね。




 正臣くんと騎士との間に2つの影が入ってきた。


 琴音ちゃんが騎士の手を取りそのまま小手返しを決める、いつ見ても鮮やかに決めるものね。このまま失神コースね。

 正臣くんはっと、鈴音ちゃんのフロントチョークか、ちょっと、気を抜きすぎてるわね。


 「さて、どうしようか?私はお願いされた訳だし。」


 「「彩ねぇに、任せる。」」


 「あなた達は、一緒について行くでしょ。」


 「そのつもり。」


 「にぃ、一人だと、浮気する。」


 「「彩ねぇも、心配?」」


 「なっ、何言ってるのかしらね~~~~~。」


 「「大丈夫、私達、彩ねぇの味方。」」


 「ふぅ~~~。とりあえず、お金貰っておこうか。」


 王様に向かい直し片膝をつく。


 「王様、お言葉、失礼します。私は橘と申します。元の世界ではこの生徒達の教職についていた者です、この者が言ったことも一理あると思います。それとあなた方はこれから私達に訓練を行うようですが、毎回このような騒ぎが起きますのも問題だと思います。そこで、私達、教育者の2人には国と生徒達の間に立たせていただき調整としての役をいただきたいとお願いします。ただいま騒ぎを起こした3人につきましては、当面の生活費さえあれば勝手に自活すると思います。また、騒ぎを起こされるよりは、さっさと王城より追い出すのが得策かと思います。なにとぞ、賢明な判断をお願いします。」


 「そんな話を素直に聞くと思っておるのかっ!」


 宰相が間に入って来る。


 「ええ、聞いて頂けると思って下ります。この国の事を思っての事ですので………。それに、この案が飲めないようでしたら、彼女たち2人がここに居る騎士団や魔術師団の方々を壊滅させてしまいそうで………。」

 

  

 そう言い周りに目をやると、青ざめている人達が目に映る。


 王様が思案しながら口を開く。


 「………う~む。そなたの言う通り調整役を置くことで、不要ないさかいは無くなりそうだの………。宰相、そちはどう思う。」


 「そうですね。確かに勇者たちと私達では生活の相違があると思われます。変に教え込むよりは調整してもらった方が、話が円滑に進むと思います。騒ぎを起こした3人もまた騒がれては面倒ですので、口止め料でも払って城の外に置くべきかと………。」


 「そうか、そちがそのように申すなら………、直ちにそのように対応する様に。橘とか申したか、そなた達も、文官達と詳細を詰める様に。以上だ。」


 そして宰相が話し出す。


 「勇者方、聞いての通り橘殿達に調整役をしてもらう事となった。今日は、召喚されたばかりで疲れていると思う。各々に部屋も用意している故、使用人達に案内させよう。食事の支度が出来るまで休んでいてくれ。すまぬが橘殿達とそこの3人は残ってくれ。」



 そして使用人達が生徒達を連れていった。ここまで来れば、生徒達に危害が及ぶことは少ないだろうと思い、私と近藤先生、そして3人は宰相と話をするために、そこに残ることとなった。


 「すまぬが、そこの3人は早速出て行ってほしい。城下町にある宿屋までは、案内を付けよう。案内役にお金お預けておくので城を出るときに貰うように。」


 

 「話が早すぎませんか………、まぁ、いいでしょう。彼らの行くことになる宿屋は教えていただきます。調整役として、後で説明する責任がありますから。」


 「まず彼らの話は、すぐに済ませてしまいたい。それで了解しよう。」


 そう言うと、案内役の兵士がやってきた。


 「琴音ちゃん、鈴音ちゃん、明日にでも顔を出すからそれまでお願いね。」


 「「了解、何の問題もない。」」


 とりあえず、明日、彼らに説明に行くことにし、話の続きを聞くことにした。


 「それでは、明日からの予定だが、勇者としての職業を先程の3人以外、皆が持っている。基本的にここでは、勇者の訓練、いわば魔法剣士としての訓練を予定していて、午前中は、座学と魔法の訓練、午後からは実践を想定した戦闘訓練を大体、30日間と考えている、15日過ぎくらいからは、ダンジョンを使って実践の経験を積んでもらいたい。こんな感じで進めたいのだがどうだろうか?」


 「おおむね、その予定で大丈夫だと思いますが。なにぶん私達もこの世界の事が分かりません。しばらくの間は、再調整の繰り返しになるかと思います。近藤先生はどう思われますか?」


 「そうですなぁ、私が気になったのは、戦闘訓練の部分ですかね。生徒達は皆が武道の心得がある訳ではありませんから、15日くらいでは戦闘が出来るとも思えません。本来なら、危ないことは控えてほしい所です。」


 「ああ、それならあまり心配することは無いと思いますよ。はじめから無理なことはさせませんから。最初は武器になじんでもらい、慣れたところで型に打ち込んでもらいます。その後に、模擬戦を行ってもらってから、ダンジョンで弱いモンスターによるレベル上げで、体の状態を仕上げて行く事になると思います。ダンジョンに入る時も、我々の騎士団が専属でついて行き、充分な強さになるまで独り立ちさせませんから。」


 「十分、配慮していただきありがとうございます。橘先生はまだ何かありますか?」


 「そうですね、その点につきましては問題ないかと思います。ただ、生徒達も自分たちの強さとか気になると思いますので、各々独自のスキル上げとかの時間も欲しいですね。後は、生徒達を含め私達、異世界組で会議のようなものが出来れば、今後の方針を決めやすいかと思います。」


 宰相が少し考えてから口を開く。


 「そうですかぁ、それでしたら、朝食が終わってからの時間を会議にあてて、その後から座学と魔法の講義、お昼を挟んで基本の戦闘訓練、その後、夕食までの間は各々独自で行動、夕食後に我々で訓練などの調整を行うって事でどうでしょう。」


 

 「それで、問題ありません。ただ、明日の午前中は私達、異世界組で会議を行いたいのですがよろしいでしょうか。」


 「そうですね。一旦、状況の整理と意思の統一も必要でしょうから、明日の午前中はお任せします。午後から、座学と訓練準備を行い、本格的には、明後日から行なうことにしましょう。何か必要なものがあれば言ってください、準備させますので。」


 「分かりました。今日は、これで休ませてもらいます。」


 「それでは、案内の者ををお呼びしましょう。夕食までゆっくりくつろいで下さい。」


 その後、部屋に案内されて、ゆっくりくつろぐ事にした。


 まだまだ、考える事が山積みだわ。明日は、生徒達にさっき決まっった予定を話してから、正臣くんの所に行きましょう。とりあえず、情報収集と精査ね、判断材料がないのも困りものね。生徒達も感情が表に出やすくなってるみたいだし、まとめることが出来るかしら、その辺は、近藤先生の方が向いてるかしらね。


 そんなことを思い異世界1日目が終了することになった。


  



異世界2日目




 やはり夢では無かった………。夢落ちだったらどんなに良かったか………ふぅ~。


 顔を洗い、朝食をとる。昨日、あの後、案内された会議室に向かう。


 生徒達は全員揃っているようで、昨日話した予定を告げる。


 最後に、「情報が無いうちは、あまりはしゃぎ過ぎず、静かに従うように。」と付け足し報告を終える。


 その後、正臣くんの居場所を教えてもらい宿屋へ向かう。


 昨日別れたときは、意識が無かったから心配していたが、どうやら元気なようでホッとした。


 やはり正臣くんも情報の少なさに困惑した模様で、城の外から情報収集しようとしていた。私は城で情報収集することにし、後で情報交換することにした。


 城へ帰り、訓練が終わったら書庫にでも案内してもらおう………。






 しばらくは、この作業の繰り返しになるだろう………。




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